明智軍戦記 三 伊勢大和の激戦

神宮寺元

明智光秀は大坂城にいる羽柴秀吉を誘い出し、伊勢・大和で激戦を始める。それに呼応するように、徳川家康・北条連合軍も動き出した。その裏で、軍師黒田官兵衛の謀計も蠢き始める。果たして光秀はこの窮地を切り抜け、天下を手中にすることができるのか！？

• カテゴリ: 小説・文芸
• ジャンル: 歴史・時代 / 歴史・時代小説
• 出版社: 学研
• 掲載誌・レーベル: 歴史群像新書
• ページ数: 216ページ
• 電子版発売日: 2012年11月02日
• コンテンツ形式: XMDF
• サイズ(目安): 2MB

[ブクログ · ★★★★☆]

　光秀、秀吉、家康そして黒田官兵衛に細川幽斎の仕掛け合いがとんでもないことになっていて複雑であったが面白かった。合戦は主に伊勢方面で大きく動いたのだが、地名、地形に明るくないのでその部分を読み取るのは少々困難であった。秀吉、家康との決着は共に意外な方法だった。確かに腹の探り合いの行き着く先はそうなるかもしれないと言えるのでありといえばありなのだが、特に秀吉とはあまりにもあっさりと片付いてしまい少々拍子抜けしてしまった。家康との決着も正攻法とは言いがたいが、一応は合戦での決着であれば光秀の武将としての側面が出ていたように思う。
　本作を読み終えて明智光秀を主役に据えるのは王道に思えるのにもかかわらず、そうした仮想戦記が少ない理由が分かった。光秀自身の半生や武将としての能力、さらに謀反の理由に不明な点が多く扱いづらいという事もあるだろうが、とにかく味方が少なく敵が多すぎて生き残れないという点に尽きる。本作では知略と強力な側近、そして反則的な運により窮地を切り抜けていくが、そうでもしなければ切り抜けていけないということである。つまりこれらの要素が出すぎてしまえば物語がうそ臭くなってしまう。本作では秀吉と家康の潰し合いもありその辺りは上手く緩和されていたと思うがやはり運が良すぎる様に思えた。ただ、そうしないと物語途中で光秀が退場しかねないこともありその辺りは仕方ないかもしれない。