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短期記憶や計算能力、注意を必要とするような課題は、体温が高い時間帯、16時から20時がもっとも効率がいい。一方、論理的な判断は10時から14時の時間帯が適している。これは「身体時計」が生み出す24時間周期のリズムの影響によるものである。このような身体時計のはたらきや、基礎心理学が明らかにする「感じられる時間」の特性を生かして、自らの能力を引き出し、日々の生活の満足度を高める方法を語る。さらに、映画や音楽の最終的な印象を決定づける「ピーク・エンドの法則」など、時間に関する興味深い心理現象も紹介する。(内容例)●「感じられる時間」の長さは何で決まるのか/●遅い時間帯の食事のリスク/●うつ病など精神の健康への影響/●かつての日本は「不定時法」を採用していた/●時間を作り出す技術/●15~20分程度の仮眠をとると効率が上がる
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Posted by ブクログ
■「感じられる時間」の長さは何で決まるのか。
・実際に経過した時間
・体験された出来事の数:経過した時間の長さが物理的に同じであったとしても,その間に体験された出来事の数が多いほど長く感じられる。
・時間経過に向けられる注意:経過した時間の長さが物理的に同じであったとしても,時間経過に注意を向ける回数が多い期間ほどその時間を長く感じ,逆に時間経過に注意を向ける回数が少ないとその期間を短く感じる。
・他の感覚からの影響(感覚間相互作用):大きな画像を見ながら過ごす時間や大きな音を聞きながら過ごす時間は,小さな画像を見ながら過ごす時間や静かな空間で過ごす時間より長く感じられ,広い空間や明るい空間で過ごす時間も,狭い空間や暗い空間で過ごす時間より長く感じられる。
・感情:特に恐怖心は感じられる時間の長さを間延びさせる。
・身体の代謝:代謝が激しい状態の時の方が時間を長く感じる。朝起床した直後には代謝は低い状態であるがその後だんだんと激しくなり午後の遅い時間帯にピークとなる。その後だんだんと低下し就寝中に最も低下する。
■代謝の変動パターンは脳の視交叉上核における「身体時計」によって決められていて「サーカディアンリズム(概日周期)」と呼ばれる。
■一般的には子供の頃は身体の代謝も激しくそれと対応して体温も高めであるが,加齢に伴って代謝は低下し,それと対応して体温も下がってくる。同じ長さの時間であっても子供よりも高齢者の方が短く感じやすい。
■24時間周期での環境の大きな変動に適応するため多くの生物が身体の中に周期性を取り込んで適応している。身体の状態を環境と同様のリズムで変動させることが生存にとって有利だったことからサーカディアンリズムの仕組みを持つことになったと思われる
・太陽の光が全く入らないような実験環境におかれた人でもおおよそ24時間周期で行動したり眠ったりする
・心身の周期性は全身の内分泌の周期性により決まる
・摂食欲求の周期も決まる
・身体内にほぼ24時間周期で変動する過程のことを「身体時計」「生物時計」という
・身体時計は身体の一部に局在しているのではなく体中の細胞のほぼすべてに存在することが知られている
■眉間の奥,両眼の視神経が交差している部位の近くにある脳の視交叉上核には部位内のたんぱく質合成に24時間周期があり,それが心身のサーカディアンリズムを基礎づけていることが分かっている。
・時計遺伝子の転写とそれに基づくたんぱく質合成がほぼ24時間周期で規則的に繰り返されている
■1日の周期に合わせた身体時計の振る舞いやそれに従う全身の状態の変化に対応したリズムからずれた生活をすることは,様々な問題を引き起こす。
・代表的なものが「時差ボケ」
・内分泌のリズムは,夜は寝て昼は起きて活動するという生活パターンに合うように出来上がっている
・眠りに落ちた最初の数十分の間にいわゆる「成長ホルモン」が分泌される。「成長ホルモン」は児童であれば骨や筋などの成長を促進するホルモンであるが成人になっても分泌され,筋や血管などの修復を行う。睡眠の周期が不規則になって成長ホルモンの分泌が充分に行われないとこれらがなされないことになる
■日本でも一般的には日の出(明け六つ)と日の入り(暮れ六つ)の間を6等分して夜,昼の時間を計る制度が用いられてきた。そのため春分の日と秋分の日以外は,昼と夜とで「一とき」の長さが違っていた。また,その土地の日の出,日の入りを基準にしていたので,土地のよって違う時間を用いていた。このような季節や場所により時間の長さが変わる時間の制度を「不定時法」という。
■明治5年(1872年)太陰太陽暦への切り替えと同時に1日の時間を24等分する「定時法」が採用された。
・日本全国で標準時を使い始めたのは明治21年(1888年)1月1日
■自分の心理的価値を落とすような経験は感情的にとても負荷が高いものであるため,そのような事態はできるだけ避けるように心理的な「自我防衛機制」が働きがちである。自我防衛機制とは自分自身の心理的価値を低下させず自尊感情を傷つけないように自動的に働く心理的な機能のこと。
