「アート」を知ると「世界」が読める

「アート」を知ると「世界」が読める

ビジネス・実用
1,107円 (税込)

5pt

NYタイムズではアート関連の記事が頻繁に1面を飾るなど、アートは欧米エリートにとって不可欠な教養である。他方、日本でそのようなことはなく、アートに対する扱いの差が、まさに欧米と日本のイノベーション格差の表れであると、世界97カ国で経験を積み、芸術系大学で教鞭をとる元外交官の著者は言う。アートに向き合うとき最も重要なのは、仮説を立てて思考を深めることである。そこで本書ではアートを目の前にして、いかに問いを立て、深い洞察を得るかについて解説。読み終わる頃にはアートの魅力が倍加すること必至の一冊

詳しい情報を見る

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

「アート」を知ると「世界」が読める のユーザーレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    997円

    268P

    ★再読
    2026/09/17

    これ分かる。イラクとかパキスタンとか歴史的、美術的に優れたもの多いけど、テロ多発してる場所に観光としての収入なんて見込めないとすると、維持する金も無いし、美術品も壊されたりする可能性が高くなるよね。

    元外交官で、世界107か国を巡った経験をもとに国際情勢や人材育成を語る、大学教授兼経営コンサルタントによるアート本。アーティストの視点ではなく、世界情勢、政治・経済、民族、宗教などの幅広い知識を通して「アートとは何か」を考える内容が面白かった。

    山中俊之
    著述家/グローバル理解&人材開発コンサルタント
    世界107か国(2026年2月現在)の現場をまわった経験を基に、政治経済、ビジネス、宗教、芸術、哲学について幅広く執筆。
    1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、1990年外務省入省。エジプト、イギリス、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。カイロではナイル川に近い庶民街でエジプト人家庭に下宿。首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、日本総合研究所に入社しコンサルタントとして企業や自治体の人材開発に関わる。2009年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選抜され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にて、グローバルリーダーシップの研鑽を積む。2010年、グローバルダイナミクスを設立し代表取締役就任(現職)。コンサルティング、研修を通じて、世界のリーダーと世界情勢とビジネスについて議論を重ねる。2015年以来神戸情報大学院大学教授(現職)に就任し、アフリカ、アジアの起業家志望の留学生に社会イノベーションについて教鞭をとる。ケンブリッジ大学修士(開発学)、高野山大学修士(仏教思想・比較宗教学)、ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院博士(国際公共政策)、京都芸術大学学士(芸術教養)。趣味は落語で素人高座にも登壇。

