建国神話の社会史 史実と虚偽の境界

建国神話の社会史 史実と虚偽の境界

1,540円 (税込)

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天照大神の孫が高天原から降臨し、その孫である神武天皇がヤマトに東征、橿原宮で天皇の位に就く――『古事記』『日本書紀』に記されたこれらの神話が歴史的事実ではないことは、戦前の普通の々にとっても当たり前のことであった。史実ではないが、史実として扱い、そう振る舞っていたのである(こうした「建前と本音」的なものは、現代の私たちにも心当たりがある)。
神話の「史実」化には、天皇による統治を正当化するという明治政府の政治的目的があったのはもちろんだが、一方で民主化(神々の話合いは「万機公論」の根拠とされた)や経済振興の手段でもあったことは、今ではあまり知られていない。もっとも、「神話」を「史実」として受け止めることには、さまざまに無理も生じる。とくに教育現場における混乱は、いくつもの「笑えない」笑い話を残した。
本書は、幕末水戸学の尊王攘夷思想という建国神話重視の発端から、昭和天皇が「人間宣言」によって事実上、建国神話を否定するまで(そもそも、昭和天皇は科学者でもあった)、日本社会に起きた悲喜劇をエピソードたっぷりで描き出し、近代とは何か、歴史とは何か、国家とは何かを問い直す。

目次より
序 章 虚偽と史実の境界

第一章 神話が事実となるまで
一 日本の建国神話とは

二 なぜ「事実」になったのか?

三 教科書で「事実」とされたのはなぜか?

第二章 「事実」化の波紋
一 学校の外ではどうだったのか?

二 学校の中ではどうだったのか?

第三章 建国祭と万国博覧会
一 政治にどう利用されたか?

二 経済にどう利用されたか?

第四章 満州事変の影響は?

一 教室外でも始まる建国神話の「事実化」

二 建国神話教育への影響は?

第五章 日中戦争期の社会と建国神話

一 紀元二千六百年をめぐって

二 社会はどう受け止めたか?

第六章 太平洋戦争期とその後
一 国史教育のその後

二 効き目はあったか?

三 その後

終章 「建国神話の社会史」の旅を終えて

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建国神話の社会史 史実と虚偽の境界 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    「天壌無窮の神勅」による「天孫降臨」をはじめとする建国神話が近代日本社会においてどのように扱われ、どのような意味を持ち、どのような影響をもたらしたのかということを論じている。
    戦前においても建国神話を巡る状況にはいろいろと変遷があり、昭和戦中期に近づくにつれてファナティックなものになっていったという

    0
    2021年06月05日

    Posted by ブクログ

    読みやすくて面白いです。

    先生、そんなの嘘だっぺ!

    尊氏か!と言われ木刀で殴られる

    笑ってしまいました。

    虚構である神話を史実として扱った結果、わかったのは 嘘 はいけないよということ。

    正義とは何か
    多くの人々にとっては教育と時代の雰囲気によって得られるまったく異なる価値観である。
    準拠

    0
    2021年05月23日

    Posted by ブクログ

    建国の神話がいかに第二次大戦に向けて悪用されてきたのか、その経緯が明らかにされている。
    今も、この日フィクションを未だに喧伝する、方々は何を意図して、どこに向かおうとしているのか、注意が必要だ。

    0
    2021年01月07日

    Posted by ブクログ

    建国神話という虚構がどのように学校で教えられたか、日本社会に受け入れられていたかについてで、万博やオリンピックなど、日中戦争が泥沼化していく中での日本人の空気感というのもわかって面白かった。
    古事記と日本書紀の神話は当時の政治体制を正当化する意味があり、一種の憲法のようなものであった。それが本居宣長

    0
    2020年05月23日

    Posted by ブクログ

     明治維新から戦争で壊滅するまでの約80年弱、農業を中心としていた小さな国がそれなりの工業基盤を持つ国へ、この短期間の間に成長していくところで、精神的な支柱として持ち出されたのが神様の子孫である天皇陛下という存在。天孫降臨神話と実在の天皇は、実際に人々の心で結びついたのか、その理解の紆余曲折がなかな

    0
    2020年04月26日

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