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吉本隆明(1924-2012)は,戦後を代表する思想家であるが,詩と批評,文学と思想の統一を,詩の言葉で自立させた詩人でもある.『固有時との対話』『転位のための十篇』は,戦後詩の画期となった.四〇年代の初期詩篇から九〇年代の最終段階までの半世紀に及ぶ全詩業から精選する.「評論」1篇を併せて収載.
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Posted by ブクログ
吉本隆明さんの詩集ですね。 吉本隆明さん(1924ー2012、東京生まれ) 詩人、評論家。 独自の言葉と表現を駆使する作家さんなので、正直よく分からない。 生誕百周年の昨年刊行された詩集です。 『詩』 銀杏が音を立てて落ちる様な冬の夜だった 私はせっせと詩を書いて見た どれも...続きを読むこれも大した詩は出来なかったが 鳥が上をあふいでそれから下を求める様な 豊かな心が判る程だった 「今の私は詩が出来ないから駄目ですよ」 そんな風に口にしてゐた頃の私もあつたが 詩の出来るやうな淋しさも 存在してゐるのが判った こんな時 私が何時かいぢめた「ちび」が 「暗い精神的な物の見方をせずに もっと明るい気持を持って下さい」 と言う便りを寄来した そのまずい文字にも冬がさはいでゐた 「遅雪」 ぼんやり沈んだ玩具のまちの 玩具の家にふりつもる 夜がきて しづかな憩ひのランプがともり みんなが語りあつてゐるとき 風がたよりなく吹きとばし 雪がぼつりぼつり落ちるかと思へば また風がたよりなく吹きとばし 少女がのんきさうに書物を誦んでゐる はやくすべてが崩れてしまへ みんなのこころも 屋根のはるかなうへの 灰色の雲たちも 春がきてゐるのに 変わったものが落ちてくるので すべて冷たくなる 食器や家具の色までも あぁ遠いくにでは さぞかしつらいだらう みんながみんな さびしそうな顔をして 真剣に話し合ってゐる 戦争について人の死ぬことについて 狼のやうにおそろしい 自然や人工の機械や もっとおそろしい 魂の不安について 少女はつと書物の上から面をあげる 風がたよりなく吹きとばし 変わったものが落ちてくるので 比較的分かりやすい「詩」を選びましたが、真意の程は作家しか分からないでしょうね? 読み手の感じかたで、『こうであろう』でいいのではないでしょうか! 自分の「詩」も批評しながら書かれているので、吉本隆明さんにとって、世界はすべて反芻に溢れていたのではないでしょうか!
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