現在一般に受容されている一夫一婦制を相対化するだけなら別に目新しくもないが、その制度的・生物学的な矛盾の軽減策としての「ポジティヴ婚外セックス」を "the least worst option" として提示する視点が斬新。あくまで「軽減」策であって「解決」策ではないと断りながらも、「不倫ワクチン」として機能しそうな様々な国内外のオプションが紹介されている。しかし結局最後に「婚外セックスを楽しむ資格や能力のあるのは婚姻生活が安定している人間だけ。しかも完全な充足感を得ようと思えば幸福な婚姻生活すら万能でない」と断ずるリアリズムは、学際と実践の両面を経た著者ならではのものだろう。