Posted by ブクログ
2012年05月18日
フレームワークという言葉を耳にすると、実際に自分が出くわすことはないであろうなんとも都合のよいシチュエーションを例に挙げて、これまたなんとも都合のよい思考回路で発想した答えみたいなものがずらずら書かれているものを頭に思い浮かべてしまう。
まあ、限られた紙面でそういう説明をしたくなるのも分からんでは...続きを読むないが、読む側の立場にしてみれば、今すぐ使えるモノや後から思い出して引っ張り出せるモノを求めているのであって、それにさえ使えない本なんて必要ない。
しかしこの本は、むぎ夫というパン会社に勤めるキャラクターによる、終始一貫した環境の下でのフレームワークケーススタディが描かれており、パン屋の視点に感情移入できれば、最後まですっと読み進めることができるのが良かった。このフレームワークでは営業担当だったのに、こっちのフレームワークでは会社の重役目線でケースが描かれていた、などというのでは一貫性に欠けて気が散る。
また、フレームワークというビジネス中級者以上向けの話になりがちなところを、扱う話をできるだけ身近なものにすることで、フレームワーク活用は身の回りにも溢れていることに改めて気付かされた。
ケーススタディの合間に、同じジャンルのフレームワークがたくさん辞典のように紹介されているため、ボリュームも十分あるのは嬉しかった。コンテンツも大事だが、広い範囲でフレームワークを抑えているかどうかも、買って手元に置くかどうかの重要な判断基準になる。
要領よく頭の中を整理することが苦手な人は買っておくことをお勧めする。フレームワークの多様性を知りたい人にも得るものは多い。すでに社会人としてある程度の経験を積み、自分の意思決定ロジックに自信をもっている人には少し物足りないかもしれない。まあ、そのレベルに達している人など、本書で紹介されているパレート最適によるなら、2:8の少数派の方だろうから、多くの人は買って得るものは多いだろう。