    「何を基準に美しいと判断するかは、文化や価値観で異なります。私はサブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)諸国を何度も訪問していますが、朝から晩まで黒人とだけ接し、やや高級なレストランで、洗練された装いの黒人のカップルたちに交じってゆっくり食事をしていると、ふと感じることがあります。「黒人こそ、美のスタンダードではないか」  このような思いを抱くとともに、とても美しいと感じるのです。これは私の感想ですが、アフリカで仕事をしている日本人ビジネスパーソンに言うと、「実は私もそう思っていました」と、高い確率で同意されます。「白人が美しい」という偏見は、現実には根強く、歴代アカデミー賞の受賞俳優は、男女を問わず白人が圧倒的多数でした。ですが、ダイバーシティが重視される近年、それは是正されつつあります。  長らく絶対だった古代ギリシアの美の基準は、バージョンアップされるタイミングを迎えているのかもしれません。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「では、なぜイタリア語が〝音楽的〟なのか、少し考えてみましょう。  イタリア語の抑揚は日本語と同じく母音で終わる単語が多いので、「イタリアーノ!」といった具合に伸ばすことができます。抑揚が少ない日本語と違ってメリハリがあるのも特徴で、実に音楽向き。その点、ドイツ語は子音で終わることが多いためにオペラや声楽にはあまり向かないとも言われ、ドイツ語圏出身のあのモーツァルトですら〈魔笛〉を除くオペラ、〈ドン・ジョヴァンニ〉や〈フィガロの結婚〉などはイタリア語です。  このオペラこそ、イタリアの「民族」を象徴しているアートである──これが私の仮説です。民族の定義はいくつもありますが、私なりに次のように捉えています。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「 そして主要先進国の G7において、イタリアは自殺率が一番低いのです。  国民の約 8割が自らをカトリックとみなし、また国民の約 3割は教会に通っている国ですから、カトリックの生命重視の価値観やモラルが自殺率低下に大きく影響しているはずで、「苦しいことがあっても、神が救ってくれる」と考える人も多くいます。  一般にカトリック教徒やイスラム教徒が多い国は、自殺率が低い傾向にあります。  太陽が降り注ぐ地中海沿岸の気候も、イタリアの明るさに影響があるでしょう。気候は人間のメンタルに影響を与えるとも言われ、寒冷で気候の厳しいロシアでは、自殺率が高い傾向にあります。社会的抑圧も大きく影響するため、残念ながら日本や韓国も、世界的に見て自殺率が高い部類に入ります。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「もう一つ、イタリア人の自殺率の低さの理由に「家族の絆」があります。多産を奨励し、家族愛を重んじるカトリックの影響ですが、これはイタリア人の民族的特徴でもあります。  日本で「家族」と言えば、せいぜい親子関係やきょうだい関係。広げても祖父母から孫の 3世代です。  しかしイタリアでは、日本で親戚とされるおじ、おば、いとこ、またいとこくらいまでを「家族」とみなします。家族関係は非常にウエットで、日曜日にファミリーが集まる「プランゾ」という食事会も頻繁に開きます。「アモーレ(愛しい人)!  今日も元気なの?  ああ大好きだよ」といった言葉と共に、ハグやキス。全身で行う愛情表現は日常的です。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「ドラクロワは、異文化からインスピレーションを得たアーティストでもあります。〈キオス島の虐殺〉発表から 10年後、 36歳で描いたのが〈アルジェの女たち〉(口絵 7ページ参照)。室内で寛ぐ女性たちの衣装や調度品は、当時注目されていたオリエンタリズム。座っている 3人はハーレムの側室のアラブ人で、黒人女性は使用人と言われています。  エキゾチックな風俗がブームだったとはいえ、ヨーロッパ以外の人々をモチーフにするというのは、当時としては先進的な挑戦でした。  私たちは、「出身地が同じ、学校が同じ、趣味が同じ」などとお互いの共通点を、関係性を構築する際の〝原材料〟にしています。特に日本は鎖国という歴史をもち、アイヌ民族や在住外国人の存在は重要とはいえ、全体としては比較的同一性が高い社会ですから、共通点という〝原材料〟が豊富。しかし、それゆえに他文化の人とのつき合いが苦手な面もあります。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「フランス革命の影響を受けたアーティストを、ドラクロワ以外にもう一人あげるなら、私は写実主義を代表するアーティスト、ギュスターヴ・クールベを選びます。「目の前のものを忠実に描く」ことだけが写実主義ではありません。宗教にも歴史にも材を取らず、ワンシーンを描くのも特徴で、代表作〈オルナンの埋葬〉(口絵 8ページ参照)には、王侯貴族でも、聖職者でもない一庶民の埋葬が描かれています。白い犬が大きく描かれていることも、「神と人間優先」だった当時の絵画としては珍しいように思われます。  ちなみにオルナンはスイス国境に近い、クールベの地元。 19世紀半ばとはいえ、地方の庶民を主体とする絵画は極めて稀でした。ここに王侯貴族や聖職者などの特権階級を否定した、価値観の変化が見えます。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著


