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正しいことしか許されない時代に、「誤る」ことの価値を考える。世界を覆う分断と人工知能の幻想を乗り越えるためには、「訂正可能性」に開かれることが必要だ。ウィトゲンシュタインを、ルソーを、ドストエフスキーを、アーレントを新たに読み替え、ビッグデータからこぼれ落ちる「私」の固有性をすくい出す。ベストセラー『観光客の哲学』をさらに先に進める、著者30年の到達点。
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Posted by ブクログ
気になった、自分に刺さった内容をピックアップして感想を記述(本の内容が重厚なので) ・リベラル村 リベラルを追求している結果、結果的にリベラルを許容する意識の高い人だけを集めることとなってしまい、皮肉にもリベラル的な思想から外れてしまっている。これは私も常日頃から感じていた。新の多様性とは、受け入...続きを読むれにくい人すらも受け入れる(というか否定せず、無関心)必要があると感じている。 ・誤配=訂正可能性 あらゆることはいずれ訂正される可能性がある。まずはそれを許容する必要がある。共同体とは開かれてもいて、閉じられてもいる。それを誤配によってつなぎかえを行っている。再帰的な保守主義という言葉が素晴らしく、守るべき自分たちの枠組みを少しずつ変化させているというニュアンスが良い。 ルソーの話にページを割き、そこから一般意思の話に広げながら、ビックデータがその一般意思をくみ取るという話につなげていた。この「人工知能民主主義」の危険性について話していた。自分がどんな人間でも、統計的集団にカテゴライズされ、リスク人材としてみなされる可能性がある。統計的に正しいとされることで、訂正可能性がまさに失われてしまう。 内容を完全に把握しきれていないが「あいまいな状態」を許容しながら自分たちは足を進めなくてはいけないと感じた。そして何かを正しいと定義しても、それは訂正される可能性がある。訂正可能性があることを許容しなくてはいけない。 基本的に物ごとの大半は黒か白で分けることができないだろうと考えていて、今回の本は自分の考えを後押ししてくれるような本だった。
普段、読書はもっぱら己のスノビッシュな欲望を満たすためにする私だが、本書は一味違った。ページを繰る手が止まらず、時間を忘れて「読書のための読書」に没頭するという貴重な体験をくれた一冊だった。【家族】は、私たちが認識する対象ではなく、むしろ認識の枠組みそのものである。そして、【家族】は一面では堅苦しく...続きを読むあるものの、他方では柔軟さも併せ持つ。その柔軟さを活かすことこそ、人生を生きる上で重要なヒントとなるはずだ。
自分と同世代の著者がたどり着いた、人が人らしく生きるために必要な事は何かを、丁寧に、ルソーの思考を軸にした解説が展開される。構成もよく練らせており大変読みやすく、理解し易く書かれていました。「人工知能民主主義」に関する解説は、私の中にも存在したモヤモヤ感を払拭してくれました。個人的には著者の主張は私...続きを読むの考え方に大変近いものでしたので、その意味でも良い頭の整理になった気がします。満足。
面白かった。訂正する、ということの価値・意味を、素人にも非常に分かりやすく示してくれている。 ウィトゲンシュタインの言語ゲームから始めて、人のコミュニケーションが元々持ち合わせている性質からstraightforwardに訂正可能性の意義を見出し、それを公共性や民主主義、政治と結びつけながら、ルソー...続きを読む、あるいは一般意志の解釈へ繋げていく流れが非常に明瞭。個人的には、こうした文脈の中で2010年代を思想史的に位置付けているのも(思想史というのはもっと発展の時間スケールが長いものだと思っていたので)感心した。
人は長く一貫性や包摂性を探していき続ければ、直感的には本書で編まれた言葉の場所に辿り着く、そんな普遍性と、これまでの哲学者が見てきたものと東浩紀が見ているものが大変強靭な論理性で結ばれて、何度も頷いてしまった。素晴らしかった。
詳しい書評はあとで記す めっちゃ面白かった。論理の展開や回収の仕方や、correct-abilityの意味も綺麗に回収していて見事だった。
訂正する力に挫折していたところ、友人から勧められて読みました。 まだ、一通り目を通しただけですが、訂正する力に比べるとはるかに読みやすい。
