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危機に瀕する都市国家テーバイを救うためオイディプス王は神託を請う。結果は、「先王ライオス殺害の犯人を罰せよ」だった。真相が明らかになるにつれ、みずからの出生の秘密を知ることになる彼を待ち受けていた運命とは? 「エディプス・コンプレックス」のもとになるなど、後世の文学、思想に大きな影響を与え、今も全世界で読み継がれ、上演されつづけるギリシャ悲劇の最高傑作。
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Posted by ブクログ
この本は、紀元前427年に執筆され、大ディオニューシア祭にて上演された。その時、ソフォクレスは70歳前後だった。読んで、感じたのは、余分なものを全て削ぎ落として、実にスマートな演劇シナリオである。まさに、洗練され、曇りが全くないのだ。言葉の背景を読み取らせる編集法だ。 神託(デルフォイの信託)...続きを読むで予言された「父を殺し、母と結婚する」という大きなテーマがどっかりと座っている。それは、村上春樹の『海辺のカフカ』の15歳の少年田村カフカは、父親から「お前は父親殺しと母親との交わり(オイディプス王)の宿命を背負っている」という呪いをかけられる。 しかし、ソフォクレスの「父親殺し」は、やはりスケールが大きい。人間が運命から逃れようとすることが、かえってその運命を成就させてしまうというパラドックスを書いている。『海辺のカフカ』は、そこまで描ききれていない。 本書では、オイディプスが生きている限り、その予言を知らないとしても、神の予言を変えることができなかった。オイディプスは、「子供の頃に死んだ方がよかった」とつぶやかざるをえなかった。 アリストテレスは、ギリシャ悲劇の目的はカタルシス(感情の浄化)にあると定義した。観客はオイディプスの悲劇を目の当たりにすることによって、登場人物の恐怖と憐れみの感情を共有し、最終的にはこれらの感情から解放されて精神的な平穏を得る。二つの教訓、母親もしくは子と通じてはいけない。父親は殺してはいけないということだ。それが人間のルールとなる。この過程は、社会全体の倫理観や道徳観を再確認させる機会となり、共同体としてのルールを強める役割も果たす。 オイディプスの物語は、傲慢(ヒュブリス)に対する警告とした。オイディプスは自らの知恵に過信し、盲目的に真実を追求した結果、悲劇的な結末を迎えた。オイディプスの物語は、自らの無知を認識すること、そして神々や運命に対する謙虚さが重要であるという。 オイディプスは、スフィインクスの謎(を解くことで、王になったという成功体験があった。その成功体験が、傲慢な自分を作り上げた。テーバイを苦しめるスフィンクスに遭遇すると、「1つの声で、4本足、2本足、3本足になるものとは何?」という謎々を解き、「人間である、赤ん坊の時は4本足、大人になると2本足、老人になると3本目の支えである杖を得る」と答えた。するとスフィンクスは屈辱のあまり岩に身を投げて自死した。 そして、オイディプスの母であり妻のイオカステは自殺する。イオカステは、夫オイディプスが、実は自分が捨てた実の息子であり、しかもその息子との間に子どもをもうけていたという、恐るべき真実を知った。子供を産むなという信託がありながら、オイディプスを産んだ。そして、殺そうとした。羊飼いの温情によってオイディプスは生き残った。死んだと思った息子が、オイディプスとは。自分の運命の恐ろしさと、それに気づかずに生きてきたことへの深い苦悩をあらわす。 オイディプスは、自らの目を針で潰し、盲目になった。なぜオイディプスは自死しなかったか? 彼は、自らが犯した罪の真実から目を背けていたことに対する罰として、視力を奪った。オイディプスは、真実を「見る」ことができなかった過ちを償うため、意図的に視力を奪う選択をした。それは、物理的な盲目と引き換えに、精神的な真実を獲得しようとする行為であった。オイディプスは、盲目の預言者テイレシアスが真実を見抜いていたように、自己もまた盲目になることで真実の証人となろうとしたのである。自死することなく、自らの運命を受け入れて生きるために、盲目になったのだ。 2400年前の物語にもかかわらず、なんと鮮烈な物語であることか。
公演を観に行って感動したあまりその日のうちに本屋で買い求めたのだが、なんと本屋で2冊見比べて気に入って選んだ方がたまたま今日見た舞台でも採用されている本だった。かなり嬉しいし、やはりそれだけ現代人にわかりやすい訳になっているのだろう。