    「一般に「西側の経済を牽引しているのは、プロテスタントの国が多い」と言われます。マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫)で論じられているとおり、仕事を苦痛ではなく〝選ばれし者の能力の追求〟と位置づけたプロテスタントの考えが、資本主義にうまく適合したのでしょう。  確かに米英独や北欧、オランダなどは皆プロテスタントです。  そんな中、カトリック教徒が多いフランスは経済発展しており、 EUでも中心的存在。私は長年それが不思議だったのですが、フランス革命に代表される〝革新の精神〟がイノベーションをもたらし、経済発展を生んだ一因であるとの仮説をもっています。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「さて、これほどまでに音楽に秀でているドイツですが、「ドイツの絵画というと、あまり名前が出てこない」という声はよく聞かれます。  数多くのカトリックらしい宗教画や王侯貴族の肖像画が描かれましたが、音楽と比べると存在感が薄い。それにも宗教が大きく影響しています。   16世紀、宗教改革を起こしたマルティン・ルターは神聖ローマ帝国・ザクセン出身。神学校で学んだ熱心なカトリックの司祭でした。長らく権力を握った組織が腐敗するのは古今東西、変わらないようで、当時のカトリック上層部は「罪を犯しても、この贖宥状を買えばチャラにしますよ。ただ、ものすご ~く高いですけどね」という具合に、不透明な資金調達法や不正がまかり通っていました。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「さて、これほどまでに音楽に秀でているドイツですが、「ドイツの絵画というと、あまり名前が出てこない」という声はよく聞かれます。  数多くのカトリックらしい宗教画や王侯貴族の肖像画が描かれましたが、音楽と比べると存在感が薄い。それにも宗教が大きく影響しています。   16世紀、宗教改革を起こしたマルティン・ルターは神聖ローマ帝国・ザクセン出身。神学校で学んだ熱心なカトリックの司祭でした。長らく権力を握った組織が腐敗するのは古今東西、変わらないようで、当時のカトリック上層部は「罪を犯しても、この贖宥状を買えばチャラにしますよ。ただ、ものすご ~く高いですけどね」という具合に、不透明な資金調達法や不正がまかり通っていました。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「オランダを代表するアーティストのヨハネス・フェルメールは、市民社会を体現する存在です。色彩の美しさや独自の光の捉え方、緻密な描写は評価が高く、秦新二さんの巧みなプロデュースもあって、特に日本では大人気です。  北方のモナ・リザと言われる〈真珠の耳飾りの少女〉のように「フェルメール =女性像」のイメージが強いものの、宗教画も描いていることにも注意が必要です。プロテスタント国家になっても、宗教画は重要なモチーフとして残りました。  フェルメールの実家は宿屋を営むプロテスタントですが、妻のカタリーナの実家はカトリック。そのためカタリーナの親から結婚を反対され、フェルメール自身、カトリックとプロテスタントの間で苦悩することもあったようです。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「「大国は国内マーケットが大きいゆえに内向き思考になるが、小国は外でビジネスをしなければ立ちゆかないので、外向き思考になる。ゆえに小国のほうがグローバル志向になる」  これは私の仮説で、オランダ、ベルギー、スイス、韓国などが例としてあげられます。  仮に大国であるフランスで起業するとしたら、フランス社会に溶け込み、フランス文化を理解することが必須で、それはドイツも同じです。  オランダにもオランダ文化はありますが、小ささゆえに他文化も受け入れ、ダイバーシティも広がりやすい土壌がある。ビジネスでつき合いがあるオランダ人はそう多くありませんが、当たり前に英語で話せますし、いい意味で国としての個性を主張しすぎないフラットさを感じます。  さらにオランダの強みは、フェルメールにもみてとれる先見性。 2001年に世界で初めて同性婚を認め、安楽死も 2002年から合法です。「脱成長」を提唱する経済学者も登場し、「大きいことはいいことだ」「成長することが目的」という考え方が絶対でなくなっている昨今、「フェルメールの絵は美しい!」と感動に浸るのもいいのですが、先見性からくるダイバーシティを、美しいアートから考えてみてはどうでしょう。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「アングロサクソン系の人々はクリティカルシンキング(批判的思考)が得意なように感じることが多いのですが、ホガースのシニカルさは、イギリス人を理解するうえで参考になるように思います。  ……とまあ、このように書くと教科書的で美しいのですが、イタリアやフランスに比べると、イギリスの絵画はあまり強くありません。シェイクスピアという天才の出現で、文学と演劇が急激に発展したこともあり、アートの情熱はそちらへ向かったように感じます。  それでもイギリスを象徴する画風はあり、代表的なのは 19世紀のロマン主義のコンスタブルとターナー。 1歳違いのアーティストは、いずれもイギリスの田園地帯を好んで描いています。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「美術史的な解釈は専門家に譲るとして、私には抽象絵画を生んだ背景に、ロシアという国の民族的・宗教的な複雑さがあるように思えます。  ロシアは実に不思議な国です。ヨーロッパのようでヨーロッパではない、少なくとも西ヨーロッパとは大きく違う──これは地理的にヨーロッパの強国から遠いこと以上に、カトリックでもプロテスタントでもないという点も大きく影響しています。