私はSNSはやらないが、SNSには、白黒ハッキリさせるような論議を生む機能が内蔵されており、その意見の差が大きい程、人は反論の熱意が高まるようだ。それは宗教論争のように相手を屈服させ、自らの正義を知らしめようとする。その根底には論に仮託した承認欲求の維持、自意識を失いたくないという気概すら見える。 ...続きを読む その状態はヤバい。社会は、訂正し、実態にアジャストする機能を有していたはずではないか。また、完全な根拠で立論して最適解を弾く「人工知能民主主義」にはリアリティが無いが、実現するとしても、その無謬性ゆえに「訂正可能性」を欠くならば、あってはならない。こと哲学においても、過去の論考を引きながら訂正するのは、人文学における当然の作法である。あるべき筈の「訂正可能性」を訂正強度のミスリードにより敵味方に分断したり、片方の論説を過敏に扱い過ぎる、または自論を完璧に信仰し過ぎるのはいかがなものか。本著の論旨は、そうしたあるべき「訂正機能」を消失しないようにというメッセージを含むものだと読解した(あくまで個人の意見であり、書評)。 観光客とは、友にも、敵にも分類できない第三の存在。家族とは、自ら選択して集められた集団ではなく、いつの間にかそこにあるもの。こうした二つのカテゴリーを駆使して、確定した立場や意見の危うさを看破する。そして、クリプキのクワス算を象徴的に援用する。 ー 僕たちは、すべての問題に中途半端にしか関わることができない。これは決して冷笑主義の表明ではない。それはすべてのコミニケーションの条件。足し算の規則すら完璧に提示できず、ソクラテスの名前すら完璧に定義できない。そのような単純なことに対しても、原理的に他者からの訂正可能性にさらされている。 人文学者、いや社会学でも私は疑問に感じるのだが、誰それがこう言ったという言辞を弄して、それは実験データでも無いのに、なぜ得意気に論説を複雑化してしまうのか。彼らは皆、自信がない。あるいは教養=記憶力が売りのナルシストなのかと。東浩紀は、訂正可能性をモチーフに、その答えを本著で与えてくれた。 ー 人文学は過去のアイディアの組み合わせで思考を展開する。自然科学のように実験で仮説を検証するわけではない。社会科学のように統計調査を活用するわけでもない。プラトンはこういった、ヘーゲルはこういった、ハイデガーはこういったといった蓄積を活用し過去のテクストを読み替えることで思想を表現する。ヴィトゲンシュタインの哲学を訂正し、ローティの連帯論を訂正し、アーレントの公共性論を訂正するといった訂正の連鎖の実践である。この訂正こそが、人文学の持続性を保証する。 ー 成田氏による無意識民主主義、人工知能民主主義については、実現不可能だと考える。例えば戦争のように情動が沸騰する事態に対応できない。無意識が常に公共の利益を指し示すわけでもない。訂正可能性の概念を導きの糸としているのは、一般意思とその暴走を抑制するものの、拮抗関係についてより明確に説明できると考えたからである。アルゴリズムの構築そのものも疑わしい。人工知能民主主義は、訂正可能性を消去するから問題なのだ。 改善ではなく訂正。いや訂正にも「正しさ」を語感に含むので、少し齟齬があるようには思うが、社会構造上、当たり前にあったもの。必ずしも良い変化とは限らぬが、あるべきもの。それがインターネットやAIにより、消去されぬように。私はそういう読み方をしたのだ。後は訂正していけば良いではないか。
事後的に解釈やルールを変えられる、それが人間と言語の本質にある、だから社会の無意識的な理想、一般意志の実現を目指すAIによる統治は、人の本質を欠いていて理想にはなり得ない。分人は責任を負わないので異なるポジションを取るのではなく、全人的に訂正していこう、とも理解した。こじつけ感あるなと思うところもあ...続きを読むるが、合意できる内容。議論する、難癖つける、相手を思いやる、そういう社会性で人の幸福は成り立ってる。何かに意味を見出すのはこれからも人がやりたいことなはず。
著者がおわりで述べている哲学とは、過去の哲学に対する再解釈であるという姿勢が体現された著作だったなと。過去の文献の丁寧な読み込みと再定義から発する「訂正可能性」の意義。人間に対する親しみを込めた諦観が、著者の人間愛を醸し出す。 ところで過去の作品から文体が変わったとのこと。ぜひ、『一般意志2.0』...続きを読むあたりから振り返りたいなと。もちろん今後の創作活動にも期待しておりますです。
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