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「!」の連続。「色の見え方」の先端科学から見えてきた、驚きの世界。前世紀の「色覚」観が私たちにもたらす、いくつかの問題。科学作家が多数の取材・調査をへてたどり着いた、まったく新しい地平。「色」に関心のあるすべての人、必読のノンフィクション!
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Posted by ブクログ 2020年12月10日
かつて日本では、世界に誇るという石原式色盲検査表というものがあり、これで小学生以来すべての生徒をスクーリングにかけて、「色盲」を検出しようとしてきた。ところが、その後高柳さんという人を初めとして多くの眼科医の運動で、この検査が差別を生み出すということで、学校において行われなくなった。しかし、だからと...続きを読むいって、色盲による不都合な現実が出なかったわけではない。そこで、最近また、この検査表でもう一度スクーリングをやろうとしているという。やる方は、生徒たちが将来そういう困難な局面に遭遇したとき困るから、早めに対策をとらせようというわけである。ところが、川端さんはこれに大きな違和感を覚えた。「むしろ、必要な人に,適切な時期に、必要な情報を」与えるべきではないかという。ぼくもそう思う。それはスクーリングで抽出された人たちが自分の将来を狭く限ってしまうからだ。それでも困ることがあるというのは、それは現代医学の先端を知らないからである。本書で展開された科学の知見によれば、困る場合はかなり限られてくる。本書の醍醐味は、科学ジャーナリストで、当事者でもある川端さんが、現代科学の成果を丹念に追い、異常と非異常の差は連続的なものであることを明らかにしたことである。石原式検査表はたしかにすぐれたものではあるが、現代科学の成果からすると荒い。川端さんはそれを人類である霊長類がもともと2色覚であったものが3色覚をもつようになった動機を述べ、2色覚と3色覚の差はどこにあるかを追究する。そもそも、川端さんは小学校のとき、「異常3色覚(=赤緑色盲)と判定され、その後の職業選択で、幅をせばめつつ現在の地位を築いてきた。そして、今回、本書を書くに当たって、自ら検査をしなおしたところ、アロマロスコープでは正常の結果が出たのである。だとすると、今までのもやもやはなんだったのか。また、世の中でこのもやもや感を持っている人たち、検査をあくまで強行しようとする人たちに提起したのが本書であった。アロマロスコープは石原検査表で問題になった人たちをさらに検査するものだが、これは全国的にも備えている病院が少ないそうだ。そんな環境下で異常か正常かを判断され、将来の夢までつぶされる検査とはなんだろう。わたしも、川端さんと同じく怒りを感じる。本書には色覚の発展についての興味深い記述がたくさんある。たとえば、緑は赤から出てきたものなので、波のかたちが似ている。だから、紛らわしいのだが、これも人によって違いがあって、川端さんの場合はかなり修正しないと正常値にならないのだが、それでも緑を見分けることができる。また、川端さんの場合は青に対する認識が他の人よりも高いという。ぼくも日本の信号は緑と赤だと思うが、緑が青みがかって見えることがある。そういう個人間での違いがあるのである。さらに言えば、正常と言われる人たちの4割も精密な検査では異常色覚と判定されるらしい。川端さんはさらにアメリカの軍での検査も受け、ジェット機のパイロットとしては不適格だが、民間の航空機のパイロットしては合格だという認定を得た。つまり、異常かどうかはどこまでも連続的で、職業での適不適も一概にいえないのである。本書は、ひたすらスクリーングテストに傾いている人たち、また、小さいときから色盲色弱のレッテルを貼られて悩んできた人たちに広く薦めたい好著である(○○賞をあげたい本である)。
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