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昭和十三年、自ら浅草に移り住み執筆をはじめた高見順。彼はぐうたらな空気と生存本能が交錯する刺激的な町をこよなく愛した。主人公である作家・倉橋の別れた妻への未練を通奏低音にして、少女に対する淡い「慕情」が謳い上げられるのだった。暗い時代へ突入する昭和初期、浅草に集う人々の一瞬の輝きを切り取り、伊藤整に「天才的」と賞賛された高見順の代表作にして傑作。
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Posted by ブクログ
著書は読んでいなかったけど、ご病気が重篤で『死の淵より』などの作品が話題になっていた記憶がある。有名な鎌倉文庫や駒場の近代日本文学館などの文学活動をなさっていた印象も強い。 謹厳な堅苦しいような作家、初期のこの作品はぎやかだった戦前の浅草を描いた、通俗小説のようで意外な気がしたが、作品が書かれた...続きを読む時の作家の身辺を知ればわかる気もする。 思想的なことや妻に去られたことなどで何もかも行き詰っていて、脱却したいために遊興地浅草でブラブラしていたのだが、それでもなお悶々としていた時代を材料に私小説風な作品。 別れた妻への未練、戦争への暗い道の予感、可憐なダンサーに寄せる慕情。時代の背景・風俗がよく書き込んでありおもしろいのはさすが。 昭和14年頃の浅草なんてもうこのような本で知るしかない。有名なのは永井荷風の作品。そういう意味では貴重な文芸作品でもある。
昭和初期の浅草が舞台。 当時の街の雰囲気が、実際にあった(そして今もある)通りや 店などから、生き生きと想像され、楽しめる。 また、小説の所々で、主人公以外に、実際の作者が 登場して、客観的に物語をみたり、注釈を入れたり するところは、現代の宮藤官九郎脚本のドラマを みているようで、楽しめた。
浅草の演芸がすごく盛り上がっている雰囲気を感じます。レビューとお好み焼き、おしろい粉とソースのにおいが漂ってくるようでした。年譜に死の間際に恭子を養女とすると書いてあるので、高見順さんはそんなに遠い人ではないと実感しました。
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