あらすじ
イエズス会宣教師ルイス・フロイス(一五三二‐九七)は、三十五年間日本での布教に努め、長崎で没した。その間当時の日本の社会を細かく観察し、ヨーロッパのそれと比較・対照して記録した。筆は、衣食住、宗教生活、武器から演劇、歌謡等多方面におよぶ。貴重な史料であるだけでなく、現代の我々に様々な問題をよびさまさずにはおかない。
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Posted by ブクログ
イエズス会宣教師のルイス・フロイスが書いた「日欧文化比較」を翻訳、岡田章雄氏が訳注したもの。
戦国時代の話なので、比較された日本文化も現代日本人には馴染みのないものが多いですし、フロイスが勘違いしている部分もあるのですが、現代日本人が理解しやすいようにと加えられた岡田章雄氏の注釈が実に素晴らしく丁寧で、とても面白くて読み応えがあるのです。フロイスの書いたものより注釈の方が面白い。
比較された範囲がとても広いにもかかわらず、それをカバーできる岡田章雄氏の博識ぶりには舌を巻くばかりですが、それでも氏は「まだ十分満足すべきものとはいえない」とするのですから、大した御仁だと感心してしまいました。
これだけの知識を、たった720円+税で楽しめるのですから、本ってやっぱりいいですよね。
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ルイス・フロイスの記録は、16世紀の日本社会に関する貴重な一次史料として高く評価されています。イエズス会宣教師の目を通して描かれた当時の日本は、ヨーロッパとはまったく異なる文化風景を見せています。
本書の醍醐味は、ヨーロッパ人の視点から日本の生活習慣や宗教観、武器、芸能などが詳細に記録されている点にあります。フロイスは日本の習俗を単に記述するだけでなく、常にヨーロッパのそれと対比させながら分析を加えています。こうした異文化比較は、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれるでしょう。
例えば、日本人の簡素な住居や着衣への言及からは、当時の日欧の生活水準の違いがうかがえます。また、日本の宗教観や武家社会の価値観の記述は、西洋とはまったく異なる世界観を物語っています。このような対照的な文化の衝突と受容の様子は、大変興味深い読み物となっています。
史料価値に加え、フロイスの記録は異文化理解の重要性を改めて示してくれる好著です。東西文明の違いを浮き彫りにしながらも、人間の普遍性にも言及しているのが印象的です。
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日本史の教科書に必ず載っているであろうルイス・フロイス。
織田信長に気に入られたことから、長きにわたって日本文化の中枢を垣間見ることができ、記録を残した。
大著「日本史」が有名だけど、この本はそんな難しいものではなくて、ヨーロッパと日本の違いを箇条書きのように短い文章で書き連ねたもの。
これがすこぶる面白い。
天正という、江戸時代より前の戦国時代、日本人はこうだったと逆に知る部分も多く、大変ためになりました。
“彼らの習慣はわれわれの習慣ときわめてかけはなれ、異様で、縁遠いもので、このような文化の開けた、創造力の旺盛な、天賦の知性を備える人々の間に、こんな極端な対照があるとは信じられないくらいである。”
“われわれの間では白い目を奇異に思うことはない。日本人はそれを奇怪に思い、彼らの間では稀有のことである。”
「白眼視する」「白い目で見る」という表現はヨーロッパにないそうだ。黒目がちが好きな日本人。
“われわれの間では男たちは髪を刈っており、禿頭にされると侮辱されたと考える。日本人は毛抜きを用いて、自分で、毛の残らないように、全部抜いてしまう。そのことは苦痛と涙を伴う。”
涙を伴うんだ…。
“われわれの衣服はほとんど一年の四季を通じて同じである。日本人は一年に三回変える。夏帷子、秋袷、冬着物。”
季節によって気温差があるからね。
“ヨーロッパの女性は芳香ある香料を使って髪に香りを与える。日本の女性はいつも(髪に)塗りつける油で悪臭を放つ。”
かちーん。(-_-メ)
“ヨーロッパの女性は短い年月で髪が白くなる。日本の女性は油を塗るために六十歳になっても髪が白くならない。”
そうなの?
