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おしゃべりな人、無口な人……。ただの個性と思われがちなものの言い方にも、実は意外な地域差があった! さまざまな最先端の研究成果を用い徹底分析。「ありがとう」と言う地域・言わない地域など、具体的なデータをもとに、ものの言い方の地域差と、それを生み出す社会的背景を明らかにする。目からウロコ、新しい方言論の誕生!
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Posted by ブクログ
他の本で、次のような話を読んだ。 人に何かをしてもらったときに「助かった」や「良かった」で感謝を表現する地域もある、と。 自分がまさにそうだった。そして、それで感謝が伝わるものだと思っていたから、全国共通でないことに驚いた。 その出典元がこの本だったので手に取った。 同じ日本でも「言い方」がこんな...続きを読むに異なることに驚き。 相手の言い方にムッとしたときに、その人を失礼な人だ、と決めつけるのではなく、そういう言い方の地域で育ったのかも?という視点も持ち合わせたいと思ったり。 以下メモ 方言とは従来、狭い意味での形や意味、文法を取り扱うことが多かった。 例えば、ショッパイ/カライの地域差。イル/オルの東西差。 この本は、ものの言いかたや話し振りに注目したもの。 例えば、お礼の言い方や頼みごとの仕方、挨拶の方法など。 ものの言いかたの背後には、それを生み出す話し手の考え方や姿勢が隠れている。その地域的な違いを本書ではあぶり出してみようと思う。さらに、本書の関心は、そうした地域差を生み出す社会的な要因にも及ぶ。 ・口に出すか出さないか 概して、近畿を中心とする西日本では口に出す傾向が強く、九州と東日本、とりわけ東北では口に出す傾向が弱い。 おしゃべりか無口か、挨拶をするかしないか、感謝や文句を口にするかしないか、値切るかどうか。 どう言うか以前の問題、つまり言葉を発するか発しないかという基本的な部分が地域によって異なる。 ・決まった言い方をするかしないか 朝は「オハヨー」と挨拶する。これが日本人の朝の習慣であり、礼儀であると私たちは考えている。そしてこのことは、どの地域にも当てはまることだとも思いこんでいる。しかし、現実はそうではない。日本には「オハヨー」というお決まりの言葉で挨拶を交わすことのない地域が存在するのである。 ・間接的に言うか、直接的に言うか 京都人は他人にかまわれることが大嫌いで、最低限必要な笑顔と声掛けは欠かさないけれど、他人事には極力かまわないようにするのだそうである。 こうした京都のやり取りに対して、東北では相手の私的な領域に立ち入る。しかも前置きをしたり、ぼやかしたり、遠回しに言ったりすることなく、率直に相手のプライバシーに切り込む。 (例:京都「あら、お出かけどすか」「へえ。ちょっと、そこまで。」 気仙沼「どこさ行くのー。」→「仕事すさ。」 オノマトペの使用を通して、現象描写のあり方についても検討したところ、現場性重視の直接的な表現が盛んな地域(特に東北)と、そうでない地域(西日本)とが見えてきた。 ・言葉で相手を気遣うかどうか 人から恩恵を受ける、特にお金を貸してもらったときには当然「ありがとう」と言わなければならない。それが常識のように思われる。ところが、日本にはこの一言をあまり口にしない地域がある。 申し訳ない(恐縮を表す):近畿の一部から東側 言わない:東北・関東 助かった、良かった(自分自身の安堵感):中国四国の一部と特に九州。 ・ものの言い方の地域差を生み出す要因 社会環境→言語環境→言語態度→言語活動 コミュニケーションの相手や種類が増えると、言わなくともわかるコミュニケーションから、言わなければわからないコミュニケーションへ変化する。さらに、いかに効果的に相手に働きかけるかという面にも注目が集まるようになる。 ・東北方言はオノマトペや感動詞が豊かである。こうした現象は、言語的発想法の発達という観点からすれば、加工性や客観性が極めて弱い段階にあたる。しかし、見方を変えれば、それは、直接性や主観性を強化する方向への発達を遂げたものであると考えることもできる。 東北方言は会話が交わされるその場から、現実味のある表現を行うことに長けている。
「ものの言い方」を「方言」と同一に捉えて考察した好著だ.第1章から第7章までの基礎データを第8章以下で修練させていく過程が、読んでいて非常に楽しめた.「ものの言い方」の地域差を認識することは、様々な人達と折衝する機会の多い人はぜひ身につけて置くべき素養だと感じた.
