二人の貴公子

二人の貴公子

かつてシェイクスピアの戯曲は37篇とされてきましたが、最近の研究により、少なくともあと2、3篇はあると認められるようになりました。本作『二人の貴公子』は、そのうちの1つで、いまではアーデン版、オックスフォード版、ペンギン版など、主要なシェイクスピアの注釈シリーズに収録されています。
この作品は、シェイクスピアとシェイクスピアの後を継いで国王一座の座付き作家となったジョン・フレッチャーによって1613年頃に書かれたとされています。共作者のフレッチャーは感情の繊細な動きをとらえるのがうまく、文体はリズミカルで軽く、音楽的です。とくに喜劇に秀でた作家で、王政復古時代には、シェイクスピアよりも人気を博したといいます。それぞれの執筆箇所は文体の特徴から類推できますし、もちろんシェイクスピアの世界は遺憾なく発揮されています。
古代ギリシアを舞台に、従兄弟同士の騎士パラモンとアーサイトが王女エミーリアの愛を競い、それぞれ愛の女神ヴィーナスと軍神マルスを頼って決闘するという主筋。そして副筋は、オフィーリアを想わせる恋する乙女の狂乱を描く5幕4場構成の悲喜劇です。チョーサー『カンタベリー物語』中の「騎士の話」と、プルタルコス『英雄伝』中の「テーセウス伝」から材源を得ています。英国ではしばしば上演されていますが、日本では2003年5月、横浜で初演されました。作品の重要性から見て、今後ますます上演の機会は増えてくるでしょう。シェイクスピアの世界を新たに体験するという至福の時間をお楽しみください。

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