“ヨーロッパでは夫が前、妻が後になって歩く。日本では夫が後、妻が前を歩く。”
いつから変わったんだろう?
“ヨーロッパでは親族一人が誘拐されても一門全部が死の危険に身をさらす。日本では父、母、兄弟がそのことを隠し立てして、軽く過ごしてしまう。”
軽く?
“ヨーロッパでは娘や処女を閉じ込めておくことはきわめて大事なことで、厳格におこなわれる。日本では娘たちは両親にことわりもしないで一日でも幾日でも、ひとりで好きな所へ出かける。”
そんなこと、許しまへん!
“ヨーロッパでは妻は夫の許可が無くては、家から外へ出ない。日本の女性は夫に知らせず、好きな所に行く自由をもっている。”
自由であっても、知らせようよ。
“ヨーロッパでは普通女性が食事を作る。日本では男性がそれを作る。そして貴人たちは料理を作るために厨房に行くことを立派なことだと思っている。”
いつ変わったんだろう?
“われわれの間では四歳の子供でも自分の手を使って食べることを知らない。日本の子供は三歳で、箸をつかって自分で食べる。”
まだヨーロッパでナイフやフォークが発明される前の時代。基本手づかみ。
“ヨーロッパの子供は多大の寵愛と温情、美食と美衣によって養育される。日本の子供は半裸で、ほとんど何らの寵愛も快楽もなく育てられる。”
偏見じゃない?
“われわれはスープがなくとも結構食事することができる。日本人は汁がないと食事ができない。”
結構とはどの程度なのか?
“われわれの間ではすべての果物は熟したものを食べ、胡瓜だけは未熟のものを食べる。日本人はすべての果物を未熟のまま食べ、胡瓜だけはすっかり黄色になった、熟したものを食べる。”
ちょっとどういうことなのかよくわかりません。未熟な果物?熟した胡瓜?
“われわれの間では鍋の底に焦げついた飯は戸外に捨てるか、犬に食わせる。日本ではそれは食後の果物である。またはそれを終わりに飲む湯の中に投ずる。”
米を大切に!
“われわれは食物に種々の薬味を加えて調味する。日本人は味噌で調味する。味噌は米と腐敗した穀物とを塩で混ぜ合わせたものである。”
言い方!
“われわれの間では腐敗した肉や魚を食べたり、贈ったりすることは無礼なことである。日本ではそれを食べ、また悪臭を放っても躊躇することなくそれを贈る。”
それをなれ寿司という。普通に腐ったものは、さすがに食べたりあげたりしないよ。
ちょっと紹介と思ったら、ほとばしってしまった。
こんな感じで坊主や寺院、信仰に関すること、武具武器について、馬、病気や医療、書に関すること、家屋建築、船、歌舞音曲など、独断と偏見と勘違いが多少盛った文章で綴られております。
戦国時代の女性が結構自由な感じなのが意外でした。
Posted by ブクログ
イエズス会宣教師ルイス・フロイスは、35年間日本での布教に努め、長崎で生涯を終えた。その間、当時の日本の社会を細かく観察し、ヨーロッパ文化と比較・対照して記録した。筆は、衣食住、宗教生活、武器から演劇、歌謡等々多方面に及ぶ。
面白い。日本を知るためには、私達が何者かを知るためには、外から見るのも重要だと感じた。
Posted by ブクログ
秀吉のキリスト教に対する態度が少しばかり窺える。この辺は高校の日本史にはもちろん書いてない。それと、当然のことながら仏教に対するというか当時の坊さんに対する過剰?な批判もあり。個人的に印象に残っているのが、武士の子ども(年少者)に対しての感想で、その立ち居振る舞いにいたく感動している様が新鮮。
Posted by ブクログ
宗教の伝播には「見下し」の要素も必要なのかなと思った。
この本を読んで、高1の頃に授業で宗教はどのようにして広がるのか(国を跨いで広範囲に宗教が広がるためにはどのような要素が必要か)という議論をしたことを思い出した。
