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奇妙で可愛く、時におぞましい植物たちは、どこか人間と似ている──。他の植物にくっついて生きるコウモリランは、若い男性を家に住まわせる年配の女性と。条件に恵まれると繁殖するホテイアオイは、とある家に住みつき妊娠する少女たちと。日陰が必要なシッポゴケは、自身の女性性を憎む少女と。人間の不可思議な行動を植物の生態に仮託して描く、アサクラ版・植物誌全七作。
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Posted by ブクログ
久しぶりに朝倉かすみさんの本を読んだ あぁ、またハマってしまいそうだ 不思議で不気味 ラストがスキッと終わるわけじゃなく どうなったんだ? どうなっていくんだ?と思わせる 登場人物が繋がる話もあるけど とにかく全てモワッとした不思議感 面白かった
あなたは、どの『植物』の生き方が好きですか? (*˙ᵕ˙*)え? 国連環境計画の調査によると、この地球上には約870万種の生物が暮らしているのだそうです。そして、その内訳は動物が777万種、『植物』が29万8千種、菌類が61万1千種と推定されるのだそうです。個人的な印象では『植物』の方が多いと...続きを読む思っていましたが動物の圧倒的な数に驚きもします。 とは言え、この地球上には29万8千種もの『植物』が生きていることは事実です。動物と違って動くことも鳴くこともなく、ただただそこに生えているだけとも言える『植物』たち。しかし、そんな『植物』にもその種類によって生き様は大きく異なります。可憐な印象を与えるもの、しぶとさを感じさせるもの、そして他の『植物』に寄生するものなどなど。一口に『植物』といってもそこにはその数分だけ個性が存在するのだと思います。 さてここに、『植物』の生態を取り上げた短編集があります。『植物』の生態を簡潔に冒頭に記すこの作品。そんな生態を人に重ねていくこの作品。そしてそれは、”人間の不可思議な行動を植物の生態に仮託して描く”という『植物』に人の生き方を見る物語です。 『トンカツの下ごしらえを済ませ』、テレビに表示された時刻を確認して『もうすぐ山本くんが帰ってくる』と思うのは主人公の細小井さち子(いさらい さちこ)。『昨日の夜に仕込』んで『煮込んだカレー。山本くんの大好物』、『山本くんはきっとよろこぶ』と思う さち子は、『あたしはあと何年、こうして山本くんの帰りを待つことができるのだろう』、『もう何年くらい、こうして元気でいられるのかしら』と『ため息をもらし』ます。そして、『姿見の前に立』った さち子は『皺もシミもたるみもあるけれど、生きてきた長さを感じさせるだけで、みにくくはない』と、『そっとほほえむと、顎のちいさな丸顔にいきいきとした輝きが付与され』ます。『七十一にしては元気なほう、とつぶや』くと、さち子は『口紅を手に取』ります。そんな時、『ただいま』と山本くんが帰ってきました。迎えに出て『きょうはね、カツカレーにしたのよ』と言う さち子に『「やったあ」と顔をほころばせ』る山本。『ごはんの前にお風呂、入っちゃう?』と訊くと『うん、そうする』と『首だけで振り向』く山本は『ぱっちりとした目で さち子を見』ます。『長めの睫毛にふちどられた、きれいな白目に、濁りのない黒目』という『山本くんの目を見るたび、無垢という言葉を胸に浮かべる』さち子。そんな山本と さち子が『出会ったのは、六年前の三月』のことでした。『六十五歳だった』さち子は、『役所を定年退職したあとにつとめた知り合いの経営するそろばん教室を辞めたばかり』でした。『趣味を見つけ、できれば近所に趣味友だちをつくり、そのひとたちとカラオケや旅行に出かけて、悠々自適というか面白おかしく老後を送りたいと考えていた』さち子は、『六十五歳にして第二の人生を歩もうとしていたの』でした。そして、『太極拳、ガーデニング、歴史建造物めぐり』という『三つのシルバーサークルに入会を申し込んだ』さち子は、『歴史建造物めぐりサークル』で『ちやほや』されることを欲していました。