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イエズス会宣教師ルイス・フロイス(一五三二‐九七)は、三十五年間日本での布教に努め、長崎で没した。その間当時の日本の社会を細かく観察し、ヨーロッパのそれと比較・対照して記録した。筆は、衣食住、宗教生活、武器から演劇、歌謡等多方面におよぶ。貴重な史料であるだけでなく、現代の我々に様々な問題をよびさまさずにはおかない。
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Posted by ブクログ
イエズス会宣教師のルイス・フロイスが書いた「日欧文化比較」を翻訳、岡田章雄氏が訳注したもの。 戦国時代の話なので、比較された日本文化も現代日本人には馴染みのないものが多いですし、フロイスが勘違いしている部分もあるのですが、現代日本人が理解しやすいようにと加えられた岡田章雄氏の注釈が実に素晴らしく丁...続きを読む寧で、とても面白くて読み応えがあるのです。フロイスの書いたものより注釈の方が面白い。 比較された範囲がとても広いにもかかわらず、それをカバーできる岡田章雄氏の博識ぶりには舌を巻くばかりですが、それでも氏は「まだ十分満足すべきものとはいえない」とするのですから、大した御仁だと感心してしまいました。 これだけの知識を、たった720円+税で楽しめるのですから、本ってやっぱりいいですよね。
ルイス・フロイスの記録は、16世紀の日本社会に関する貴重な一次史料として高く評価されています。イエズス会宣教師の目を通して描かれた当時の日本は、ヨーロッパとはまったく異なる文化風景を見せています。 本書の醍醐味は、ヨーロッパ人の視点から日本の生活習慣や宗教観、武器、芸能などが詳細に記録されている点...続きを読むにあります。フロイスは日本の習俗を単に記述するだけでなく、常にヨーロッパのそれと対比させながら分析を加えています。こうした異文化比較は、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれるでしょう。 例えば、日本人の簡素な住居や着衣への言及からは、当時の日欧の生活水準の違いがうかがえます。また、日本の宗教観や武家社会の価値観の記述は、西洋とはまったく異なる世界観を物語っています。このような対照的な文化の衝突と受容の様子は、大変興味深い読み物となっています。 史料価値に加え、フロイスの記録は異文化理解の重要性を改めて示してくれる好著です。東西文明の違いを浮き彫りにしながらも、人間の普遍性にも言及しているのが印象的です。
イエズス会宣教師ルイス・フロイスは、35年間日本での布教に努め、長崎で生涯を終えた。その間、当時の日本の社会を細かく観察し、ヨーロッパ文化と比較・対照して記録した。筆は、衣食住、宗教生活、武器から演劇、歌謡等々多方面に及ぶ。 面白い。日本を知るためには、私達が何者かを知るためには、外から見るのも重...続きを読む要だと感じた。
秀吉のキリスト教に対する態度が少しばかり窺える。この辺は高校の日本史にはもちろん書いてない。それと、当然のことながら仏教に対するというか当時の坊さんに対する過剰?な批判もあり。個人的に印象に残っているのが、武士の子ども(年少者)に対しての感想で、その立ち居振る舞いにいたく感動している様が新鮮。
