企業統合におけるトップ(特に興銀の西村頭取)の決断の速さによって電撃的な三行統合が実現する様が描かれる一方で、逆に、トップの IT の重要性に対する致命的な意識の低さが日本金融史上最悪のシステムトラブルを引き起こすまでの経緯も描かれる。旧態依然とした出自主義の権化、第一勧銀の西之原や、みずほを陥れようとする売国奴、竹中金融相など「悪役」も登場してストーリーに華を添える。描き方によってはもうちょっとドラスティックな物語に仕立て上げることもできたかもしれないが、あえてそれをせず、淡々とした筆致に固執したところに、リアリティが生まれた。