宣教師は宗教のセールスマンみたいなものだ。相手に自分の価値観を教える、おしつけるという行為の過程では、そもそもその相手の信仰や価値観を過小評価するのも無理はない気がする。この本では全体的に日本人を馬鹿にしていることが文章の端々から読み取れて、特に仏教に関しては批判がものすごかった。
だから、話を戻すが、宗教が広がるには権力が必要なのはいうまでもなく、宗教を広める動機は「相手を喜ばせたい、救いたい」という善意よりは、「自分の方が偉い!!」というような、自己顕示欲を満たすために宣教師は来日したのかもしれない。
とはいえこの考えはさすがにprejudice というか、極論だろう。この本を読んで、宣教師が日本へ来た本来の目的が何だったのか、疑問に思ってしまった。
きになるキーワード
封建道徳 p177
綿帽子p41とその他 がvata-boxiになるのがウケる
Posted by ブクログ
ヨーロッパでは娘や処女を閉じ込めておくことは極めて大事であり、厳格に行われる。日本では、娘たちは両親にことわりもしないで1日でも幾日でも、ひとりで好きな所へ出かける▼ヨーロッパでは、生れる児を堕胎することは滅多にない。日本では極めて普通で、20回も堕した女性があるほどである▼われわれの間では女性が文字を書くことはあまり普及していない。日本の高貴の女性は、それを知らなければ価値が下がると考えている▼ヨーロッパでは女性が葡萄酒を飲むことは礼を失するものであると考えられている。日本ではそれはごく普通で祭の時にはしばしば酔っ払うまで飲む▼ヨーロッパでは妻は夫の許可が無くては家から外へ出ない。日本の女性は夫に知らせず、好きな所へ行く自由を持っている▼ヨーロッパでは普通女性が食事を作り、男性が高い食卓で女性が低い食卓で食事をする。ヨーロッパでは夫が前、妻が後になって歩く▼ヨーロッパでは、妻を離別することは、罪悪であり、最大の不名誉である。日本では意のままに幾人でも離別する。妻はそのことによって名誉を失わないし、また結婚もできる。pp.39-61
われわれは普通、鞭で打って息子を懲罰する。日本ではそれは滅多に行われない。ただ(言葉?)によって譴責(けんせき)する(戒める)だけである▼われわれの教師は、子どもたちに教義や貴い正しい行儀作法を教える。坊主は彼らに弾奏や唱歌、遊戯、撃剣などを教え、また彼らと忌まわしい行為(衆道しゅどう、男色なんしょく、男性の同性愛)をする。
坊主らは逸楽と休養の中に暮し、労苦から逃れるために教団に入る。坊主らはあらゆる内心の汚穢(おわい)と肉体のあらゆる忌まわしい罪とを誓う。坊主らは檀那(財物を布施する信者)を食い物にし、あらゆる手段を講じて自ら富み栄えることを計る。坊主らは外面には肉も魚も食べないと公言しながら、蔭では食べている。坊主らは禁じられているにも拘らず、道路で酩酊している。坊主らは紙に書いた数多くの各種の守り札を多額の金をとって与える。
われわれは良い衣服を上に着て、良くない衣服を下に着る。日本人は良いのを下に、良くないものを上に着る▼われわれは保養・気晴らしに散歩をするが、日本人は散歩をしない。それを不思議がり、仕事のため、悔悛(かいしゅん、悔い改め)のためだと考えている。
われわれはすべてのものを手を使って食べる。日本人は男も女も、子どもの時から二本の棒を用いて食べる(※ヨーロッパで、フォークを用いる慣習が普及したのは17世紀辺りから。それまでは手づかみ)▼われわれは乳製品・チーズ・バター・骨の髄などを喜ぶ。日本人はこれらのものをすべて忌み嫌う。彼らにとってそれは悪臭がひどいのである。