・自我防衛機制には自分の失敗は近くや認知がされにくく記憶もされにくいのに対し,逆に自分の成功は知覚や認知がされやすく記憶もされやすい厄介な特性がある
・自己を過大評価しがちになる
■日常生活において選択肢を積極的に見つけ出し現在の生活は異なる生活を選択することはあまりなく,むしろ何も積極的に選択せず現在の生活を維持しようとする傾向がある。認知心理学ではこのように新しいことをせずに現在の状況の継続を好むという特性を「現状維持バイアス」と呼ぶ。
・変化をもたらす決断より現状を維持しようとする行動的バイアスがある
・現在や自分が既に持っているものを実際以上に高く評価しそれを失うことによる損失も実際以上に大きく評価する傾向に基づく
■締切に近づかないと課題に取り組もうとしない私たちの行動特性(先送り傾向)には自我防衛機制が関係していると考えられる。
・締切よりずいぶん前に課題に取り掛かったがために,その時間を使えばできたかもしれない多くの可能性を犠牲にすることを避けるという仕組みが働いているのかもしれない
・努力をしなければやり遂げることが困難な作業ほど取り組むのを先延ばしにする傾向がある
・努力して作業に取り組んでもうまくやり遂げられなかった場合,自分の能力が欠けていたことになり,それは自分自身にとって自分の価値を主観的に下げることにつながるため,自我防衛機制により回避されがち
・締め切り間際に作業を始めてうまくいけば「短い時間でも自分はちゃんとその作業をすることができた」ということになり,自分の主観的価値を高めることになる
・失敗した場合でも自我防衛機制が機能して,「十分な能力があったにもかかわらず,その脳力を発揮するための十分な時間がなかった」と自分自身に対する言い訳をする余地を残すことになる
■時間的に追い込まれるほど他のことが楽しくなる。
・しなくてはいけない作業があるとき,ついつい他のことをしてしまい,更に大事な作業に費やす時間が短くなってしまいがち
・大事な作業をしないで他の作業に没頭してしまう行動を「逃避行動」と呼ぶ
・たいていの場合,些末でいつでもできることで,普段ならやれと言われてもしないようなこと
・自我防衛機制が働いて大事な作業で失敗しても自分にはその作業のために十分な時間が残されていなかったと自分自身に対する言い訳を作り出している
■パーキンソンの法則
・歴史学者のパーキンソンが20世紀前半の英国の海軍官僚の仕事ぶりに関する資料を整理する中で,植民地や軍における役人の数の動静の分析に基づいて官僚の時間や予算の使い方に関する特性を見出したもの
・自我防衛機制やパーキンソンの法則の存在は,私たちの行動は必ずしも経済的合理性に基づく価値観とは一致していないバイアスがあることを示している
■成果が得られる見通しがたたない事柄に対して既にかけた時間,労力,金銭などは経済学の領域で「サンクコスト」と呼ばれる。
■私達には,目標に近づくにつれ,その目標に対して積極的になるという「目標勾配」の特性があるため,作業に対する意欲やモチベーションが向上し作業もスムーズに進む。
■私達には,目立つ事柄があったり注意を向けるよう仕向けられたりするとついそちらに気を取られてしまうという「注意補足」という特性があるため,目立つものが現れるとほぼ自動的に注意を向けてしまう。
・認知的な処理に使える精神的資源(注意資源)は有限であるため,一度に多数の対象に注意を向けることができない
・手品では注意補足をトリックに利用する
・乱雑な机,散らかった部屋は注意補足の観点から危険
■1分間と感じられる時間の長さがおおよそ1分間に近ければよいが長めになりやすい人,短めになりやすい人は,普段の時間の長さの見積もりにおいても同様の誤りが生じやすい。
■未明の時間帯は認知課題などでエラーが起こりやすいので集中力を要するような課題を遂行するには不向き。
・スリーマイル島の原発事故,チェルノブイリの原発事故,スペースシャトルチャレンジャーの事故など多くの重大事故がこの時間帯の不注意によるミスが原因
・サーカディアンリズムにおいて12時間周期の睡眠のリズムがあり日の出頃に目覚めた場合,6時間ほど経過した頃に眠くなる時間帯がある
■15~20分程度の仮眠を取ると効率が上がる。
・30分より長い仮眠は眠りが深くなり過ぎて起きた後の覚醒のレベルが下がる(睡眠慣性)
■多くの技能学習は数分程度の短い休憩を取りながら分散的に学習するのが最も効率が高い。
■記憶に関しても長時間集中して記憶するより休憩をはさみながら記憶した方が記憶が長続きすることが知られている。
・長期記憶は分散学習で成立しやすく集中的な学習では成立しにくい
・一夜漬けは記憶が長続きしない
・記憶に関しては覚えてから長い間が空くとその間に経験した事柄により記憶が抑制されたり変容される
■ホテルのエレベーターホールに鏡が置いてあるのはエレベーターの待ち時間を短く感じさせるための工夫。
・鏡に映る自分の姿は強く注意を引きつけるため時間経過に注意が向きにくくなる
■印象は最後が肝心。
・一連の変動が終わった直後におけるその対象についての評価は,その期間中に感じられた最も明確であった際の印象の強度と最終段階で感じた印象強度の中間の強度になりやすい(ピークエンドの法則)
■将来の価値と比較して現在の価値を過剰に高く評価する価値判断のバイアスを「現在志向バイアス」と呼ぶ。
