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Posted by ブクログ
主人公のアレックス、若気の至りでちょっとヤンチャしてるとかいうのじゃ済まないくらい本当の悪人で、しかもそれが生まれ育った環境がそうさせたとかでもなく、本人が罪悪感もなく普通に楽しんでやっているのでかなり理解できない人種。
そのアレックスの語り口調で進んでいくのでスラングが多くて最初は読みにくさを感じて戸惑ったけれど、慣れてくると独特のテンポ感がクセになって一気に読み進められた。
選択の自由を制限して善人であるようにしか行動できなくすればいいんだ!という実験的な手術は倫理観に反しているとは思うけれど、だからって悪人に選択の自由を残していても更生することは難しいし、何をもって「善」とするのかを問いかけられる、悪人を更生させて終わりだけの単純な話ではなかった。
15歳で逮捕され18歳で釈放された彼が感じた3年間の間に生じた世間とのズレや、かつての仲間と再会して社会に取り残されていると感じる場面には、つい辛くなって同情してしまった。
最後は自分の意思で良い方向へ変わろうとしていて、やっぱり選択の自由は誰にでも平等にあるべきなのではないかなと思ったり。
Posted by ブクログ
アントニイ・バージェスの長篇。映画もヒットした、世界的に有名な作品。
1962年発行。
十五歳の少年、アレックスは、社会に強い反抗心を持ち、夜な夜な仲間たちとともに街に繰り出しては、強盗・強姦をはたらき、その過程で凄惨な暴力を「善良な人々」に与えていた。
ある日、アレックスは仲間と喧嘩をし、裏切られたことで逮捕される。さらに、強盗に入った家で老婆をはずみで殺してしまう。
これにより長期間刑務所に服役することになり、アレックスは絶望する。
服役後、3年余りが経った頃、アレックスは急に刑務所長に呼び出される。そして、アレックスを更生させるための特別なプログラムを用意したことを告げられる。
そのプログラムとは、特別な映像・音楽を毎日浴びせることで、アレックスが暴言や暴行を働こうとすると、激しい吐き気と嫌悪感が襲ってくるようにする、というものだった。
アレックスは強制的にこの「治療」を受けさせられ、「更生」したものの、釈放後も自分の変化に苦しむようになり、、、
というのがあらすじ。
SFではあるものの、舞台説明がほとんどなく、それ故にテンポが良い。
アレックスは主人公かつストーリーテラーであり、彼の饒舌な喋りが特徴的。
また、彼と仲間は「ナッドサット」と呼ばれる、ロシア語混じりの不思議なスラングを多用する。読み始めはこのスラングに違和感があり、読みにくいと思ったが、後半になりこれに慣れると、このスラングが絶妙な「異世界感」を醸成していることに気づいた。
これが、本作を舞台や背景の説明が少ないながらも、立派なSF足らしめている。
本作のテーマは「人間の善悪」である。
アレックスは社会に対する反発心から、あらゆる犯罪を繰り返していた。これは他人を無闇に傷つける「悪」の行為である。
それ故に、アレックスは政府の「治療」を受けることになり、「悪」の行動を取ろうとすると耐えきれない嫌悪感によって自制されるようになった。結果的には、「悪」行動をまったく働かない、「善」良な青年に見える。
では、後者を真の「善」的人間と言えるだろうか?
これが本作の投げ掛ける命題である。
作中、アレックスの入っていた刑務所の牧師が、「神は、善良であることを望んでおられるのか?それとも、善良であることの選択を望んでおられるのか?どうかして悪を選んだ人は、押し付けられた善を持っている人よりも、すぐれた人だろうか?」というセリフを投げる。
これは本質を突いていると個人的にも思う。
「善」とは、強制的に選択させられるものではなく、自分の中から湧いてくるものである。
むしろ、選択の放棄こそ大罪である。
自らの頭で考えることを停止し、根拠のない慣習や前例に無条件に従うことこそ、人間としての敗北であり、最も愚かな姿に他ならない。
にも関わらず、思考停止でロジックを横流しして悦に浸っている人間が多すぎる。自らは何にも挑まないくせに、人の足を引っ張ることだけに固執している人間が多すぎる。
この状況に、我々はもっと危機感を持たなければならない。
そんなことを考えさせられた小説だった。
テンポが良く、ストーリーが洗練されている名作。昔の小説ではあるので、古くさい部分はあるもの、それが良い味となっている。
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小説・文芸
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