われわれは瀉血(しゃけつ)療法をおこなう。日本人は草による火の塊を用いる。※ヨーロッパでは、病人の血管を割いて血液を外に出すことで体内の病気を取り去ることができると信じられていた。無駄に体力を消耗させるとして18世紀以降は減少。
われわれは怒りの感情を大いに表わすし、短慮(たんりょ、気短か)をあまり抑制しない。彼らは特異の方法でそれを抑える。きわめて中庸を得、思慮深い。
われわれの間では、武装具を着ける時、その下に厚い布をつけなければならない。日本人は武装具を着ける時、生まれた時のままの赤裸(あかはだか、真っ裸)になる▼われわれは撃剣をする時ものを言わない。日本人は切りつけたり、逆打ちをくらわせる毎に必ず叫び声を発する。
日本人は神(カミ)に現世の幸福を求め、仏(ホトケ)には救霊を希(こいねが)う。神には幸福・健康・長寿・富貴・子女・勝利を訴え、仏には罪の赦しと来世の救いを祈る。
ルイス・フロイス『Europa e Esta Provincia de Japao』1585
※イエズス会宣教師。リスボン生まれ。31歳で来日。以後、35年間日本各地で布教。長崎にて没。
****************
織田信長。極度に戦を好み、軍事的修練にいそしみ、名誉心に富み、正義において厳格。家臣の忠言に従わず、一同から畏敬されている。神・仏の一切を礼拝・尊崇・迷信を軽蔑する。極めて卑賤な家来とも親しく話をする。
明智光秀。裏切りや密会を好み、刑罰を科するに残酷。忍耐力に富み、謀略の達人。
ルイス・フロイス『Historia de Japam(日本史)』
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堺(現在の大阪堺市)。この市は日本でもっとも富裕な商人が住み、自由市として大きな特権と自由を有している。『イエズス会日本年報』
日本人は世界で一番頭がいい。日本人を説得するために一番頭がいい宣教師を送ってほしい。『フランシスコ・ザビエル全書簡3』
キリスト教の洗礼を受けたある村の娘お大。村人は洗礼についてとくに咎めることはなかった。しかし宣教師の命令で、家の仏壇と位牌を捨てたところ、村八分にされ、遊女小屋からも拒絶された。小泉やくも八雲『お大の場合』1894-1904
宴席に雇われた本職の芸人(芸者さんのことであろう)の奏する楽器や唄で陽気になり、2、3時間談笑した後、もう充分に酩酊したところで客は主人にお辞儀をして、飯を所望する。これでお話はよく了解したという合図だ。アーネスト・サトウ『一外交官の見た明治維新』1921
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ヨーロッパ文化と日本文化 ルイス・フロイス 岩波文庫
スペインから派遣されたイエズス会の宣教師は
35年に渡り日本で暮らし長崎で他界した
その間日本を旅して
ヨーロッパとの暮らしの違いを仔細に観察し
様々な立場における振る舞いを記録し
イエズス会に送るスパイ役でもあったのだろう
武器から雑器にいたる工芸について
あるいは能などの演劇から
祭りや詩歌などの文化について
箇条書きで事細かく書き記しているが
部分的すぎて全体感を書いた部分も多い
しかし
多くの注釈付きで
私達の及ばない別の世界を見せてもくれる
貴重な記録である
あまりにも字が小さすぎて読みにくいので
ワイド版をおすすめする
Posted by ブクログ
江戸時代、日本にキリスト教伝来のため来ていた宣教師の書いたもの。
当時の日本におけるヨーロッパとの差異を記してある。岩波文庫版、ここが変だよ日本人。
日本人にとっては、知らなかった日本像と当時のヨーロッパ文化も勉強できるという、なかなか興味深い本であった。
トイレについての記述もあった(というか、トイレの本読んでて本書を知った)ので、下に紹介する。
