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愛しているから、私が、嘘をついた。結婚をせずに関係を続けるということは、相手に何があっても知らずにいるという不安を一生涯背負うこと。いとおしく、切なく、親密なのに遠い。表題作のほかに6編を収録。それぞれの恋愛に隠された「たくらみ」と、狂おしいほどに切実な想いを、濃密に描いた短編集。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
すぐれた文章にある一定のテンポがあるのは当然なのかもしれないが、この小説には、常に落ちるリズムが付きまとう。 スマートな作家さんなのだろう。 どの程度彼女自身を忍ばせているのかはわからないが、彼女の描き出す登場人物は常にドライで強く凛々しく、そうして美しい。 それぞれの女性の姿形の描写は少ない...続きを読むはずなのに、なぜか一定のテンポが、彼女たちが同じ匂いの女性であると告げている。 不倫、という現象をクールに切り出し、恐ろしい程にドライに強く、美しく仕上げたこの作品は、まるで精緻な砂糖菓子のようだ。 美しく、脆く、口に運んで満たされても、決してそれだけではカラダを作ることのできない、虚構の食事。 さくさくさく、甘い毒が体を蝕む。 どんなに満たされていると満足したふりをしても、それは単なる虚構。 どんな修羅場の不倫小説よりもこの短編集には、不倫の毒がつまっている。背筋がぞっとする、ひそやかで華やかな、毒々しい空洞が。
早期退職を決めた昔の上司と、「ミルクティ」 父を見舞った帰りに電車で会った男と、「秋雨」 画家だった元恋人の弟と、「緑深き淵」 外資系銀行員の女と夫が、「彼女の手」 インタビューで知り合った大学の先輩と、「隣の公園」 美大の教授と器の展示即売会に現れた男と、「唐草といふもの」 翻訳の仕事を通じて知り...続きを読む合った2人の男と、「ソナタの夜」 30代からの不倫小説。 「彼女の手」以外はどれも主人公が秘密を抱えている。そこが面白い。 不倫をしていることを隠して、さらに秘密を隠して、 どれだけ隠し事をすれば収集がつくのだろう。 対象が大人だからか、しっとり切なく物分かりがよすぎる。
7編収録。全部不倫が絡む話で、性行為の描写なども(抽象的表現を用いてはいるが)多く、今まで読んだ永井するみ作品の中では一番ねっとりしている。お得意の「恋愛ミステリー?」ではないのに、女性心理を描ききった上で、最後はそれぞれ、「女性の怖さ」だったり「希望」だったりにうまく繋げているのはさすがだと思う。...続きを読むしかし個人的には少し遠い世界の話のような気がするものが多かった。「唐草というもの」の愛人2人生活とか、「秋雨」で1年に1回だけの不倫とか。。また、「緑深き淵」では貴央が死んだ兄を利用するような形で、元兄の恋人3人と同時に関係を持つとか、実は主人公の子供は夫との間のではなかったとか・・・ちょっと現実的には考えられないので、「つくりものの小説」として読めばいいんだろうけど、どうにも感情移入しにくかった。
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