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安倍首相の悲願といわれる集団的自衛権の容認。武器輸出の解禁や日本版NSCの登場、国家安全保障基本法の議論などを背景に、今、日本が急激に変わろうとしている。政府で何が議論されているのか。自衛隊はどう受けとめているのか。30年以上にわたり日本の防衛を取材してきた著者が問う、渾身の一冊。
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Posted by ブクログ
いろいろはっとさせられる指摘や分析が多く、久々に良著に出会えたと思った。もちろん、細かい論理で詰めて考えたらどうなのって点もあるかも知れないけど。 一章不安定要因になった安倍首相で、靖国参拝を通して米国すらも刺激して安全保障環境を悪化させていること。また首相になる前に主張していた退役予定のゆき型の海...続きを読む保編入に関わる勘違い。閣議決定だけで憲法を読み替え国家を無視する手法。日本の安全保障環境は厳しさを増してるってのが2007年から使い回されてる表現でありながら、尖閣を巡る日中の対立以外はあるものの緊迫した危機はないこと。 二章法治国家から人治国家へで、選挙での勝利をたてに「おれが法律だ」と言わんばかりの立憲主義を理解しない発言。北朝鮮のミサイル発射で米軍は日本防衛ではなく自国防衛のため活動していること。憲法九条を空文化させる国家安全保障基本法。 三章安保法制懇のトリックで、法律の専門家のいない安保法制懇。例の四類型で、公海での米艦艇の防護では考えうる範囲で集団的自衛権行使の必要性なない、米国を狙ったミサイルの迎撃では技術面安全保障面でもありえない設問、駆けつけ警護は、自衛隊の任務が治安維持ではない。自衛隊が後方活動のみに従事してきたのは先進国として当然で、要員を多数出してるのは外貨獲得手段にしている途上国であること。 四章積極的平和主義の罠で、日本版NSCで南スーダンでの韓国への弾薬支援が決められたが、それは非公開で議事録もなく、国民の見えないところで重要政策が転換されるおそれがあること。NSCの発足に合わせて成立した特定秘密保護法の原点が、2007年に締結された軍事情報包括保護協定GSOMIAで、その締結のきっかけが2003年のミサイル防衛システムの導入であること。わかりやすかった国防の基本方針を廃止し、量が多くかえって基本方針がぼやける国家安全保障戦略が閣議決定されたこと。グレーゾーンとシームレスが意味が不明瞭で、有事か平時しかなく、平時から有事には防衛出動が下令されるということ。 五章の集団的自衛権の危険性で、海外派遣が始まった頃から危険を実際に負う制服組の発言力が高まりだしていること。米国の退役軍人省の予算が日本の防衛費の倍近い九兆円もすること。93年北朝鮮のNPT脱退をきっかけに作られたK半島事態対処計画。1999年に周辺事態に備えた図演が海自で初めて行われたこと。 六章逆シビリアンコントロールで、南スーダンで試みているオールジャパンの取り組みを考え出したのが幹部自衛官や官僚であること。同時多発テロ直後に政治家に談判して米空母の護衛やインド洋派遣へと動かした海幕の幹部自衛官。 などなどと、書かれてる事実だけでも大変勉強になりました。安倍シンパにただの首相批判と思って欲しくない。
日本は戦争をするのか。この問いには明確に「ノー」と応えたいが、それを支えているのは間違いなく憲法9条の存在だ。改憲(アメリカに押し付けられた憲法を自主的に制定した憲法にする)を目的に設立されたのが今の自民党の発足の経緯であるから、当時(元内閣総理大臣の安倍晋三氏)の安倍内閣が憲法改正に躍起になってい...続きを読むた事は理解できる。結党の理念を自身の代で実現したいと強く思った事は間違い無いだろう。第二次内閣に於いては、相手(民主党)の極端すぎる失敗に助けられて、絶大な支持率、人気を誇った安倍内閣であるから、益々その意識は強かったに違いない。人気に乗じて一気に憲法改正に持って行きたい、そんな気持ちは新聞誌面に大きく掲載された自民党改正案からもひしひしと伝わってきた。だが果たして9条は変えてよいものだろうか。当時たくさんの書籍が書店に置かれ、憲法改正に対する議論が世の中でも盛んに行われていたことを思い出す。世論も真っ二つに割れてその是非を盛んに議論していた。そしてそれは今も変わらず続いているし、相変わらず国民の注目度は高い。