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「しかし村を出れば話は別で、シャガールはサンクトペテルブルクの美術学校に進学することも難しかったほど。当時の帝政ロシアでは、ユダヤ人の移動や就学が制限されていたためです。  シャガールの才能は、その後移り住んだパリで開花しますが、第二次世界大戦でナチスの脅威が高まると、今度はアメリカに逃れることになります。つまり、ユダヤ民族のアイデンティティと苦しみは「聖書にある物語」ではなく、彼自身の人生でもあるのです。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「 シャガールはフランスに定住して生涯を終えますが、どこに住もうとユダヤ人としてのアイデンティティを守り続けました。  シャガールの絵画には、東ヨーロッパからロシアのユダヤ人に特徴的なハシディズムの影響が見られると思います。ハシディズムは、瞑想的実践や個人的な宗教体験を重視するユダヤ教の神秘主義的な運動です。シャガールの魅力は、このような神秘主義的な要素に、ロシア的な複雑性がブレンドされたことにあると感じます。  虐げられる社会で、人類愛をもち続けられるのか?  少数派への差別や災害時の陰謀論はなぜ起こるのか?  シャガールの世界に浸りつつ、現在の社会情勢を交えて考えてみてもいいのではないでしょうか。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「 ではなぜ、ユダヤ教徒の中に評価されるアーティストが多いのでしょうか?  私の仮説は次の 3点です。 1  差別される屈辱がアートに昇華した  ユダヤ人はヨーロッパで圧倒的に少数派であり、政治家や官僚など、国のメインストリームで地位を得ることは難しかった。だからこそ、ビジネスや金融、科学やアートなど、自らの才覚で人生を切り拓こうとしたのでしょう。苦境はアートをつくる〝素材〟でもあります。 2  「常に新しいことを学びなさい」という「タルムード」の教え  宗教にはそれぞれ聖典がありますが、ユダヤ教徒が守るべき規範の一つとされる「タルムード」はユダヤ教徒の信仰のもとになっていて、他の宗教の聖典に比べて成功や繁栄につながる内容が多くあります。たとえば「常に新しいことを学びなさい」という教えが、 2000年以上も前から示されているのですから驚きますし、他の宗教にあまりない特徴と言っていいでしょう。  新たな学びは独創性にもつながりやすく、アートの本質的要素を古代から説いていると言えます。 3  完全に仕事をしない安息日の存在  ユダヤ教徒は、金曜日の夕方から 24時間は働くことを禁じられています。家族や友人とゆっくりと過ごす時間的・精神的余裕が芸術を生む土壌をつくったのではないかと考えられます。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「19世紀から 20世紀に「新しく独創的なものこそ素晴らしい」と考え、歴史を振り返っても誰も試みていない表現を模索した近代アーティストたちは、「前衛(アバンギャルド)」と呼ばれました。  確かに印象派は、西洋アートの常識からすればあり得ないほど画期的でしたし、ピカソやブラックのキュビズム、マティスやドランのフォービズムは、いまだかつてないものでした。  しかし「新しいもの」とは、果たしてゼロから生まれるのでしょうか?  前述の経済学者シュンペーターは、イノベーションについて「新結合」という理論を発表しました。「かつて組み合わせたことのない要素と要素を組み合わせると、まったく新しいものが生まれる」  この定義は、アートにも当てはまると思います。つまりアートは複数の文化が混ざり合うことで、新しいステージに入っていくということです。  たとえば印象派は、浮世絵の要素を取り入れています。 1867年のパリ万博に出品された葛飾北斎らの浮世絵は何もかもが「新しいもの」で、ジャポニズムブームを巻き起こしました。  独特な色彩、白く平板なつるりとした顔、遠くにあるはずなのに胸に迫るほど大きく描かれた富士の山……明暗法にも遠近法にもとらわれていない作品は、当時のヨーロッパのアーティストに衝撃をもたらしました。「最近開国した東洋のはずれの国には、こんなにも変わった絵があるとは!」」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「18世紀までのヨーロッパの人々はアフリカのアートを知らない、または知っていても、その価値を理解できなかっただけで、そこには計り知れない魅力がありました。  すべての色は光の屈折ですから、その土地の光によって色彩感覚が違うのは当然と言えば当然です。ヨーロッパの淡い色彩もアジアの温かい色彩も、光によるものです。  強い光を浴びるアフリカの色は、くっきりとした原色。その独特の色使いに、ヨーロッパのアーティストは魅了されたに違いありません。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「第二に、せっかく返還されても、アフリカやアジアの博物館では適切な管理ができないケースが多いこと。貴重な美術品を損ねないための温度や湿度の調整には専門知識をもった人材と設備が必要ですし、紛争が頻発している国では、アートの展示すら難しい。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「日常的に「盛り上がったら踊る」というシーンは日本にはあまりありません。  アフリカはダンスが盛んで、毎年開催されるウガンダの「 Nyege Nyege Festival」は、音楽とダンスの一大フェスティバルです。コロナ禍で制限をかけた 2022年でさえ 1万 5000人が詰めかけました。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著


