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「真実を見極めるためには主語を小さくする必要がある」
ファクトなき固定観念が人々を分断する。
香港、朝鮮半島、シリア、パレスチナ、スーダン、福島、沖縄。
いま、分断の現場では、何か起こっているのか?
分断の細部を文字として描いた、ジャーナリスト堀潤の渾身のルポルタージュ。
民主主義を、自由を、考える。
<序章より>
そんなに難しいことを言いたいわけではなかった。金よりも大切なものがあるはずだ、ということを伝えたかっただけだ。一度失ってしまったら取り返しがつかない悲しみを背負うことになる人々を、冷笑さえする空気があることが辛かっただけだ。ささやかな幸せを手にするために懸命に生きてきた人々の努力をなかったことのようにして、大義を振りかざし、沈黙を強いる権力者がいることに憤っただけだ。そして、そうした強者に媚びて、忖度し、現実を見るべきだと開き直るメディアで働く人間がいることが虚しかったからだ。マスメディアだからこそ、かき消されそうになる小さな声を伝え続けるべきであるのに。
(中略)
この10年でメディア環境も大きく変化し、SNSを中心に誤った情報や一方的な強い表現が跋扈するようにもなっていた。ヘイトスピーチやフェイクニュース現象が国際的な社会問題にもなった。こうあるべきだ、こうに違いないという偏った情報により分断が深まり、分断はやがて排除、排斥を加速させていった。政治はそれを利用し、自らに利する都合の良い情報発信に邁進するようにもなった。暮らしが豊かになるのであれば、誰かの人権が制限を受けても構わないという、誤った認識も広まったように思う。
そうした状況を鑑みると、福島で起きている問題の解は、世界各地で孤立する分断の当事者たちへの処方箋に繋がるかもしれない、そう思うようになった。その逆もある。各現場では分断を手当てするための様々な取り組みが試行錯誤を繰り返しながら続けられている。世界を見ることで、国内の分断を乗り越えるヒントが見つかるのかもしれない。わたしはその答えを知りたくて、世界を旅することにした。今、この原稿もアフリカ、スーダンで書いている。昨年、市民のデモによって30年続いた独裁政権が倒れた現場だ。今、ここでも新たな分断が生まれようとしている。
Posted by ブクログ 2020年09月29日
いつも聞いているPodcastの番組のゲストで著者の堀潤さんが出演していました。そのときのお話にちょっと関心を持ったので最近の著作を手に取ってみました。
香港・朝鮮半島・シリア・パレスチナ・スーダン、そして原発事故による強制避難により生じた「分断」の地「福島」、米軍基地移転問題で県民が「分断」さ...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年06月26日
人と積極的に関わり向き合い続ける堀さんの姿にはいつも感銘を受ける。俯瞰で眺めることももちろん大切だけれど、目の前の誰かや目の前の事柄をしっかりと見つめ、考えることの意味。「小さな主語」でとらえることの深さ。堀さんが伝えようとしてくれている、世界中にあふれる「分断」を、わたしも私なりに小さな主語で捉え...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年05月04日
ジャーナリストとして自分の信念を貫くためにNHKを辞して独自の取材を続け、発信し続ける著者の姿勢には感服するしかない。かつての自分への自戒を込めて可能なかぎり「小さな主語で」語ろうとする彼の真摯な姿勢は全ての報道関係者にも見習って欲しいと思う。もちろん大局を観るということも含めて様々な視点が必要では...続きを読む
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