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野生生物を守るのは簡単ではありません.複雑な生態系のバランスを保ち,多様な生きものがいる豊かな自然環境を維持するために,ときには外来生物などを駆除するという,つらい選択をしなければならないこともあります.日々悩みながら命と向きあう現場の人たちを取材し,人と生きものとの共生のあり方を問いかけます.
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Posted by ブクログ
以前に『月刊たくさんのふしぎ となりにすんでるクマのこと』という雑誌で軽井沢町での野生のクマと上手く生きていくための施策やクマの生態について学んだけれども、本書はその拡張版というか、更にもっと色々な視点から野生生物との共生のしかたを考えようよ、といった趣旨の内容。 5章にわたるケーススタディを通し...続きを読むて、最終的には《命に向き合う責任》を考えるに至る。 結構ハッとさせられるのではないかと思うのだが、野生生物って動物だけに限らず植物や昆虫も当然ながら含まれる訳だけども、そこは意外と盲点となってはいないだろうか。大きなニュースでは動物による事故や駆除のことが扱われがちなのである種仕方ないとも思うのだけど、動物のことは駆除したら可哀想、誰か引き取ってあげて、と思える人も草木や虫の事となると途端に興味を失ってしまうというか。 このあたりは《第2章》をメインに触れられているが、「本来「生きもの(生物)」には動物も植物も含まれるし、「動物」には哺乳類だけではなく、昆虫やミミズといった生きものも含まれます。」(p73)という視点は改めて持ち合わせたいところ。 「外来種」についても正しい知識を身に付けたい。「外来種=駆除するもの」あるいは「殺してもよい生きもの」(いずれもp56)という認識を持ってはいないだろうか。「価値のある命と、無価値な命があるかのような考え方」(p60)を知らず知らずのうちに身に付けていないだろうか。駆除活動を専門にされている方ですら悩みながらやっておられることなので、素人が横から口出しすればそれは摩擦を生むに決まっている。 ちなみに外来種とは「もともとその地域にいなかった生物で、人間の活動によって他の地域から持ち込まれた生物」(p87)を指すので、「外国から来た生きもの」という認識は誤り。かつ、とりわけ既存の生態系に悪影響を及ぼす種は「侵略的外来種」(p89)となるので区別することも重要。つまり外来種だからみんながみんな有害、というわけではないということ。 総括すれば、生きもののニュースに関心があるのであれば多少なり自分で調べて現状を知る事・考える事が重要ということ。 よく知りもせずにその場の感情やお気持ちで、真剣に取り組んでいる方々に文句をつけるのは全くもって間違いなのでその辺りはしっかり自分の子どもには伝えたい。 身近なところでは保護猫・地域猫活動に関する話題だろうか。これも根が深いよね。 取材班の生物愛や想いのたけが伝わってくる内容。 装丁も素晴らしい。良かった。 1刷 2025.7.27
好きなマスクラットは日本では特定外来生物であり、どのように付き合うのが良いのかと日々考えており、その参考のために読みました。 この悩みの一部は、同じく好きなビーバーが日本では動物園動物であることも無関係ではないと考えています。 まだ思考の整理はできていないですが端緒となり、正に私に必要な書籍でし...続きを読むた。 入念な取材と分かりやすい文章と、ありがとうございます。
野生のクマが捕獲されると決まって殺到するのが、行政職員に対する「クマがかわいそう」というクレームだ。私は常に、この意見に違和感を覚えていた。 本書は「まえがき」でも述べている通り、いきものを守るにはどの道が正解かといったものはほとんどない、と断っている。だからクレームを入れる人の意見も、私のように違...続きを読む和感を覚える人も両方「正しい」のだろう。いきものの保全はそう単純なものではない。ただ、一番苦悩しているのはいきものの駆除や保全に直接携わる方々だ。本書は生き物の保全に対する例だけでなく、その専門家たちの肉声を読むことができる貴重な本だ。現場に居る方々の葛藤、苦悩、使命感がよく伝わる。 何にでも言える事だが、よくわからないのに一方の意見を押し付けるのはよくない事であり、反対意見に耳を傾けないということは議論にもならない。何より一番厄介なのは「かわいそう」と安易に口にする「中途半端な動物愛護精神」だ。自分の意見を押し付ける前に、今一度もう一方を「知る」「知ろうとすること」が、答えのないいきものの保全の道に必要なのではないだろうか。
野生生物と人間社会との関係、距離感を考えるヒントを提示した良書。 「新聞記者」というスタンスから書かれていることで、野生生物に肩入れしすぎず、当事者の方達の熱い想いや苦悩を押しつけることもなく、一般の私たちの感覚にも寄り添って問題を丁寧にひもといている。 ジュニア新書だが、子どもや学生はもちろん、あ...続きを読むらゆる世代に手に取ってほしい一冊。 生物多様性保全の現場で悩みながら活動している当事者は、どうしても保全対象への思いが強く、活動の重要性を強く訴えがちになる。今、行動しなければ間に合わないから、どうか力を貸してほしい、力を貸してもらわないまでも、理解してほしい、邪魔しないでほしい。当事者が書くと一般の私たちはひいてしまうような拒絶されそうな話題でも、冷静であろうと表現を選んで伝えようとしているのがわかる。 野生生物との距離をどう取ったらいいのか、対立、排除ではなく、共存するにはどうしたらいいのか、そこに生業が絡んでくると一層難しい。そうした苦悩も丁寧に拾い上げて、読者自身が自分事として考えることを促してくれているようだ。 客観的でありながら、いきものへの愛情が溢れた一冊だった。
愛護だけでは守れない動植物の話。現在進行形の話題も多くスッキリとした答えをくれるわけではないので、それを期待して読むと肩透かしを食らうかも? 調査や保護、駆除をされている方々の苦労にはただただ頭が下がる。 奄美でのハイビスカス伐採の話で出てきた納得感というのは重要なキーワードだと思った。結局のところ...続きを読む、自分と、自分を含めたその土地がどうありたいのかを各々もっと考えていける社会にしていきたいね
人間が自然をどうこうしていい訳がないが、壊したものを元に戻すのもそれはそれでエゴなような気もする。ずっと真摯に考え向き合わなくてはいけない問題。
駆除される生き物がかわいそうと思うだけでは生態系は守れない。駆除する側の苦悩もある。 とても難しい問題に向き合った本。
まだまだ知らないことが多いんだな この本はそういう事に気づかせてくれる。 みんなに読んでもらいたい本です。 特に印象に残っているのは 「命の選別につながるようなことがあってはいけない。 命の選別とは、価値のある命と、無価値な命があるかのような考え方のこと」 その通りだと思う。 命の選別。 こ...続きを読むの動物は賢いから殺してはいけない。 よく言われている。 これは人間を差別するのにつながると思う。
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野生生物は「やさしさ」だけで守れるか? 命と向きあう現場から
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