    「政治的に自由が抑圧されていることが多いアフリカでは、そのエネルギーがアートに昇華しているのです。お友だちや世襲の馴れ合いで行われる政治、既得権益にご満悦の高官、上がらない賃金と不十分なインフラ。国民の鬱屈は溜まる一方で、誤解を恐れずに言うと、その不満解消の方法の一つがダンスである気もするのです。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「ちなみに今では巨匠となっているマティスやドランも、そのあまりに強烈な色彩と大胆な構図ゆえに当時のフランスの価値観から大きくはみ出し、著名な批評家に「まるで野獣(フォーブ)の檻にいるみたいだ!」と貶されたことで、フォービズムの名がつきました。  歴史に ifはありません。しかし、新しいものを貪欲に受け入れる自由の国・アメリカが存在しなかったら、印象派もフォービズムも埋もれてしまっていたかもしれないのです。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「そんなアメリカを象徴するアートだと私が感じるのは、 19世紀のフランスの画家ジャン =フランソワ・ミレーの作品です。日本でも人気があり、美術に詳しくない人でも〈落穂拾い〉や〈晩鐘〉、〈種をまく人〉(口絵 14ページ参照)といった作品は知っているでしょう。  ところが勤勉な農民というテーマは、「労働は苦難だ」と捉える傾向があるカトリックには意外と馴染まず、当時のフランスではあまり評価されませんでした。  一方のアメリカでは、ミレーは高い評価をもって受け入れられました。なぜならプロテスタントにとって労働や勤勉は苦痛ではなく美徳であり、プロテスタントの理想で建国されたアメリカにマッチしたためというのが私の見立てです。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「 超がつく著名世界的アーティストであるロスコの作品は、私たちが感じる現代アートのイメージそのもの。それでも「訳がわからない」と決めつけずに、ぜひ思索のツールとして向き合ってみましょう。なぜならロスコは、ニーチェやフロイト、神話や原始宗教に傾倒し、人間の感情と思考を模索し続けたアーティスト。タルムードを学んだユダヤ人でもあります。  私は、現代アートの美術館でロスコの絵があると、飛んで行くくらい心酔しています。  その絵を前にしていると、宇宙の真理に触れるように感じ、自分がまるで神秘体験をしている感覚になります。現代アートの抽象性のため、かえって本質的なものにつながることもあるのかもしれません。  ロスコは貧しい移民として育ち、政治に関心があった父の影響で労働者の権利にも意識的。それゆえにお坊ちゃんの多いイェール大学に進学し格差社会を感じ、奨学金を打ち切られたことで法律家からアーティストへと進路を変えました。  そんな彼が何を訴えようとしていたか。その作品からは具体的でないからこそ自由なイメージが喚起されて、ありとあらゆる問いが浮かんできます。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著


