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Posted by ブクログ
読んでいるうちに事態は動いて、「イスラム国」による日本人人質事件は人質の殺害に終わってしまったようだ。安倍首相は「テロリストたちを許さない」「この罪を償わせるために国際社会と連携してやっていく」とコメントしたが、許さないくらいなら私にもできる。勇ましいことを言っても日本は武力を行使できないのだから、つまりは自衛隊を派遣できるようにしたいということだろうか。
確かに「イスラム国」が7世紀のイスラム教の教義を持ち出して、異教徒たちを支配におく国を武力で作るというのなら、日本は戦争に参加していないと主張したからと言って彼らの矛先から逃れられない。つまり「イスラム国」問題は平和的には解決できないのかも知れない。しかし、イスラム過激派を殲滅して西欧の価値観をもってイスラム世界を世俗化し、民主化することもまたできるわけではない。
当面われわれは暴力に曝される人たちと連帯していくしかない。それならばもっとアラブ世界を知らねばならないだろう。
池内惠『イスラーム国の衝撃』読後に引き続き読んだのでどうしても比べることになるが、『衝撃』がいかにも学者らしい筆致で、しかも緊迫感を持って、事実と推測を選り分けながら緻密な論理で全体像を描いていくのに比べて、シリア大使を勤め上げて退官した外交官による『正体』はなんだかユルい印象がある。それは「です・ます」調の文体によるものだけではなかろう。現地で生活していた人の実体験を交えて話を聞いているような気安さがあることは確かだが、いささか距離を取って見ているような感がある。
情報源は限られているから『衝撃』と共通する内容も多いが、特に後半が有用だった。ひとつは「イスラム過激派」の歴史である。ジハードとはもともと「神の道のために努力すること」であり、必ずしも武力を使うことを意味していなかったのが、武力で異教徒を退けること、さらには武力で不信心者を倒すことに意味が限定あるいは変遷していった歴史。
もうひとつはアラブ諸国の思惑である。スンニ派とシーア派では前者が多数派であるが、シーア派の盟主はイランであり、シリアのアサド政権やレバノンの「ヒスボラ」を支援している。イラクではシーア派とスンニ派の対立につけ込まれて「イスラム国」が成立した。対して石油で経済的に潤っている湾岸諸国、その代表はサウジアラビアだが、こうした国々はスンニ派であり、かつてはアラブ諸国対イスラエルという対立構造だったのが、現在では湾岸諸国はむしろイランを脅威と思っており、アメリカとイランの緊張緩和は望ましくない。しかしながら、ヒスボラの書記長がスンニ派とシーア派の対立というが、実際争っているのはスンニ派同士という指摘をしているのが紹介されているのは興味深い。他方、トルコのエルドアン大統領は昔日のオスマン帝国再興を夢見ているらしく、「イスラム国」騒動で漁夫の利を得ようとしている。まとまりようがないのである。
過激な運動は独裁政権によってようやく抑えられているのがアラブ世界であり、よりマシな独裁政権と付き合う現実的な覚悟が国際社会に必要というのが筆者の結論である。悲観的なことを淡々と述べているのは、諦観なのか、精神的な距離感なのか。
Posted by ブクログ
日本人ジャーナリスト誘拐・殺害事件を受けて、やはり、「イスラム国(IS)」知ろうと思いました。
いくつか、似たような本が出ている中で、国枝さんのを最初の一冊に選んだ理由はプロフィールです。
<引用>
一橋大学卒業後、外務省入省。
1978年在エジプト日本国大使館一等書記官、
1989年在イラク日本国大使館参事官、
1991年ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部公使。
2006年在シリア特命全権大使に就任、2010年退官。
中東に滞在し、イスラム教の人たち関わってきた人ということで、感覚も違うと思いました。
知らなかったこと、たくさんあります。
まず、イスラム教と「イスラム国」とは違うということ。
そして、多くのイスラム教徒は「イスラム国」という名称を拒否しているらしいこと、など。
一回では理解できないことも多いので再読してみようと思います。
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