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かつての人気テレビドラマ「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」では、卓袱台がもうひとつの主人公だった。食事どきや、団欒に卓袱台を囲み、ワイワイ、ガヤガヤ話し合った。卓袱台は、家族の歴史を知り尽くしている。あのころ確かにあった、家族たちのお互いへの思いや、近隣の人たちとの連帯は、いったいどこへ行ってしまったのか。大切なものの行方を探し、遠い日の記憶の中に佇む。敬愛する山本夏彦氏に依頼されて連載した随筆からは、真摯で繊細で照れ性な作家の姿が垣間見える。
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Posted by ブクログ
大人は過去の経験を分類し、記憶にとどめ、その文脈で今の体験に対して判断を下したがる。これは教育を通り越し、自己洗脳といえるのかもしれない。
多くの人は大人になるにつれて忘れてしまっているが、本来誰しも子供のころは持っていたように思う感覚。
この本で著者は、そういった経験知が成立する以前の感覚を表現している。
病弱な子供の頃、布団の中で感じた生死が隣り合わせの感覚。戦時空襲の中で体験した現実と認識の乖離感。
薄暗い白熱灯、障子越しの光と影。水漏れ、隙間風、虚無僧の尺八、隣家の暮らしの音。金木犀、便所掃除口のそばに生えるドクダミのにおい。
社会通念や条件付けられた感情の決まりきった反応ではなく、表現しがたい生々しい感覚なのだ。
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