    「その作品からは具体的でないからこそ自由なイメージが喚起されて、ありとあらゆる問いが浮かんできます。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「また、ウォーホルは 20代の頃からゲイであることも公表しており、性的マイノリティに対する差別や偏見にも強い問題意識をもっていました。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「アメリカの人種差別を扱ったアートは多岐にわたりますが、私がぜひ取り上げたいのは、和歌山県太地町出身の日本人アーティスト、石垣栄太郎による〈リンチ〉(口絵 15ページ参照)です。 1909年、石垣は先に移住していた父を追ってアメリカへ。わずか 15歳の彼がそこで体験したのは、壮絶な人種差別でした。  アメリカで生まれ育ったのに、ただ黒人であるというだけで暴行されることが日常茶飯事。英語が話せないまま移住してきた黄色人種という石垣は、自身の差別体験と相まって、多くの疑問を抱いたことでしょう。  石垣の出身である太地町の太地町立石垣記念館に足を運んだ際、人種差別に関する多くの作品が展示されていて、言葉では伝わらない人種差別のおぞましさが迫ってくるようでした。  リンチという目を伏せたくなるシーンもアートという形で提示されているため、正面から向き合い、反省をうながすことができる。アートがもつ深淵なパワーを感じました。  東京国立近代美術館所蔵の〈リンチ〉に描かれているのは、夜の闇の中、殴る蹴るのリンチを受けている黒人と、悪びれる様子すら見せない白人。人種差別の非人道性が余すところなく炙り出されます。  この作品は、私たちにある問いを投げかけます。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「また、アカデミーや美術学校、アート集団で学んだ人だけがアーティストではないというのも、忘れてはならない視点です。たとえばオーストラリアも先住民が大きな役割を果たしてきた国ですが、先住民アートを代表するエミリー・カーメ・ウングワレーは 70歳を過ぎてから絵を描き始めました。彼女は美術教育を受けたことはないようですが、生涯で 3000点以上の作品を残しています。  ダイバーシティとインクルージョン(包摂)の社会をつくるためには、過去のやり方にとらわれない新しい視点が必要です。しかし、過去の過ちを認め、責任の所在を明確にして反省しないと、未来は変わりません。  これからの時代は世界中の普通に暮らしている人々から、新しいアートが生まれてくるのかもしれません。特に情報化社会の今は、スマートフォン一つで画法を学ぶことも、作品を海の反対側にまで発表することもできます。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「パブリックアートが格差社会を変える?「ラテンアメリカって治安が悪いんでしょう?  政治や経済で苦労している国が多そう」  日本ではおそらくこのような声が多数派だとは思いますが、ラテンアメリカを回っていると、アートに溢れた国だと感じます。それはラテンアメリカ、特にメキシコに多いストリートアートが醸し出す雰囲気でしょう。あちらの壁にもこちらの壁にも、初期のバスキアやオスジェメオスのようなグラフィティ・アートが描かれていますし、バンクシー顔負けのハッとするような作品も見つかります。  壁に描くのは、貧しい人でも鑑賞できるから。言うまでもなく、美術館に行くにはお金がかかり、貧しい庶民にそんな余裕はありません。  アートは一部の富裕層のものではなく、むしろ日々厳しい生活をしている貧困層にこそ、アートによる癒しが必要です。それなのに、アートを見るにはお金がかかる!  日本でも美術館の企画展は 2000円ほど。ビジネスパーソンなら「投資として安い」と感じられても、さまざまな事情から「 2000円も出すなら別のことに使いたい」と思う人はいるはずです。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著


