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Posted by ブクログ
池内了(1944年~)氏は、天文学者、宇宙物理学者。名古屋大学名誉教授。一般向けの書籍も多数執筆している。
本書は、2011年3月の東日本大震災と原発事故が、現代の科学・技術における限界を露呈することになった翌年に出版され、「何が科学・技術の限界を決めているか、それは克服できるのか、克服できるとすれば現在の私たちに何が欠けているのか、克服できないとすれば今後科学・技術とどう付き合っていくべきなのか」について、“人間”、“社会”、“科学そのもの”という多角的な側面から分析したものである。
内容は概ね以下である。
◆人間が生み出す科学の限界・・・人間の叡智である科学の進化に対して、技術の進化のスピードが圧倒的に速く、今や人間が技術を追いかけねばならない事態になっている。人間の持つ、功利主義的な発想や限りない欲望の追求が、無節操な技術の発展を後押ししており、また、ヒューマンエラーや不注意などの錯誤、自尊心やメンツなどの心理的な逸脱、更に、心理的なバイアスなど、人間としての生物学的な限界がある。
◆社会が生み出す科学の限界・・・19世紀半ばに、科学が国家の制度の中に組み入れられ、国家が科学の最大のスポンサーになることによって、それまでの「科学のための科学」が「社会のための科学」に変質し、「社会に役立つ科学」が求められ、「役立たない科学」は時代遅れとして見捨てられていった。具体的には、科学の軍事化、科学の商業化、ビッグサイエンスの推進、地震予知、原子力の利用など。
◆科学に内在する科学の限界・・・不確定性原理や不完全性定理は、自然認識や論理の無矛盾性に対する限界があることを示している。更に、現代においては、複雑系や確率でしか論じられない事象が認識され、不確実な科学知しか得られないという限界が明らかになっている。
◆社会とせめぎ合う科学の限界・・・現在、さらに今後においては、地球環境問題、エネルギー資源問題、核(原子力)エネルギー問題、バイオテクノロジー問題、デジタル社会の問題、マンモス化(ビッグサイエンス化)問題などにも取り組まなければならない。
そして、以上のような科学の限界を踏まえつつ、著者は最後に「あるべき科学の姿」として、「精神的所産としての文化の一翼を担う科学」、「科学者倫理を正面に据えた、人間を大切にする科学」、「サイズも費用も身の丈に合った、誰もが参加できる、等身大の科学」、「これまでの右肩上がりの人間を置き去りにした科学でははく、人間の精神を揺り動かす科学、社会との調和を視野に入れた科学」を提唱している。
近年、AIの急速な進化により、技術が人間を追い越し、いずれ人間は技術を制御できなくなるという危機感が高まり、多くの人びとに共有されつつあるが、こうした今こそ、科学・技術における限界を改めて認識し、我々はそれにどのように向き合い、科学・技術を如何に位置付けるべきなのかを考える必要がある。本書はその一助となる一冊と思う。
(2020年4月了)
Posted by ブクログ
この本は2年前に出たのですが、現代の科学に共通する問題を多く説明しています。STAP細胞以前の出版ですが、章ごとにその問題について考えさせられました。科学の中身については私は素人でわかりません。STAP細胞にしても、原子力についても、人文系の人間は、胡散臭さを感じても、中身を踏まえた批判ができません。
いや、この著者がSTAP細胞についてどう考えているかなと思ったら、今日、みすず書房のPublisher's Review28が届き、巻頭のコラムに著者の批評がありました。本体『科学・技術と現代社会』、おもしろそうな本だけど、かなり値段が高い。
Posted by ブクログ
3.11福島原発事故を受けて、科学をどうとらえるか。科学者のあるべき姿とは。そして市民は科学とどのように向き合うべきか。さまざまな限界を超え未来に希望の持てる「等身大の科学」を筆者は主張する。
「科学」と真正面から向き合い、真剣に「科学」のあり方を考える時間をつくることができた。科学至上主義に対する批判や「地上資源文明」への志向など、共感できる点も多かった。
文系の自分にとっては、自然科学の原理原則についての記述も、新しいことばかりで知的刺激を受けた。
原発事故を受けて、私たちがエネルギー転換の分岐点に立たされていることは明白だ。利益優先や倫理観無視の「成長」ではなく、人間が自然とどう向き合うのか、ほんとうの豊かさとは何なのか、改めて考える必要があると感じた。
Posted by ブクログ
科学者は追試実験を好まない。先を越された実験を繰り返すよりその結果を受け入れて次のステップに進むほうが効率的だから
科学の商業化の風潮が強まるにつれて科学者が社会に迎合する方向になびいている
商業化という社会の制限が入ると費用対効果を指標にしてある一つの方式に固定されてしまう。科学の多様性が取捨されてしまう
科学に内在する法則によって物質の質量や密度は限られた範囲しか存在できない。下は不確定性原理、上はブラックホール条件
事前確率は模擬実験にすぎず信頼できるかどうか不明
事後確率は原因の分析がなくそのまま未来まで適用できるか不明
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