宗教の伝播には「見下し」の要素も必要なのかなと思った。 この本を読んで、高1の頃に授業で宗教はどのようにして広がるのか(国を跨いで広範囲に宗教が広がるためにはどのような要素が必要か)という議論をしたことを思い出した。 宣教師は宗教のセールスマンみたいなものだ。相手に自分の価値観を教える、おしつけると...続きを読むいう行為の過程では、そもそもその相手の信仰や価値観を過小評価するのも無理はない気がする。この本では全体的に日本人を馬鹿にしていることが文章の端々から読み取れて、特に仏教に関しては批判がものすごかった。 だから、話を戻すが、宗教が広がるには権力が必要なのはいうまでもなく、宗教を広める動機は「相手を喜ばせたい、救いたい」という善意よりは、「自分の方が偉い!!」というような、自己顕示欲を満たすために宣教師は来日したのかもしれない。 とはいえこの考えはさすがにprejudice というか、極論だろう。この本を読んで、宣教師が日本へ来た本来の目的が何だったのか、疑問に思ってしまった。 きになるキーワード 封建道徳 p177 綿帽子p41とその他 がvata-boxiになるのがウケる
非常に貴重な資料です。 リアリティのある内容で表現も生々しく、安土桃山時代にタイムスリップしたような感覚になります。
ヨーロッパでは娘や処女を閉じ込めておくことは極めて大事であり、厳格に行われる。日本では、娘たちは両親にことわりもしないで1日でも幾日でも、ひとりで好きな所へ出かける▼ヨーロッパでは、生れる児を堕胎することは滅多にない。日本では極めて普通で、20回も堕した女性があるほどである▼われわれの間では女性が文...続きを読む字を書くことはあまり普及していない。日本の高貴の女性は、それを知らなければ価値が下がると考えている▼ヨーロッパでは女性が葡萄酒を飲むことは礼を失するものであると考えられている。日本ではそれはごく普通で祭の時にはしばしば酔っ払うまで飲む▼ヨーロッパでは妻は夫の許可が無くては家から外へ出ない。日本の女性は夫に知らせず、好きな所へ行く自由を持っている▼ヨーロッパでは普通女性が食事を作り、男性が高い食卓で女性が低い食卓で食事をする。ヨーロッパでは夫が前、妻が後になって歩く▼ヨーロッパでは、妻を離別することは、罪悪であり、最大の不名誉である。日本では意のままに幾人でも離別する。妻はそのことによって名誉を失わないし、また結婚もできる。pp.39-61 われわれは普通、鞭で打って息子を懲罰する。日本ではそれは滅多に行われない。ただ(言葉?)によって譴責(けんせき)する(戒める)だけである▼われわれの教師は、子どもたちに教義や貴い正しい行儀作法を教える。坊主は彼らに弾奏や唱歌、遊戯、撃剣などを教え、また彼らと忌まわしい行為(衆道しゅどう、男色なんしょく、男性の同性愛)をする。 坊主らは逸楽と休養の中に暮し、労苦から逃れるために教団に入る。坊主らはあらゆる内心の汚穢(おわい)と肉体のあらゆる忌まわしい罪とを誓う。坊主らは檀那(財物を布施する信者)を食い物にし、あらゆる手段を講じて自ら富み栄えることを計る。坊主らは外面には肉も魚も食べないと公言しながら、蔭では食べている。坊主らは禁じられているにも拘らず、道路で酩酊している。坊主らは紙に書いた数多くの各種の守り札を多額の金をとって与える。 われわれは良い衣服を上に着て、良くない衣服を下に着る。日本人は良いのを下に、良くないものを上に着る▼われわれは保養・気晴らしに散歩をするが、日本人は散歩をしない。それを不思議がり、仕事のため、悔悛(かいしゅん、悔い改め)のためだと考えている。 われわれはすべてのものを手を使って食べる。日本人は男も女も、子どもの時から二本の棒を用いて食べる(※ヨーロッパで、フォークを用いる慣習が普及したのは17世紀辺りから。それまでは手づかみ)▼われわれは乳製品・チーズ・バター・骨の髄などを喜ぶ。日本人はこれらのものをすべて忌み嫌う。彼らにとってそれは悪臭がひどいのである。 われわれは瀉血(しゃけつ)療法をおこなう。日本人は草による火の塊を用いる。※ヨーロッパでは、病人の血管を割いて血液を外に出すことで体内の病気を取り去ることができると信じられていた。無駄に体力を消耗させるとして18世紀以降は減少。 われわれは怒りの感情を大いに表わすし、短慮(たんりょ、気短か)をあまり抑制しない。彼らは特異の方法でそれを抑える。きわめて中庸を得、思慮深い。 