Posted by ブクログ
2013年02月03日
安倍政権の「アベノミクス」が声高に叫ばれる日本の現状と、アルジェリアの事件をみて、本書を思い出し、昨年読んだ本書をもう一度読み直してみた。
本書は昨年9月の発行であるから、夏には脱稿していただろから、今年の激動する世界を的確に予言しているようにも思えた。
昨年本書を読後の「レビュー」は以下のと...続きを読むおり。
『本書は、最近読んだ経済書の中で読後に一番印象に残った。
「グローバル経済」が世界を覆っている現在において、マスコミでは「経済危機」という言葉が乱舞している。その対象はヨーロッパ、アメリカ、日本、中国と世界中が舞台だ。
それぞれ「原因」と「対策」も語られているが、本書はその全体像を「そうかこういう視点で見るべきなのか」と教えてくれるように思えた。
著者の専門は「経済思想」だそうだが、「マルクス」が神通力を失った現在において、本書の指し示す視点は説得力がある。
本書は「グローバル化」を否定しているものではない。ただ「グローバル化」のもとでは、「事前に対策をとることは不可能」な構造のもとで「世界経済が脆弱に」なっているというのだ。
そして過去の「グローバル化」を分析し、その帰結として「第一次世界大戦」が起きたことをその経済的背景から分析している。
また現在の世界の情勢を「経済戦争のはてに」と経済と国家の視点から解析しているが、そこからの「グローバル化は大きな政府に帰結する」との結論には同感の思いをもった。
「国家と資本主義、その不可分の関係」では、いかに資本主義が脆弱なシステムであり、「安定性を担保しているのは国家」という関係であるかがよくわかった。
「日本経済の病理を診断する」における「グローバル化のもたらす社会対立を抑えるためには小さな政府ではなく大きな政府が必要」との結論には、思わず頷いてしまった。
ただ、本書の「グローバル化」「大きな政府」「グローバル化は福祉国家に行き着く」との道のりは、現在の世界情勢を見ると、まるでロープの上の綱渡りのような極めて危うい細い道のようにも思える。
本書は、末尾にケインズの言葉「将来に向かっての次の一歩は・・・思想から生じるに違いない」と引用しているが、たしかに本書は単なる経済書ではなく「経済思想書」であると思えた。
本書を、現在の世界をどう捉えるのかという視点から多くの示唆を与えてくれる良書であると高く評価したい。本書を読んで今後の世界は決してバラ色ではないことを痛感した。』
本書は、現在でも、まったく古さを感じないどころか、激動の現状を的確に分析しているようにも思える。
だとしたならば、やはり世界は今後、さらなる激動に陥るのだろうか。 アメリカ経済もようやく上向きに向かっているようにも見えるし、欧州経済も小康状態で、一時の危機を脱出しているようにも思えるが、本書で明らかにされている世界の現状は、大状況では問題は全く解決の道に進んでいないことを示唆している。
本書は世界の現状をするどく分析した良書であるとあらためて高く評価したい。