『複数の男性にかまわれ、持ち上げられ、よいこころもちになりたい。同性に嫉妬の目を向けられたり、ほんのちょっと嫌味っぽくからかわれたりしたならば、もっとよいこころもちになる』と思う さち子。そして、『歴史建造物めぐりサークルの会合に初めて参加する』日がやってきました。『開始は三時で、終了は五時か五時半。そのあとはサークル御用達の居酒屋で親睦会を行う』というその日。『初めまして。細小井さち子と申します…』と『二、三日前から考えていた自己紹介』を練習しながらトイレに入った さち子。『よし』と『ひとつ気合いを入れ、トイレから出ようと』するも『ドアノブは空回りするばかり』と扉が開かず閉じ込められてしまいます。時間だけが経過する中、トイレに空いている『小窓』に気づき外を見る さち子は『だれか見つけたら』『声をかぎりにさけぶ』と決めます。そんな中に『ひょろりとした体型で、男性というより、男の子』の姿を見つけた さち子は『声を張り上げ』ました。 場面は変わり、『一生懸命カツカレーを食べ』る山本を見る さち子は、『小窓から事情を話し、山本くんに鍵屋さんを呼んでもらい、無事脱出』できた時のことを思います。『鍵屋さんが帰ってから』、お礼に『山本くんに出前のお寿司を食べさせた』さち子は、彼が『下宿先を探してい』ることを知ります。そして、『これもなにかの縁だからと、と山本くんを家に住まわせることにした』さち子。『二十一歳』の山本と『七十一歳』の さち子の不思議な二人暮らしの日々が描かれていきます…という最初の短編〈にくらしいったらありゃしない〉。『コウモリラン』という『植物』の生体に山本の存在を上手く重ねる好編でした。 “奇妙で可愛く、時におぞましい植物たちは、どこか人間と似ている ー。他の植物にくっついて生きるコウモリランは、若い男性を家に住まわせる年配の女性と…人間の不可思議な行動を植物の生態に仮託して描く、アサクラ版・植物誌全七作”と内容紹介にうたわれるこの作品。徳間書店の総合文芸誌「読楽」の2015年3月〜10月にかけて連載された7つの短編が収録された短編集となっています。内容的には2編目と3編目が強固な結びつきを見せる連作短編となっている他は、特に繋がりを持たない独立した短編となっています。しかし、そんな7つの短編は、ある共通点を元にひとつの作品を作り上げるべく強烈な個性を放っています。それこそが、それぞれの短編の冒頭に、まるで”お題”として掲げられるかのように挙げられた『植物』とその生態の説明を元に、それをイメージとして物語世界を作り上げていくという構成を取っていることです。 数多の小説の中には人間以外の生き物をさまざまな形で登場させる作品はたくさんあります。特に”動物”である猫や犬が物語の中で重要なポジションを果たす作品は枚挙にいとまがありません。一方で、『植物』を登場させる場合はそこに独特な色合いを帯びるものが多いように思います。どちらかというとそれはマニアックな方向に走るようにも感じます。私が読んできた作品の中で見てみましょう。 ● “植物”が印象的に描かれていく作品 ・彩瀬まるさん「森があふれる」: まさかの”妻が発芽した”という衝撃的な前提設定の先に、“人を養分にすると、木はこんなに早く成長するものなのか?”というその先を描く、『植物』の変化球的な世界を描く物語。 ・有川ひろさん「植物図鑑」: マンションのポーチの植込みから男性を”拾う”という起点の先に、”雑草という名の草はない”という昭和天皇のお言葉をはじめとした『植物』がキュン♡な雰囲気感の中に描かれていく恋愛物語。 ・千早茜さん「ガーデン」: “部屋の植物たちが心配なので、僕は滅多に旅行には行かない”という人生を生きる主人公の日々の中に、数多の『植物』の生態が強い存在感を示す物語の中に、ある出会いをもって主人公の思いの変化を見る物語。 ・三浦しをんさん「愛なき世界」: 『植物』には”思考も感情もない。人間が言うところの、「愛」という概念がない”、だからこそそんな”愛のない世界を生きる植物の研究に、すべてを捧げる”と決めた一人の女性の思いを見る物語。 ・村山早紀さん「花咲家の人々」: “なぜか花咲家の人々が草木に願うとき、草木は本来なら持ち得ないほどの「魔法」のような力を発揮して、人々をその力で救ってくれる”という特別な力を持つ花咲家の人々を描くファンタジーな物語。 五つの作品を取り上げましたがそれぞれに『植物』の存在が物語の中で重要な位置を占めており、いずれの物語も『植物』の存在なくしては作品として成り立ちません。そして、そんな中にあってこの朝倉かすみさんの作品のポイントは、短編冒頭に”お題”としてひとつの『植物』を提示し、その『植物』の印象をまるで人に置き換えるようにして物語を描いていくというところです。これはなかなかに興味深いです。では、それがどういったものかを見てみましょう。上記で作品冒頭をご紹介した〈にくらしいったらありゃしない〉では、冒頭にこんな風に『植物』が提示されます。 『【コウモリラン】正式名称 ビカクシダ 他の樹にくっついて生きていくタイプの植物っていうのがあって、コウモリランもそういう性質を持ってる。着生と寄生の2つに分かれるんだけど、寄生はくっついた樹の養分を吸って生きていくもので、着生っていうのは、ただその樹に「くっついている」という感じ。コウモリランは着生タイプ…』 出典として『フェリシモ「世界を旅する緑の定期便」リーフレットより(文・西畠清順)』という情報も合わせて記されています。私たちが普段見上げる樹の中に、あれ?なんだか葉っぱがあそこだけ違っているという樹木を目にすることがあります。有名どころでは、ケヤキなどに紛れ込むヤドリギが挙げらますが、あちらはこの解説でいうところの『寄生』になるようです。この短編で取り上げられる『コウモリラン』はそうではなく、あくまで『着生タイプ』であるところが特徴です。物語ではそんな『コウモリラン』の『着床』という点をお題に、71歳の主人公・細小井さち子が『下宿先を探して』いた21歳の山本を自宅に住まわせるようになった先の物語が描かれていきます。『下宿代』を『用心棒代』と相殺して、実質タダで衣食住を提供する さち子にとって、山本の存在は一見『寄生』でしかないようにも移ります。しかし、 『山本くんが下宿人となってから、さち子の毎日にふくよかな光が射すようになった』 そんな風に山本のことを思う さち子の心持ちからは決して『寄生』という言葉は浮かび上がりません。まさしく、『着床』という『コウモリラン』の生態を人の世界に当てはめたものと言えます。それぞれの物語は、このような形で、読者の心に極めて納得感のある物語が描かれていきます。 7つの作品から構成されるこの作品ですが、では、3つの作品をお題となる『植物』とともにご紹介しましょう。 ・〈どうしたの?〉: 『盛り場の一画に家を買った』というのは主人公の『わたし』。『二階建てで』『一階』は『八坪のギャラリー』という家の二階で一人暮らしを始めた『わたし』は、『家の目の前にある公園』を訪れる少女たちが気になります。『少年の時分から』『不良少女にあこがれていた』という『わたし』はある日一人の少女に声をかけます。『十七だと言った』アズは、『公園で寝泊まりして三日目』だと答えます。『客も来るしね』というアズに『一万円。前払いで』、『八千円でもいいよ』と言われた『わたし』は『持ち合わせがない…すぐ近くなんだけど』とアズを家に招き入れます。そして、アズを『一階』に住まわせるようになった『わたし』…。 → 植物 ホテイアオイ: 暖地では非常によく繁茂する ・〈村娘をひとり〉: 「キルギスの誘拐結婚」、「花のある女の子の育て方…」、「ある奴隷少女に起こった出来事」といった『本を机に置』いたのは主人公の太一郎。『かわいい村娘をひとり、ぼくの部屋に迎える…そして、その娘をぼくの思い通りにする…』と思う太一郎。そんな時、『やあ、太一郎』と菊乃が本を抱えてやってきました。「ドキュメント女子割礼」、「切除されて」というそれらの本を見て『またそれか』と語る太一郎は『よくもまあ、飽きないものだ』と語ります。そして二人は小さな声で『まず、ふたりで村娘をひとり奪って、去る。菊乃が村娘のクリトリスを切除し…村娘に花嫁教育をおこない、機が熟したら太一郎は…』と、ある計画を思案します…。 → 植物 シッポゴケ属: どのコケよりも日かげが必要、テラリウム: 小さなガラス容器の中で植物を栽培 ・〈趣味は園芸〉: 『二十代は全体的に面白くなかった。いいことがなかった』と『三十歳になった』夏を思うのは主人公の『わたし』。『短大を卒業したあとは自宅にこもった。就職はしなかった』という『わたし』は、『ベストの勤務形態は、一カ月働いて、一カ月休む』ことという思いの中に『短期のバイト』をして暮らします。そんな中に『いわゆる名作』を読むようになった『わたし』は、『負けじだましい』の下に『日本の文豪と呼ばれるひとの小説を全部読みたくな』っていきます。そんな中で『二、三カ月で辞めていたバイトが、半年は保つように』変化していく『わたし』。しかし、それも続かず『鬱で入院』してしまった『わたし』は…。 → 植物 スズメノカタビラ: 芝生のようにひんぱんに草刈りをされる状況でも生き残ることができます 3つの短編をご紹介しましたが、この程度の概要でもお題として提示された『植物』の印象がどことなく物語に重なっていく感覚がお分かりいただけるのではないかと思います。お題として取り上げられる『植物』は千差万別です。それもあって物語の雰囲気感も大きく変化します。〈どうしたの?〉の主人公の『わたし』は、『不良少女』に憧れを抱きそんな少女を家の一階に住まわせることにします。その展開はここでは伏せますが、お題の『ホテイアオイ』を思わせる物語が展開していきます。そんな物語が秀逸なのは、この短編がこの作品中唯一〈どうもしない〉という三編目の短編と対になっていることです。この二編が描く物語は非常によくできています。正直なところこの二編だけであれば、わたしは文句なくこの作品に★5つをつけました。一方で問題作と思われるのが〈村娘をひとり〉です。『奴隷少女』、『女子割礼』、そして『クリトリスを切除』といった極めて危険な嫌悪感を抱くような表現が次から次へと飛び出す物語はこの作品を極めて危ない世界へと導いていくものです。この短編の評価次第で、この作品の評価自体も大きく変化すると思います。個人的には、とても受け入れ難い世界観であり、この短編の登場をもって私の中で★5つはありえないものとなりました。そして、最後の短編〈趣味は園芸〉ではまた違う世界が描かれていきます。”この短篇集なら、私小説を入れてもいいんじゃないかと思いました”とおっしゃる作者の朝倉かすみさん。そんな朝倉さんが描く物語は『スズメノカタビラ』という何度もやり直しながらもひたむきに生きていく『植物』の姿に重なり合います。7つの短編の最後に位置するこの作品には自らも『植物』を愛られていらっしゃる朝倉さんの『植物』への愛情を垣間見ることができました。 『山本くんとの生活は、おとぎ話のようにおだやかだった』 そんな思いの中に日々を生きていく主人公の姿を『植物』の特徴に上手く重ね合わせていくこの作品。7つの短編が収録されたこの作品には”お題”を元に見事に物語を紡ぎあげていく朝倉さんの上手さを見る物語が描かれていました。よく知る『植物』、よく知らない『植物』、それぞれに説明される特徴に『植物』のことを改めて思うこの作品。雰囲気感が全く異なる物語の収録に、飽きることなく読み通せるこの作品。 次々登場する『植物』から浮かび上がる、それぞれの登場人物たちの生き方に、自分の生き方の理想系を思いもする、そんな作品でした。
植物たちの特性を人の行動になぞらえた短編が6~7話入っています。 作家さんってすごい。自分にはこういう発想の話は到底思いつかないな~。 ちょっと風変わりだったり、不気味だったり、う~ん、ちょっと ゾッとする話が多かったかな。実際にこういうことが起こったら怖い。 落ち着いて面白く読めたのは最後の話「趣...続きを読む味は園芸」でした。 「村娘をひとり」は、もう恐ろしさしか感じなかったです(汗)
最後の話は津村記久子っぽくて割と面白かったけど、全体的に終わりがぽやーっとしててあんまり印象に残らない。短編映画とかならまた少し違ったのかな。
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