第11章
19 我々の便所は家の後の、人目のつかない所にある。彼らのは、家の前にあって、すべての人に解放されている。
20 われわれは坐り、彼らはしゃがむ。
21 われわれは糞尿を取り去る人に金を払う。日本ではそれを買い、米と金を支払う。
22 ヨーロッパでは馬の糞を菜園に投じ、人糞を塵芥置き場に投ずる。日本では馬糞を塵芥置き場に、人糞を菜園に投ずる。
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安土桃山時代に来日したイエズス会ポルトガル人宣教師ルイス・フロイスによるヨーロッパと日本の文化比較を記した小冊子の解説書。底本はルイス・フロイスが来日23年目で九州・加津佐で記した『日欧文化比較』で、本書では訳者がわかりやすいように行ごとに解釈を付け、挿図している。
構成としては、日欧の比較を習俗・文化・宗教・道具などの分類として章立てし、項目毎に「われわれは(ヨーロッパでは)○○○。彼らは(日本では)×××。」といった簡略な比較文になっている。
それぞれの比較はとても面白く現代でもわかるものもあり、とても興味深い。その一方で解釈を読むと日本側の記載は貶める方の誇張も多い気がする。フロイスの趣旨を考えると、ヨーロッパ文化との違いを奇異に、そしてさかさまなものとして伝える側面が多く見受けられ、90%くらいは「何考えているんだ日本人は・・・」的な記載が多いように感じられる。(笑)外見的な比較が多く、内面まで理解した記述ではないのが残念なところで、このままではどこまでいっても「異邦人の視点」を抜け出していない感じだ。
少し前まではフロイスの大著『日本史』をはじめあまり史料として研究に使用されることは少なかったとのことですが(誇張や勘違いがあるためか?)、近年、見直されてきているとのことで、こうした同時代の一次史料は大いに研究の一助になってほしいと思います。
以下は特に興味深い記述です。
「ヨーロッパ人は大きな目を美しいとしている。日本人はそれをおそろしいものと考え、涙の出る部分の閉じているのを美しいとしている。」
「われわれは喪に黒色を用いる。日本人は白色を用いる。」
「われわれはいつでも唾を吐きだす。日本人は概して痰を呑み込む。」
「ヨーロッパの女性は美しい整った眉を重んずる。日本の女性は一本の毛も残さないように、全部毛抜で抜いてしまう。」
「われわれの間では女性が素足で歩いたならば、狂人か恥知らずと考えられるであろう。日本の女性は貴賤を問わず、一年の大半、いつも素足で歩く。」
「ヨーロッパでは夫が前、妻が後になって歩く。日本では夫が後、妻が前を歩く。」
「ヨーロッパの女性は分娩の後、横になって、休息する。日本の女性は分娩の後二十日の間、昼も夜も坐っていなければならない。」
「われわれの間では、人は罪の償いをして、救霊を得るために修道会に入る。坊主らは、逸楽と休養の中で暮らし、労苦から逃れるために教団に入る。」
「われわれの間では修道士が結婚すれば背教者になる。坊主らは信仰に飽きると、結婚をするか、または兵士になる。」
「ヨーロッパでは主人だ死ぬと従僕らは泣きながら墓まで送って行く。日本ではある者は腹を裂き、多数の者が指先を切りとって屍を焼く火の中に投げ込む。」
「われわれはスープが無くとも結構食事をすることができる。日本人は汁が無いと食事ができない。」
「ヨーロッパ人は牝鶏や鶉、パイ、ブラモンジュを好む。日本人は野犬や鶴、大猿、猫、生の海藻などをよろこぶ。」(食事について)
「われわれの馬はきわめて美しい。日本のものはそれに比べてはるかに劣っている。」
「われわれは坐り、彼らはしゃがむ。」(トイレについて)
「われわれの劇は詩である。彼らのは散文である。」