2000年前に紡がれた、これは短編でありつつも緻密でおぞましく、逆転と認知の悲劇的なストーリーです。 辻褄があっているのか、疑問点を読み返して咀嚼してみたくなります。 最大の疑問は使者がオイディプス王に謁見した際、お互いにライオス殺害の現場に居ながらその時の場面について追求せず、それより遥か昔に両...続きを読む足を拘束された子どもについて固執し続けたことと、使者が複数人の犯行と証言したことがうやむやにされたことです。使者が王を殺された現場にいながら王を助けられなかった言い訳で虚偽の報告をしたんでしょうけど、その一点を頼りにしていたオイディプス王なのでキチンと回収されないと読み手としてはしっくりこないです。 翻訳もギリシャ語を英語に訳したものからの日本語訳とはいえ、かなり原作に配慮しながら訳したものであるとのことで安心しました。 そもそも我が子を預言者の言いなりに殺してしまおうと思う母が悲劇の元凶ではあるが、フロイトが提唱した、男子には近親相姦の本能があるかもしれない(エディプスコンプレックスの語源とされるのだと思い当たる)恐ろしさとともに深く考えさせられるミステリーでした。
ギリシアを学ぶに、ホメロスとプラトン、アリストテレスで足りるわけはないと思いつつ、でも、全部は無理やん フロイトとかに繋げれることも思うと、とも思うし、ギリシア悲劇を完全無視とはいかんでしょう 結論はしっているのに、この迫力、思わず涙が滲む 徹底した凋落と、全ては過去のこと、ということ 真実が明...続きを読むらかになるその瞬間まで、過去が語られる以外、何一つたいした出来事は起こっていない 預言が現実になる、という構造を、この悲劇そのものが預言となって繰り返される構造になっているので、結論を知っているとは別にその都度体験ができるのだろう 凄まじい
戯曲 かかった時間50分 父を殺し、母と交わる運命を追った王オイディプスを描いたギリシャ悲劇の傑作。 解説によると、アリストテレスはこの作品について、「逆転」と「認知」が見事に描かれていると評したそうである。アポロンの神託を受けて、自分ではない罪びとに憤るオイディプス王が、ライオスが亡くなった状...続きを読む況やテーバイの神託、捨てられた子についてなど、新たなことを知るたびに動揺し、最後には絶望するという物語の運びが、いっそう悲劇的である。 何より、物語としても、語り方を考えても、抜群に面白い。2400年も前に書かれたものに、異なる言語や媒体であってもアクセスできるって、改めてすごい。 訳者の方は、音にこだわって日本語にしたらしく、あとがきも興味深かった。 古典おそるべし。
以前、大学の講義で学んでからずっと気になっていた作品。 他の方の訳と比較して、最も読みやすいと感じたこちらを購入しました。
あらすじは知っていたものの初めて読んだ。とても読みやすかった。戯曲には疎いものの、悲劇の原点はここにあるそう。 解説にあったこの悲劇は、オイディプス王自らが招いたものという箇所が印象深い。また再読したい
随分前に岩波文庫で読んだような気がするけど、改めて再読。古典中の古典な訳で、内容は分かっている。そもそもこれが悲劇として上演された古代ギリシャにおいても、観客たちはオイディプス伝説について現代の我々以上によく馴染んでいたはずだ。それでも読み始めると「世帯で最初の推理小説」と言われるだけある緊張感のあ...続きを読むる展開からのオチのわかっているどんでん返しに翻弄されてしまう。人間と神を使ってドラマを作る、そしてそれを楽しむ感性がいつになっても変わらない普遍的なものであることを再確認する。
約2400年前に書かれたギリシャ悲劇が本として読めることに驚きです。 本によって訳し方など内容が若干違いがあるようですが現代でもとても読みやすかったです。 冒頭の怪物スフィンクスの件だけ、物足りなさを感じました。 「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本脚。これは何か」という謎をかけてテーバイの住民...続きを読むを苦しめてた怪物スフィンクスの謎を解いてテーバイを解放した。 調べてみると 怪物スフィンクスは人々になぞなぞをかけて答えれなければ食べてしまっていたそうです。 オイディプスが謎を解いて答えは「人間」でした。 謎を当てられたスフィンクスはショックで山の上から身投げしたそうです。 物足りなさのおかげで色々調べてオイディプス王を更に楽しめたので結果的に良かったです。
齋藤孝さんの「読書する人だけがたどり着ける場所」で紹介されていて読んでみた。 自身、文学に限らず古典にはこれまで全くと言っていい程触れる機会がなかったが、良いきっかけだと思って読んでみた。 まず何より、これだけのストーリー性のある話が、紀元前の時代に作られ、現代にまでその形を残している点に非常に感動...続きを読むした。 ストーリーはある程度わかった上で読んではみたが、それでも楽しく読ませていただいた。 オイディプス王自身が真実に気づいた後の狂気に満ちた行動もさる事ながら、解説にもある通り妻であるイオカステ妃が、いつどのタイミングでその事実に気づいたかという点において、諸説あるというところは非常に興味深かった。これは古典ならではの醍醐味であるのかもしれない。 もちろん現代の小説に比べれば、読みづらい点、理解しづらい点はあるものの、自身の古典への入り口として読むには、非常に良い本だと感じた。
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オイディプス王
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