それだけこの平和憲法に支えられて、戦後80年を一度の戦争も経験することなく平和を築き上げたという自負や感覚が国民のために中に根付いている証拠なのだろう。その様な中でも自衛隊の活動根拠や活動の制約を取り除こうとする考え方や政治家は沢山いる。読者である私自身、こうした書籍を読みながら、果たしてどちらが良いか悩む事もある。ただ一つ「なし崩し」だけはあってはならないと考えている事、これだけがはっきりした私の考え方だ。なし崩しとは如何なる状態か。 本書は安倍政権時代に首相自ら右傾化する日本の先頭に立ち、憲法改正、自衛隊を積極的平和主義の手段として用いようとしたその様な時代背景に描かれたものだ。確かに安倍晋三氏のパフォーマンスは強い首相、強い日本の象徴的なものだったし、その豪腕、強引な姿勢、時に怒りを露わにしながら野党を言葉で捩じ伏せる能力には私も久々に凄い政治家が出たなと感心したものだ。だが同時に恐怖も感じていた。何か部分的に都合の良いところだけを強調して、無知な私をはじめとする国民全体を騙してやいないか。そんな風に見たくない自分と、それを疑い恐れる自分。2人の自分が同時に安倍さんを見ている感があった。そして後に真実となってしまうが、何処かで安倍さん自身が危険な目に遭ったりしないか、安倍さんのやり方には常に危うさを感じずには居られなかった。 なし崩しと言えば、政府の解釈というものはある特定時点の首相が熟慮の元下した判断や見解を踏襲する事が慣例ではあるが、先日の高市総理の台湾有事に対する見解なども、どこか安倍内閣時代と同じ危うさを感じざるを得ない。少しずつそして気付かないうちに、時間が経過したらいつの間にか「そういう事でした」、こんな言葉が何処かから湧いて来そうになる。徐々に崩れていくそれまでの常識が、やがて二十年、三十年後には「戦争のできる国」になっていた、その様な危機が目前に迫り、自衛隊員の命が危険に晒されてからでは遅い。だが時すでに遅し、ではないが、初めから政府見解はそうであったかの如く総理が言い訳をしている姿も思い浮かぶのである。小さな変化を起こさないためには、その前兆を摘み取らねばならないが、正に9条に始まる憲法改正や政治家の判断には国民は注意を払い続けなければならない。高い崖から一気に飛び降りずに、少しずつ安全装置をずらしながら崖を降りていく日本。それに我々国民自身が常に監視をし続けねばならぬ事を本書は教えてくれる。
発行は2014年5月。43兆円とも言われる5年間(2023〜27)の防衛費計画の発端(それはこの物価高や自民党敗北の後でも、多くなれこそすれいささかも崩れていない)は、この2ヶ月後に行われた「集団的自衛権の行使容認の閣議決定」から始まった。と半田滋さんなら言うだろうし、私もそう思う。発行当時は警笛の...続きを読む書であったが、今や「安保の現代史」とも読める。 歴代内閣がずっと否定し続けてきた「集団的自衛権の容認」を実現するために、内閣法制局長官をイエスマンにすげ替えた。認識を新しい法制局長官に問うた時、安倍首相がそれを遮り「最高の責任者は私」であり、選挙で審判を受けるのは長官ではなく自分だと答えた(2014.2)ものだ。今考えれば一つの転換点だった。 選挙では必ず勝てるという「自信」のもとに、閣議決定でなんでもやっていく。というやり方に舵を切ったのもこの頃だった。 発行後の2015年の話ではあるが、安保法制強行採決の時に、自民党招聘の学者さえも悉く「集団的自衛権の解釈改憲を容認できない」と発言し、60年安保以来の国会前の11万人集会になった。2017年学術会議は「軍事目的のための研究を行わない」声明を発表、その後、法解釈を曲げて2020年学術会議会員の任命拒否を行った。そして今、学術会議の独立性そのものを失くす法案が国会を通ろうとしている。政治家の考えることは、なんとわかりやすいことか。 案外と詳しい目次を手に入れたので、要約代わりに以下に載せる。 第1章不安定要因になった安倍首相 清国参拝の波紋/在日米軍の奇妙な動き/「オバマに嫌われている」/フェイスブックで元官僚を批判/「こういう憲法でなければ、横田めぐみさんを守れた・・・・・・」/解釈改憲狙った内閣法制局人事/首相による「クーデター」 第2章 法治国家から人治国家へ 「最高の責任者は私だ」/米艦艇を集団的自衛権で守る/集団的自衛権こそが戦争の口実/「国家安全保障基本法」で空文化される憲法/アジアを引き込む軍拡競争 第3章 安保法制懇のトリック 「間違っている」と憲法を珍解釈/首相が示した四類型/「北朝鮮が米国を攻撃」とあおる首相/米軍とともに海外で武力行使へ/「駆けつけ警護」も解禁/途上国の列に割り込む日本/他国の武力行使と一体化/首相が生みの親「積極的平和主義」/多国籍軍参加への模索 第4章「積極的平和主義」の罠 武器提供決めた日本版NSC/ミサイル防衛が原点、特定秘密保護法/ウソで塗り固められたイラク派遣/「積極的」だらけ、「国家安全保障戦略」/陸上自衛隊は海兵隊になるのか 第5章 集団的自衛権の危険性.... 