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高校時代から十年来の友人である友貴と広也。社会人になってからも、時々電話をしたり飲みに行ったりと一見良い友人同士の2人ですが、友貴は広也にずっと片思いをしていて……。ゲイではない広也と一緒にいるには親友というポジションが一番だと割り切ろうとするものの、広也の言葉に一喜一憂して、もう1人の親友陽一に愚痴る日々でした。しかし、ある朝自宅で目覚めると、全裸の広也が隣に……!?
10年ものの片思いというと、歴戦の腐女子ならそのワードを聞いただけで泣けるほど“切ない系”を代表するテーマ。しかし本作は良い意味でそれを裏切ってくれます。
言葉足らずで高校時代から「通訳が必要」と言われていたド天然・広也。さらに、広也の通訳をしていたほどしっかり者の友貴も恋愛が絡んだ途端にポンコツ化するのですから、一筋縄ではいきません。壮大なすれ違いを繰り広げる2人のやり取りはまるで、某コント仕掛けのスペシャリストのようで、思わずクスリと笑ってしまいます。まさお三月先生独特の間で、ボケたり突っ込んだりするやり取りが本当に愛らしくて、母性に似た謎の感情が芽生えてしまう……!
また、この面倒な2人を見守る陽一・都カップルの振り回されっぷりも素晴らしく、特に真顔で正論しか言わない都ちゃんのツッコミ力は惚れるしかないレベルです。
『求めてやまない』(新書館)では横柄な客とカフェ店員が惹かれ合い成長していく物語を描き、『夜が明けても』(新書館)では恋愛にトラウマを持つゲイ男性が元ノンケとの恋愛を通して立ち直っていくさまを描くなど、優しい世界観が魅力的なまさお先生。心にじんわりと沁み入る恋物語に癒やされます。