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Posted by ブクログ
素晴らしかった。
この本を買おうと思ったのは、多分、表紙と・・・(明治からこっちの日本の洋館建築の写真集をあきらめた私の目を釘付けにした、赤絨毯の階段)、ぺらぺらっとページをめくった時の文体が好みだったこと(これは重要)、「曽野綾子」の文字。
昭和史は最近のマイブーム。
学校で昭和史は学年末が迫り、十分に教えてもらえなかったのと、まだ歴史の証言者が生きている時代ゆえ、生々しい感じがして自身も目を背けてきた面もある。
その中でも、東京大空襲や広島長崎の関連書籍は読むことがあった。
けれども、ホテルにまつわる話を読むのは初めて。
庶民なので、祖父母から聞く話の中でも、触れられたこともなく、興味深い作品でした。
序章で語られたように、そこは(ホテル)は、一種、特殊な場所であった。
戦時中でも、様々な人種がそこに存在し、一種治外法権的な場所・・・そして、それをもてなすホテルマンの覚悟と、崇高なまでの「公平」性。人種を問わず『お客様をもてなす』そのために己が存在する、という自覚。
目からウロコでした。
そこからは、作者が実際にホテルの支配人の血筋の人であるがゆえに知り得た情報なのか、戦前戦後を見てきたホテルの歴史が語られる。
『国破れて山河あり』というフレーズがあるけれど、実際、国破れてホテル有り・・・であった。
最初は、開戦を阻止するべく、ホテルは重要な会談の場所を提供した。
しかし、尽力の甲斐もなく開戦・・・
何故か戦中も様々な国家の人々が利用する。
そして、敗戦で、進駐軍の居留場所として接収されるホテル。
第二次世界大戦に敗れて、日本がホテルを摂取されたことに関する記述の表裏を表すように、満州や南方で、日本が同じように占領地のホテルを『接収』していた記録も描かれている。
そして、そこで敗戦を迎え、悲惨な運命をたどるホテルマンたちの描写は、やりきれない思いで読んだ。
終章、作者はクラシックホテル支配人の孫として、そこにあった家族の肖像を描く。
特に、母親に関しての記述・・・
『ホテルが自宅』という特殊な環境に育った母親に、あたたかい理解の目を向けるとともに、物書きとしての冷静な目と、娘という立場ならではの愛憎のない混じった視線が、生半可な小説以上のドラマを物語る。
昭和史に興味を持ったのは、劇団四季の『昭和三部作』を観劇した後のこと。
今後も芋づる式に、さまざまな作品に触れていきたいと思う。
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