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長生きは喜ばしいことのはずなのに、人生百年といわれてもまるで希望が持てないのはなぜ? これからの人生に不安がいっぱいの小島さんが、傘寿を迎えた人生の先達、養老先生に率直な疑問をぶつけます。私たちはいつまで働き続けなければいけないの? 今の仕事は自分に合っているの? なぜ自分の気持ちをわかってもらえないの? 夫婦関係ってこれでいいの? 今とは少し違う景色が見えてくる、幸せに生きるためのヒントが満載です。
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Posted by ブクログ
本書の最大の特徴は、老いをめぐる議論が単なる高齢者問題にとどまらず、「人間とは何か」「社会とは何を価値とするのか」という根源的な問いへと拡張されている点にある。養老は、「脳化社会」というキーワードを背景に、現代人が身体性を軽視し、合理性や効率性ばかりを追求する傾向を批判する。老いとは、そのような価値...続きを読む観に対する自然からの「抵抗」であり、身体の変化を通じて人間が本来持っていた不確実性や非効率性を取り戻す契機であるという。老いを「衰え」とのみ捉える視点に対し、むしろそれを人間存在の不可避な相として肯定し、その受容こそが大切であると論じる。 この視点は、本書の随所に現れる「変化」の思想と密接に結びついている。養老は「育つ、というのは、変わるということです」(p.32)と語る。人間は固定された存在ではなく、環境との関わりの中で変わり続ける存在である。だが現代社会は、変化よりも安定を重視し、効率よく生きることを求める傾向が強い。その結果、人は失敗や不確実性を避けようとし、自らを変化させる契機を失っているのではないか。本書は、そのような現代的価値観への違和感を通奏低音として持っている。 養老はさらに、「安心、安全で安定した状況に置かれると、人は学習しない」(p.29)と述べる。この言葉は、人間存在そのものへの洞察として読むべきだろう。変化のない環境は、人間から切実さを奪う。逆に、人は不安定な状況に置かれたとき、必死に適応しようとする中で学び、成長する。老いとは、まさにその「変化」を身体レベルで強制的に引き受けさせる経験である。若い頃には当然だと思っていた身体機能や社会的役割が揺らぐ中で、人は改めて「生きるとは何か」を考える。 この文脈で、養老の「何かを必死でやっていると、前を向くしかないから、将来がどうのと不安になる暇はない。それが『生きている』ってことでしょう」(p.31)という発言は極めて印象的だ。現代社会では、不安を取り除くことが幸福だと考えられがちである。しかし本書は、不安や不確実性を完全に消去することはできないし、むしろそれらを抱えながら動き続けるところに人間の生の本質があると示唆する。老いもまた、その事実を人間に突きつける現象として理解されている。 一方、小島は、現代社会は「若さ」や「美しさ」を過剰に価値づける傾向があるという。年齢を重ねることは、しばしば「市場価値」の低下として扱われる。しかし、その価値観から距離を取れるようになることで、逆に自由を得る側面があることを語る。 また、本書では「理解する」ということの意味についても深い考察がなされている。養老は、「『わかる』ということには、二つの種類があるでしょう。頭の中でわかるのと、体験するのと。それは意識と感覚の違い。情報化社会に生きていると、すべてのことは説明可能だと思っちゃう。言葉の限界を知るべきで、感覚は言語化できないですよ」(p.47)と述べる。 この指摘は、現代社会への重要な批判となっている。情報化社会では、知識やデータを得ることで「理解した」と思い込みやすい。しかし実際には、身体で経験しなければわからないことが数多く存在する。老いもその一つである。加齢による身体の変化、疲労感、孤独感、あるいは時間感覚の変化は、説明によって完全に共有できるものではない。それは実際に経験されることでしか理解できない。本書は、現代人が失いつつある「身体で知る」という感覚を取り戻そうとしているのである。 さらに、本書の議論は労働観にも及ぶ。現代では、「好きなことを仕事に」という理想が広く語られる。しかし養老は、「好きなことをしたいのであれば、世間とも適当にお付き合いして、糊口をしのがなくちゃなりません。会社が自分にあった仕事をくれるわけではないでしょ。自分を仕事に合わせていくから、人は育つわけでしょ」(p.68)と現実的に語る。 ここで重要なのは、「適応すること」が単なる迎合ではなく、人間を成長させる契機として捉えられている点である。現代社会では、自分に最適化された環境を求める傾向が強い。しかし実際には、人は摩擦や違和感を経験する中で変わり、成熟していく。本書が繰り返し示すのは、「変わることを受け入れる」姿勢の重要性であり、それは老いにも仕事にも共通するテーマとなっている。 老いには確かに身体的・社会的な困難が伴う。しかし、その困難を排除すべき「問題」としてのみ扱うのではなく、それを含めて人間の生の一部として引き受ける姿勢が提示される。ここには、近代社会が追求してきた「問題解決型」の思考への批判が込められている。すなわち、すべてをコントロール可能なものとして扱うのではなく、不可避のものを受け入れるという態度が、結果として人間の生を豊かにするのではないかという問いである。 注目すべき点は、本書が現代日本社会の構造的問題にも言及している点である。少子高齢化、医療や介護の制度、労働市場における年齢差別など、老いを取り巻く環境は個人の問題を超えて社会全体の課題となっている。養老は、こうした問題の背景にある「均一性」や「効率性」への過剰な志向を指摘し、多様な生き方や時間の流れを許容する社会の必要性を説く。 その問題意識は政治論にも接続される。養老は「政治の場合は、どのくらい長期の見通しを持てるかどうかが力量を決めますね」(p.133)と語る。現代政治は短期的成果や即効性を求めがちである。しかし、老いという問題は本来、数十年単位の視野を必要とする。教育、医療、介護、地域共同体といった問題は、長期的な時間感覚なしには考えられない。本書は、「老い」を論じながら、実は社会全体の時間意識そのものを問い直しているのである。 本書が提示しているのは、単純な楽観主義ではない。不安や不確実性、身体の衰えを含めて、人間は自然の一部として生きているという事実を受け入れること。その受容の中にこそ、本当の意味での成熟や自由があるのではないか、と語っている。
まさに、タイトルのとおり。 だんだん年を重ねるのが楽しみに思える。 自分の感情と向き合って、変に怒ったりしなくなりそう。 自分の人生を操縦するのは自分。
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