日本全国方言は様々で、それについての研究も盛んに行われています。 しかし、その一方でものの言い方やしゃべり方についての研究はサッパリとの事。 本書は、このサッパリ分野を研究している2名の研究者が一般向けに執筆した、研究成果解説本です。 構成は全11章からなり、最初の7章で以下7つの観点から日本各地...続きを読むの話し方について分析し、その後の8章から終章までで総括や各地の話し方の違いが生じた原因の推察等を行っています。 ・発言性 あることを口に出して言う、言葉で何かを伝えると言う発想法 ・定型性 場面に応じて、一定の決まった言い方をすると言う発想法 ・分析性 場面を細かく分割し、それぞれ専用の形式を用意すると言う発想法 ・加工性 直接的な言い方を避け、手を加えた間接的な表現を使うと言う発想法 ・客観性 主観的に話さず、感情を抑制して客観的に話すと言う発想法 ・配慮性 相手への気遣い、つまり、配慮を言葉によって表現すると言う発想法 ・演出性 話の進行に気を配り、会話を演出しようと言う発想法 本書によれば、上記7項目について、九州を除く西日本は他地域よりも発達しており、また客観性については特に近畿地方において著しく発達しているとの事です。 そしてこの違いの原因として、歴史的に近畿地方が日本の人口密集地帯かつ商業の中心地でもある事を挙げており、これらによって近畿地方を始めとする西日本では他者への気遣いが発達した言い方が育まれた他、古代より他地域に比べ、民主的な社会構造を築いてきた可能性もあるとしています。 また、単に地域のみに着目するだけでなく、都市化がしゃべり方へ影響を与える可能性にも触れており、この点を今後の研究課題としていました。 尚、都市化の影響についてですが、東日本に位置する東京は東北を始めとする他の東日本地域と比べると上記7項目が発達している一方、近畿地方と比べるとまだまだで、社会の変化には時間がかかることを考えればこの違いはすぐには変わらないであろうとの事です。 西日本、特に近畿地方で育った方が関東に行った時、現地ではお店の人などに対して「ありがとう」と言わないのだと、驚いてしまったという話は有名です。 本書はこのありがとうを始めとする様々な地域間の違いについて、理解が深まる内容となっています。 実際、私は本書によって、インターネットで時折見かける関西と関東の違いについて取り上げたニュース記事(この手の記事は大抵似たり寄ったりな内容で正直食傷気味なのですが)について、これまでになかった視点で考える事ができる様になりました。 結構視野が広まると思いますので、一読をおすすめいたします。
関西と東北で比べると関西は話し方に型があり、丁寧な言い回しで東北は短く要件を言う傾向。ただ地方出身の友人を思いながら読んだがあまり当てはまらない。地元同志や結婚など繋がりの強さも影響するのかな? 変化の激しい言葉を丁寧に聞き取り調査し地図に落とし込む仕事は膨大で曖昧で要件定義から大変な作業だったこと...続きを読むと思う。これからは旅行の時、「もののいいかた」の違いも楽しもうと思う。
ものの言いかた(言語的発想法)に注目したおもしろい試み。 たしかに「何を言ったか」よりも「どうしてそういった言い方を選択するのか」に着目した方がおもしろいが、その文化的背景・地域の歴史等を読み解くのは非常に大変だと思う。
西東は世界的な西東ではなく、日本国内の話であることにまず注意。 では、話の内容はごく狭い、もしくは小さな違いについて述べているのかと言うと違う。 日本でもこれほど「ものの言いかた」に違いがあるのかと衝撃を受けた。 時折ネットでは「お店で食事のあとにありがとうと言うか」との論争が起きる。 それは大...続きを読む抵、本人の資質や躾のせいにされがちである。 だがもしそれが、方言のように地域差によるものだったとしたら? 今まで実際、本人の資質などが大きいと思っていた私には、その提言が衝撃的だった。 この本に紹介されているが、挨拶をしても挨拶で返さない、「おはよう」と言っても「はい」などと返す地域もある。 何かを取ってもらっても、特段ありがとうを言わない地域がある。 「食事のあとにありがとうと言うか」は、簡単に本人の資質、躾などと言えない地域差によるものかもしれない。 そういう文化がない地域の店員は、ありがとうと言われて戸惑っているかもしれない。 文化の違いなので、ありがとうを言わない地域は劣っているなどと言うつもりはないし、この本でもそういうことは言っていないが、新しい視点を持つことができた。
面白かった!言うか言わないかも方言なんですね。日本全国のあちこちに親戚がいるので色々と地域差があることは感じていたけど、その説明を読んだのは初めてでした。勉強になりました。
方言というか地位ごとのコミュニケーションカルチャーについて。本書の分布図を見てみると地域ごとの違いが分かって面白い。 東北って意外と冷めた文化なのか。地方はホスピタリティがあるイメージだったからちょっと意外。
ものの言いかたには違いがあるが、特に目立つのは関東と関西だ。人の話し方は、話す人の個性に関係していると思われがちであり、それが事実と言う面もある。しかし、著者はものの言い方にも明らかに地域差、つまり「方言」が存在すると述べている。 読んでいて著者も例に何度も上げている関西は目立つなあ。特に...続きを読む読んで「へえー」と思ったが、「自己と話し手の分化」だ。尾上圭介の『大阪ことば学』での「当事者離れ」という話し方を取り上げている。「ヨー言ワンワ」だ。この表現は、「あきれて、私は何も言えないよ」を意味する。しかも「その場の状況のバカバカしさを、遠巻きに眺めている雰囲気が漂う」として、第三者であるかのように振る舞う言い方に注目している。「主観の視点を瞬時に客観に切り替える」やりかたは、他の地方、特に東北人にはできないテクニックだと述べている。 ものの言い方と地域が深くつながっているとは。関西の方の場合、地域の環境で「ボケやツッコミができるおもろい人」が出来上がるとは思っていたが、そのほかの地域でも周りの環境が大きく左右しているのだなあと思った。
方言も含めた会話の作法の違いを明らかにしようと試みる一冊。 おしゃべりなのか、無口なのか、この要因を個性だけに求めるのではなく地域差に求めている。もちろん東北の人が無口で、関西人は多弁という大方の予想が変わることはないし、都会と田舎の違い、中心部か周辺部かによる差異もその通り。これを具体的なデータで...続きを読む検証しているところがオモシロい。方言の中には感謝表現を持たない地域があるってのにはびっくり。 相手に気を遣い、客観的な会話ができるのが関西圏なのだという指摘はその通りだと思う。だからと言ってそれが誠実かどうかは別問題とする著者は東北出身なんだけどね。
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