「われわれの間では人に面と向かって嘘付きだということは最大の侮辱である。日本人はそれを笑い、愛嬌としている。」
「われわれの間では礼節はおちついた、厳粛な顔でおこなわれる。日本人はいつも間違いなく偽りの微笑でおこなう。」
「われわれは拇指または食指で鼻孔を綺麗にする。彼らは鼻孔が小さいために小指を用いておこなう。」
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安土桃山時代にわが国で布教を行ったポルトガル人宣教師ルイス・フロイスの『日欧文化比較』の改題。
雑学をたくわえるには資する。比較文化という観点からも,無論おもしろい。
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●構成
第一章 男性の風貌と衣服に関すること
第二章 女性とその風貌、風習について
第三章 児童およびその風俗について
第四章 坊主ならびにその風習に関すること
第五章 寺院、聖像およびその宗教の信仰に関すること
第六章 日本人の食事と飲酒のしかた
第七章 日本人の攻撃用および防禦用武器について 付戦争
第八章 馬に関すること
第九章 病気、医者および薬について
第十章 日本人の書法、その書物、紙、インクおよび手紙について
第十一章 家屋、建築、庭園および果実について
第十二章 船とその慣習、道具について
第十三章 日本の劇、喜劇、舞踊、歌および楽器について
第十四章 前記の章でよくまとめられなかった異風で、特殊な事どもについて
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日本の戦国時代から安土桃山時代にかけて、日本には東アジアにまで進出してきた欧州の国々からキリスト教の宣教師が派遣された。彼らの主たる目的はキリスト教の布教であるが、それだけでなく日本の政治経済から風俗に至るまで様々な情報を自国へ伝え、後に日本へ進出するための情報を収集していた。
ポルトガル人ルイス・フロイスは、1562年に日本を訪れ、途中織田信長や豊臣秀吉と謁見を重ね、1597年に死去するまで日本国内で布教活動を行い、また来日したポルトガル人が日本や日本人と接するための案内役を務めた。
フロイスは様々な記録を残しており、中でも『日本史』が有名である。本書は、西洋の人々がTopsy-Turvydom(「さかさま」「あべこべ」の意)と称していた比較記述によって、西洋からみた当時の日本の姿を描き出している(「我々(=西洋)では●●だが、日本では■■である」という記述)。その中には、当時の日本と現在の日本では異なる、逆になる(つまり本書で言う西洋の立場)ような事柄も含まれている。また、強引な比較によって日本の事柄が誇張されている事や、著者が宣教師の立場であるための偏見なども見られ、そうした西洋人の日本観も本書から読み取ることができる。
原文はひたすら比較の記述のみであり、翻訳の際に訳者が詳細な注をつけている。気軽に読める本であり、またトリビアの辞典としても利用できるだろう。
Posted by ブクログ
中世…だから安土桃山とかあの頃か。日本へやってきた宣教師がつづった日本とヨーロッパ文化の対比。
一問一答の箇条書き形式なので大変読みやすかったです。
でも注釈によると面白く書くため…もとい、違いを際立たせるために、わざと極端な例をあげている部分もわりとあるみたい。可愛いなルイス。
なぜか私はこの本のことを幕末に書かれたものだと思い込んでて、そうじゃないとわかってからも読みながらうっかり首をひねることがありました。(あ、そーかそーか幕末じゃないんだっけ)
どうしてそんな勘違いをしてしまうんだろう?