憲法違反を避け続けた歴史/行使解禁求める「ジャパン・ハンドラー」/米政府は「歓迎」を表明した/原点は北朝鮮のNPT脱退/極秘の「K半島事態対処計画」/自衛隊が見積もる北朝鮮との戦闘/押し寄せる難民/自衛隊は北朝鮮攻撃を検討した/米国の要請に応える周辺事態法/自衛隊は北朝鮮対処の演習 第6章 逆シビリアンコントロール 「人助け」目指して自衛隊へ/「オールジャパン」の南スーダンPK0/米国の「名代」担うソマリア沖の海賊対処/モンゴル、ベトナムから高級将校/政治家を動かした海上自衛隊/裏工作の裏側/「愛国心」問う自衛隊幹部学校
少なくとも戦争をするための準備は着々と整備されている。ただ、はたして国民だけではなく国を率いる政治家たちもその「覚悟」ができているかは不明。危機をあおって不満をそらしているだけではないかという疑問に答えるためにも姑息な言葉尻の議論ではなく、真に抑止力のある国防を目指すには何が必要か真剣に考えるべきだ...続きを読むと思う。米国の世界戦略に取り込まれて自己判断できない状況になる危険はないのか? 世界の警察官の立場を降りようとしている米国が今後内向きになっていく中で気がついたら敵意に囲まれて孤立する状況になるリスクはないのか? そもそも最小の犠牲で独立を維持するためにどういった防衛体制が必要なのか、の議論無しに政治家に頭から「この道しかない」と言われても、とうてい納得はできない。 集団的自衛権と、東アジアの国際情勢を理解するために参考になった。ちょっと不毛な言葉だけの議論もあったけど。
集団的自衛権以前に考えなければならない安全保障のための問題は、山程あるようだ。差し迫った脅威について煽られることは多いけれど、それに対するために今検討するべきことは、集団的自衛権ではないのではないかと考えてしまった。一度外してしまった箍を戻すことは容易ではないだろうし。 中には疑問を抱く言説があった...続きを読むり、偏っているように感じるところもあったけれど、これから考えていく手掛かりになった。
我々が為政者に質したいプリミティブな問いそのものがタイトルとして掲げられている。論議の的となっている集団的自衛権の本質と問題点を様々な観点から論ずるだけでなく、自衛隊という武装集団の特異さを改めて考えさせる。
首相は、自身の言動が国の方針として周囲の国に周知される。 司馬遼太郎の大久保利通への一文を思い出した。 大袈裟かも知れないが、国の代表として、全てが記録され、後に残り、その政治家の人物像が語り継がれる。そんな自覚がある政治家は日本に何人いるのだろうか。
半田さんという方は左寄り、朝日新聞寄りの意見のようだ。憲法改正反対、集団的自衛権反対、安倍政権批判の内容。共感できる部分は少なかった。
結局のところ、「俺は、自衛隊や日本周辺の国々の軍事情勢について、こんなによく知ってるんだぜ」という著者の主張ですよね、これ。 「僕自身の無知を補う」という意味では役に立った部分もありますが、タイトルに沿った内容ではないと思われる部分も少なくないため、「騙された」印象を受けました。 これでは、「日...続きを読む本は戦争をするのかどうか」の判断材料にならないと思います。 そういう意味では残念な本でした。
首相は「わが国を取り巻く安全保障環境が一層悪化している」と繰り返すが、尖閣諸島をめぐる中国との対立はあるものの、日本周辺に緊迫した事態はない。北朝鮮による日本人拉致は犯罪であり、武力攻撃ではない。首相の狙いは憲法解釈を変更して海外で武力行使できる「普通の国」を目指すことにあると考えるほかない。 ...続きを読むベトナム戦争を参考にすると、集団的自衛権行使を理由に参戦するのは、米国のように「攻撃を受けた外国を支援する例」、韓国のように「参戦した同盟国・友好国を支援する例」の二つのケースがある。
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