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近世初期に成立した笑話集。古活字版、整版、書写本など、さまざまな形で庶民に浸透し楽しまれた噺の数々。「仮名草子中一、二のベストセラー」とも推測され『醒睡笑』にも引き継がれた笑話には、当時の民衆の笑いの感覚が表れている。身近にいる「うつけ」者の噺、艶笑・男色の噺、尾籠な噺から信長・秀吉が登場する噺まで、無名の人々の手になる作品集成。
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Posted by ブクログ 2016年07月05日
ずっと読みたいとおもっていたのが廉価版で文庫化してくれて非常にうれしかった。234話の小話集で、 宮尾與男先生が尾籠なお話もソフトにやんわりと訳してくれているのが泣ける。受験古文知識で十分読解できます。当時のナウなので、まさにブログ的というか、ツイッター的というか。とにかく、おもろい。
Posted by ブクログ 2016年06月27日
・宮尾與雄訳注「きのふはけふの物語 全訳注」(講談社学術文庫)は私が初めてきちんと読んだ笑話集と言へさうである。「醒睡笑」等もそれなりには読んだが、かうして1冊、最初から最後まで通して、しかも注つきでは読んでゐないはずである。本書は「きのふはけふの物語」本文とその口語訳に注と鑑賞ついたものである。古...続きを読む典も近世初期あたりまでくるとかなり読み易くなり、ほとんど注なしでも読めたりするのだが、それでもやはりよく分からない語や内容はあるもので、そのやうな時にはこれらが大いに役立つ。誠にありがたい。至れり尽くせりといふ感さへある。ただ、それでもなほかつ問題はある。その中身、内容である。「解説」にかうある、この笑話集の中に「艶笑表現をもつ笑話がどのくらいあるのか。上巻百四十三話のうちの五十一話。下巻九十一話のうちの三十五話を数え、この八十六話は全二百三十四話の37パーセントにあたる。」 (588頁)4割近くが艶笑譚である。個人的には多いと思ふのだが、他の笑話集と比べるとどうなのであらうか。「これは艶笑の話は聞き手も読み手も知りたいもの、見たいものであり、その好奇心に応えたための数でもあった。」(同前)とあるからには、この数字が艶笑譚の多いことを意味しないといふことなのであらう。人間、それほど艶笑好みであるといふことである。確かに、今もさうに違ひないのだから、近世の人々がさうでなかつたはずはない。艶笑譚こそ笑話の花であるのかどうか。笑話集にこんなに艶笑譚が収められてゐるのだと今更ながらに確認した次第。 ・とはいふものの、巻頭はかなり調子が違ふ。1の話、このどこが笑話なのだと思ふ。鑑賞には明確に、「将軍の陣地にと選んだ屋敷が、天皇の住む皇居であることも知らない。この無知さ加減が笑いとなる。」(13~14頁)とある。私も無知であつた。「禁中」といへども陣地となることはあらうと思ふことがそもそものまちがひであり、「ばうじやくぶじんなるものども」の言を素直に受け入れることは当時の、少なくともこれをまとめたりするほどの人々からは「無知」ととられる類のものであつた。しかし、その反面、これがまた「力尽くで手柄をあげる下克上の時代となっていた。」(14頁)ことを端的に示してゐるのであった。そんな時代の笑ひである。私には分かりやうがない。2の信長の話もよく分からない。信長の団子好きをからかふ京童の言葉をそのまま信長の傍近くで言つてしまつた小姓が笑ひの対象であるらしい。その粗忽な小姓を助けた曲直瀬道三の手柄話と容易に読める。しかし、これを笑話と感じるのは難しい。説明な しには笑へない。3の瓢箪から駒の話になつてやつと私にも分かるやうな気がする話となる。瓢箪から駒の由来を聞いて、その言葉通りに大量の山椒を買つて蒔いた男が笑ひの対象である。由来がいかなることであれ、瓢箪から駒が本当に生まれるわけがない。それを信じた男の「無知」がここでも笑はれてゐる。かくして徐々に私にも分かる話が出てくる。それでも注と鑑賞が頼りといふ話は多い。しかし、さすがに艶笑譚となるとそのまま分かつてしまつたりする。この道は今も昔も変はらない。20の粗忽坊主の話、艶笑譚入門編である。最後の「我らの寺へも、わかき後家の参らるゝが、あぶ」(61頁)と慌てて口を押さへるのは身に覚えのある証拠、自身がやつてゐるのか、住職がやつてゐるのか。これを初めとして、寺に関するタブーを笑ふ話が多いのも、寺院がそれだけ大きな権威であつたことの証左であらう。性を笑ひ、権威を笑ひ……これが笑話の本道であらうか。単純に楽しめば良い古典ではあつた。
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きのふはけふの物語 全訳注
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