Posted by ブクログ
ルイス・フロイスら日本を訪れた宣教師たちが、いろいろ記録を残していて、それが当時を伝える貴重な資料となっていることは知っていたが、こういう形で割合簡単に読めると知り読んでみた。
何も先入観がない中で、こんなふうに見ているんだなという素朴さが面白い。
Posted by ブクログ
16世紀、イエズス会宣教師のルイス・フロイスは日本での布教を通じて、織田信長などの戦国大名と交流し、長崎で没しています。
その彼が、日常生活でのヨーロッパ(おそらく出身のポルトガル)と日本の風俗、メンタリティー、振る舞いの違いを事細かに記したのが本書です。その中で、次の文章に興味を惹かれました。
「ヨーロッパでは言葉の明瞭なことを求め、曖昧な言葉を避ける。日本では曖昧な言葉が一番優れた言葉で、もっとも重んぜられている」
訳注によれば、これは当時の敬語法が発達していたことに因るとするも、言葉に対する日本人の態度は現在もあまり変わっていないように思われました。
Posted by ブクログ
15世紀戦国時代の日本に来た宣教師ルイスフロイスがその当時の日本の文化や生活などを綴った記録をまとめた貴重な本です。
戦国時代の日本には今では考えられない風習があったり今でも受け継がれてるなぁと思わせてくれる所があってとても面白い一冊でした。
調べないと分からない言葉や単語が多かったので読むのに
多少苦労しました。
ルイスフロイスが他に書いた「日本史」と言う本がある事も知れたので、そちらの方も今度読んでみたいです。
Posted by ブクログ
同じ日本人でも500年近く前では生活習慣も違っていてるので、文化の比較とか難しいことは考えなくても読んでいて面白い。
ヨーロッパ人の目線なので見下した表現になるのは当時のことなので仕方がないかな。あと、注記も現代語訳されているともっとよかったのでは。
Posted by ブクログ
戦国武将や歴史上の秘話のような事柄は出てこない。
400年前の日本を知る貴重な記録ではあるのだろうが、異文化に対する態度は、なんだかキリスト教的な啓蒙者の「上から」のそれであり、いちいち西洋文明の優位を述べているように感じてしまう。
Posted by ブクログ
信長にも近しい存在であったルイス フロイスによる文化比較論。
ヨーロッパ文化との差異を強調する為、極端な表現になってる感は否めないが、我々にとって日本固有の伝統だと思っていたものが、戦国時代つまり16世紀当時はそうじゃなかった点も多々あり興味深い。
しかし、商売敵?である仏教の坊主に対しては辛辣且つ執拗。
Posted by ブクログ
短いけど濃密。当時の日欧の身近なものを比較しつつ記す。解説がありがたい。異文化について考えるとき、この比較の視点は役立ちそう。取り上げている物は実物を見たことがないものが多かったので、博物館で見るなどして知っているものを増やす必要があると感じた。
Posted by ブクログ
16世紀に来日した、ルイスフロイスの目を通して、ヨーロッパ(ポルトガル)と日本の違いについて記述したものを抜粋した形でまとめられている。
まず、当時の日本の仏教について、彼らが奇異の目で見ていたことが列記されている。
「坊主らは悪魔を尊敬し、崇拝し、悪魔のために寺院を建て、多くの供物を捧げる」といったように、おそらく密教系の仏像に対する崇拝をひときわ多く書き残している。
特に興味を惹いたのは、風俗に関する記述だ。
「われわれはスープが無くとも食事することができる。日本人は汁(xiru)が無いと食事ができない」
「ヨーロッパ人は焼いた魚、煮た魚を好む。日本人は生で食べることを一層よろこぶ」
「我々は素麺を食べるのに、熱い、切ったものを食べる。彼らはそれを冷たい水に漬け、極めて長いものを食べる」
「われわれは砂糖やシナモンをつかって素麺を食べる。彼らは芥子や唐辛をつかってそれを食べる」
などなど、当時から刺身・素麺といった食事があたりまえのようにあった事実と、芥子素麺という今とは違った食事の方法など、中世の食事を考える上でも非常に面白い。
また、酒に酔ったときは、「前後不覚に陥る」「唄ったり踊ったりする」といった今にも通じる日本人の酔いっぷりまで記述されている。
生き生きとした中世人の風俗に触れたい方にはオススメの一冊です。
Posted by ブクログ
戦国時代の日本を訪れた宣教師・フロイスによる日欧文化比較論。「われわれの間では~~、一方日本では、・・・」という手法で手記を書いている。当時の日本の習慣がよく分かって面白い。