無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
まず、この本光文社から出てるの?という意外さ。
それから、旧約聖書の話なのに宇宙の話から始まるのかよ、というこのワクワク感。
木星の可能性だよメタンだよ、と、こちらの困惑などお構いナシに話を展開していく。いえ、わたしは宇宙大好きなので嬉しかったのですが。
それはカフェで主人公ザッカリがガールフレンドに意気揚々と語るお話に過ぎなくて、要するに、木星人と地球人が分かり合えないのと同様、彼らもアスペルガーとして他の人々と馴染めずにここにいるのだ、という前置きなのでした。
ここ――「エデンの園」。一定以上の知能を持つアスペルガー症候群の高校生を集めた学園。
資金だけは出してくれる、親類縁者に見捨てられた子供たちのエデン。
ここでザッカリはガールフレンドのティアと出会い、生きる喜びを知った。
しかしそのティアがザッカリに何も言わず、姿を消してしまった。手紙が届いて、それによるとこの学園はとある陰謀のなかにある、そしてティアはもうすぐ死ぬし、次に狙われるのはザッカリであるという。
ザッカリは逃亡を決断するが―――。
旧約聖書については本当に、何だそれはと信者ではない自分は何度も疑問を投げかけてきていたので、はっきり形にしてくれる物語があったことに安堵しました。
個人的な発見としては、やっぱりカインに付けられたしるしの解釈と、アダムとイブ以外の人間の存在と、蛇の解釈ですね。
文体もなんだかやわらかく詩的で、森博嗣と村上春樹と長野まゆみを足して割ったような雰囲気。
でありながら浮つきすぎない、嫌味にならないのは見事ですね。
そうだったのかと驚くところからさらに引っくり返すのはさすがの島田さん。
そうでなければ危うく、このテの話流行ってんのかよ?と思うところでした。
まだ何かありそうだな、というのがわかりやすいのはご愛嬌。短編だもの仕方ない。寧ろこれだけ短いのにきちんと伏線を張っていることに驚嘆します。
宇宙や生物学について無駄に詳しい文章が最高でした。
もうひとつの物語「ヘルター・スケーター」はビートルズの曲から。
男が目を覚ますと、記憶がない。女医はこう言った。今から五時間以内に記憶を取り戻さないとあなたは一生ベッドの上で生活することになる。これからすべてを思い出して、喋ることで脳に記銘しましょう。
鏡を見ると、37歳のはずの自分の姿はしわくちゃの老人で、男――トマスは絶望する。
自分で思い出すことに意義があるのだ、と、女医は会話のとっかかりは与えてくれるものの答えは教えてくれない。トマスは必死で思い出す。
ベトコンでの戦争の経験、彼の神である「ヘルター・スケーター」の啓示と脳の異常、犯した犯罪の数々・・・。
すべてを語って病室を出たとき、彼は<幽霊>となる。
読者が一番何も知らない立場、というのがイイですね。情報量は女医>トマス>読者という構図。に見える。少なくとも最初は。
おかげでこっちは早く思い出せよとじれったくてしかたない。
こっちのほうは、文体が変えてあっていかにも翻訳小説調。うん、この文体は好きじゃないなあ。
私にとってこの話はおまけみたいなもので、とりあえずエデンの命題が読めたことは大きな収穫だったなあ。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