われわれの間では、武装具を着ける時、その下に厚い布をつけなければならない。日本人は武装具を着ける時、生まれた時のままの赤裸(あかはだか、真っ裸)になる▼われわれは撃剣をする時ものを言わない。日本人は切りつけたり、逆打ちをくらわせる毎に必ず叫び声を発する。 日本人は神(カミ)に現世の幸福を求め、仏(ホトケ)には救霊を希(こいねが)う。神には幸福・健康・長寿・富貴・子女・勝利を訴え、仏には罪の赦しと来世の救いを祈る。 ルイス・フロイス『Europa e Esta Provincia de Japao』1585 ※イエズス会宣教師。リスボン生まれ。31歳で来日。以後、35年間日本各地で布教。長崎にて没。 **************** 織田信長。極度に戦を好み、軍事的修練にいそしみ、名誉心に富み、正義において厳格。家臣の忠言に従わず、一同から畏敬されている。神・仏の一切を礼拝・尊崇・迷信を軽蔑する。極めて卑賤な家来とも親しく話をする。 明智光秀。裏切りや密会を好み、刑罰を科するに残酷。忍耐力に富み、謀略の達人。 ルイス・フロイス『Historia de Japam(日本史)』 ************* 堺(現在の大阪堺市)。この市は日本でもっとも富裕な商人が住み、自由市として大きな特権と自由を有している。『イエズス会日本年報』 日本人は世界で一番頭がいい。日本人を説得するために一番頭がいい宣教師を送ってほしい。『フランシスコ・ザビエル全書簡3』 キリスト教の洗礼を受けたある村の娘お大。村人は洗礼についてとくに咎めることはなかった。しかし宣教師の命令で、家の仏壇と位牌を捨てたところ、村八分にされ、遊女小屋からも拒絶された。小泉やくも八雲『お大の場合』1894-1904 宴席に雇われた本職の芸人(芸者さんのことであろう)の奏する楽器や唄で陽気になり、2、3時間談笑した後、もう充分に酩酊したところで客は主人にお辞儀をして、飯を所望する。これでお話はよく了解したという合図だ。アーネスト・サトウ『一外交官の見た明治維新』1921
フロイスによる日本観察記。現代の日本にも共通しているものもあり、ないものもあり。一つ一つに解説がついているのが有り難い。
ヨーロッパ文化と日本文化 ルイス・フロイス 岩波文庫 スペインから派遣されたイエズス会の宣教師は 35年に渡り日本で暮らし長崎で他界した その間日本を旅して ヨーロッパとの暮らしの違いを仔細に観察し 様々な立場における振る舞いを記録し イエズス会に送るスパイ役でもあったのだろう 武器から雑器にいた...続きを読むる工芸について あるいは能などの演劇から 祭りや詩歌などの文化について 箇条書きで事細かく書き記しているが 部分的すぎて全体感を書いた部分も多い しかし 多くの注釈付きで 私達の及ばない別の世界を見せてもくれる 貴重な記録である あまりにも字が小さすぎて読みにくいので ワイド版をおすすめする
江戸時代、日本にキリスト教伝来のため来ていた宣教師の書いたもの。 当時の日本におけるヨーロッパとの差異を記してある。岩波文庫版、ここが変だよ日本人。 日本人にとっては、知らなかった日本像と当時のヨーロッパ文化も勉強できるという、なかなか興味深い本であった。 トイレについての記述もあった(というか、ト...続きを読むイレの本読んでて本書を知った)ので、下に紹介する。 第11章 19 我々の便所は家の後の、人目のつかない所にある。彼らのは、家の前にあって、すべての人に解放されている。 20 われわれは坐り、彼らはしゃがむ。 21 われわれは糞尿を取り去る人に金を払う。日本ではそれを買い、米と金を支払う。 22 ヨーロッパでは馬の糞を菜園に投じ、人糞を塵芥置き場に投ずる。日本では馬糞を塵芥置き場に、人糞を菜園に投ずる。
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