・人間は将来の大きな利益よりも目先の小さな利益を優先しがち
■時間に関する社会的な要請・圧力や個人の欲望のどちらも私たちの心身の時間的制約による抵抗を受ける。その抵抗を無視して心身の時間的制約に逆らうと,軽微なものから深刻なもの,致命的なものまで様々な健康上の問題や事故を引き起こすリスクが高まる。常にこうした時間的制約と社会的要請,個人的欲望の間の緊張関係があることを知っておくべき。
Posted by ブクログ
時間の感じ方を元にして時間の使い方についてのTIPSいくつか。「時間に正確な人」は過去に直接的あるいは間接的になんらかの失敗をしていて、不測の事態への対処も込みで予定を立てているのという記述には納得。そうそう、例えば、いつも予定の時間よりかなり早く着くようにしていれば、時間について気にしなくて良くなる。そのマージン分も食いつぶすほどならよっぽどのことなのであきらめが付くという考え方。それと、人間は、サーカディアンリズム(概日周期)によって14:00ころ眠くなるものなので、そのころ昼食→散歩→昼寝をする行動は(実感としては分かっていたけれど)理論的にも良いものだということが分かった。おやつもそのころ(八つ時(14:00ころ))休憩を取ることを意味していたとはなんて合理的な。
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食事をすることによって体内に取り込まれた糖(グルコース)は、大切なエネルギー源ですが、一定以上の濃度になると毒性が生じます。そのため、必要以上の糖分が血中にある状態が続くと、全身の血管などを傷つけることになる。
北極圏に棲むトナカイにはサーディカリズムが見つからない。白夜や一日中日が昇らない極地での暮らしが身体時計を奪っていった。
【自我
防衛機制】
自分の信念と一致しない情報の提供者や、自分が高く評価していることがらの低評価につながるものについては、心理的価値をら落としたり、嫌いになったりする傾向があります。これは、自分が高く評価している対象と、その対象を低く評価する情報やその情報の発信源の両方を認めることで生じる認知的不協和をら避けるための自動調整によるもの。
【現状維持バイアス】
自分の状態や環境において変化をもたらす決断を下すよりは、現状の状況を維持しようとする行動的バイアス。
私たちは「失う」ことをとても恐れ、すでに持っているものを失うことを極力避けようとする的傾向がある。そのため、現状の維持にほとんど合理的理由が見当たらない場合でも、何か理由を見つけて、現状を維持しようと試みる。
安寧を好み、怠惰でよほどのことがない限り、認知的にも感情的にも負荷がかかる選択を避けるため、新しい選択のための思慮や行動を起こすことを忌避し、現状を維持しようとする。
【パーキンソンの法則】
何か作業するための時間をあたえられると、その時間を目一杯使ってしまおうというもの。
人間は時間や資源の効率的な運用には全く考慮せずに、共同体の中で多くの労力や予算を費やす強い傾向がある。
人間が時間や資源の効率的な運用についてはまったく考慮せずに、共同体の中で作る組織の維持や運営に多くの労力や予算を費やすという傾向を持っている、こうした傾向は官僚主義的な資源管理を見ているとわかる。
【注意捕捉】目立つことがらや、注意を向けるよう仕向けられたりするとついつい、そちらに気をとられてしまうという特性。
人間の認知的な処理に使える精神的資源(注意資源)は有限。(マジックや手品はその特性を利用したもの)
ADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠陥・多動性障害)年齢や発達に不釣り合いな不注意さや多動性、衝動性を特徴とする発達障害の一つ。全人口の5%。
何らかの作業に集中しなくてはいけない状況であっても、別のことがらに注意を引き付けられると、それを無視するのが難しく、その都度、目立つものに反応して行動が進展する。
ADHDの人と一般の人との間にはっきりとした境界線があるわけではない。個人の注意の制御の仕方に連続的な違いがあり、その特性の極端な事例がADHDだと考えられている。
*時間的に離れている将来の事象の評価や価値判断をする際、大局的な視点から評価しやすい。そのため、自分自身で望んだこと、自分の将来の可能性
広げることがらに関しては、おおむねポジティブにとらえる事になります。それに対し、時間が経過し、そのことがらが近づくにつれ、瑣末なことが評価に影響しやすくなります。
これは大きな構造物を空間的に離れて見ると全体像が見えるのに対して、その対象に近づくと微細な構造が見えるようになるのと同じ。
「現在思考バイス」人間は将来の大きな利益よりも目先の小さな利益を優先しがちである。
(それは進化の過程で、不確かで予測困難な生活環境を聞き抜いてきたことによる)
「待つことを不快に感じる」特性こそが、進化の過程で、目の前にある利益を確実に得ることが生きる上で有効な戦略であったことを意味している。
時間が空間とともに私たちにとって大事な次元であるのは、私たち人間の体感にとっての基本次元だから。
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