    「世界 97カ国を訪問した中で、私が「多様だなぁ」と実感するのがインドです。  インドがアジアだと考えられているのは、仏教というアジアを代表する宗教の発祥地であり、その後ヒンドゥー教文化という非キリスト教文化を生んだからでしょう。  しかし、言語的にも血統的にも、中国など他のアジア系よりもヨーロッパ系に近く、特に北部にはヨーロッパ系のように見える人も多くいます。「インド系の活躍」というと、シリコンバレーの IT系の人たちを連想します。確かにそのとおりで、グーグルやマイクロソフトの CEOを輩出していますが、言語も宗教も多様なインドは多文化共生社会への適応力も高いと言われ、国際政治の中でも注目される存在です。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著


    「日本のアートを通じて外国の人と会話をするためには、詳しい歴史よりも「アニミズム的な心性が残っており、八百万の神を信じていた」などと多神教的観点から説明できるようにしておきましょう。  これは東アジア全体に言えることですが、花鳥風月が定番のモチーフなのは、近代以前のキリスト教徒には、容易に理解できないほど衝撃的なことでした。  仏教が広がった東アジア一帯では「人間が自然を支配する」というキリスト教的発想がなかったゆえに、ヒト・モノ・自然の調和が尊重されました。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著


    「国際的な演劇祭が行われる南フランスのアヴィニョンの人口はおよそ 9万人、国際映画祭が行われるカンヌの人口は 8万人程度ですが、人が少ないから街全体が盛り上がりますし、街全体が盛り上がるから世界中から人を集めるパワーが生まれます。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「 私が小学生だったときの趣味は、地球儀や世界地図を眺めることでした。世界の国や首都の名前を覚えることが好きで、「日本の裏側にあるブラジルってどんな国だろう」「ケニアでサファリをしたいな」と、まだ行ったことがない世界の国々について想像を巡らせることが何よりも楽しかったのです。  同時に、世界には戦争や紛争、貧困や差別があることも知りました。中学・高校で歴史や地理を本格的に学ぶようになり、世界の国々に対する関心と問題意識は高まる一方でした。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「 美術館の企画展が注目されることが多いのですが、実際には常設展の素晴らしさが見過ごされていることがあります。  たとえば、国立西洋美術館の常設展は、西洋美術の歴史を学ぶうえで最適ですし、アジアにおける西洋美術の常設展示として最高レベルです。一度は常設展にも足を運んでみてください。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著

    「美術館訪問後は、頭がアートモードになります。このときを利用しない手はありません。  美術館で関連する書籍を購入し、帰りの電車などで一気に読むことで、驚くほど理解が深まり、新しい発見があります。ぜひ試してみてください。」

    —『「アート」を知ると「世界」が読める (幻冬舎新書)』山中俊之著





    0
    2026年09月18日

    Posted by ブクログ

    アートを知ると世界が読める、まず自分自身がなぜアートと距離があるのか?の問いに対して、著者の仮説が学びになった。日本人がアートが特別なものとして切り離されてしまった理由は、「哲学が抜け落ちているため」というもの。アートを楽しむために、教養を身に付けたい。

    0
    2025年01月11日

    Posted by ブクログ

    アートとビジネスが紐づくという話の部分をもう少し沢山聞きたかったが…全般としては世界のアートは歴史.特に、民族問題と大きく相関関係があるということを説いている。

    個人的に大学でアートの歴史を学んでいたので、良い復習となり、少し遠のいてしまっていたアートの世界にまた足を踏み入れたいと思った。

    0
    2025年02月15日

    Posted by ブクログ

    著者が言うようにアートに関して誤解していた。アートは感じるもの、上手な人のものと思っていた。そのため興味はあったけど難しく考えてしまって近寄りがたい存在だった。しかし、「アートは思考を促すもの」と全く違う視点から見ると身近に感じられ入りやすい。美術館に行ってみようと思う。
    あと、勝手にアートは過去のものと決めつけていたが、現代アートの奥深さにも興味を持った。

    0
    2024年04月14日

    Posted by ブクログ

    Audibleで聴読。
    アートの背景から、社会背景、政治、歴史を教養的に学ぶことができる内容だった。
    アートは、知識のクイズになってしまっていたと反省した。タイトルや画家の名前を知っていることで満足してしまっていたので、作品が伝えようとしている社会メッセージや背景を感じることが疎かになってしまったことに気づいた。今後は、作品をじっくり鑑賞して、自分の言葉で感じたことを表現できるようになりたいと思った。

    0
    2025年10月16日

    Posted by ブクログ

    アートは哲学と深く結び付いており、その時代背景が反映されている。その歴史・宗教・民族性について一定の教養を身につけた上で、自分なりの問いを持ってアートに向き合うことで、思考の訓練となる。アートを通して問いを抽出し思考することで、VUCAの時代に必要となる自分なりの答えを出す力を養うことは、哲学の教育がない日本人にとってより重要になると思う。
    元外交官で美術系大学教授である筆者が、これまでの経験から感じたことや理解したことを基に、世界各国のアートを素材として、激動の世界を様々な観点から考察するための最低限の知識を提供してくれる1冊。

    0
    2025年10月04日

    Posted by ブクログ

    冒頭はちょっと教訓めいた(知識の押しつけ)感じ。
    途中からそれなりの内容だが、欧米人の見解が正しいというスタンスが見えることに不快感。
    ユダヤの話、ロシア、アフリカなど歴史的背景。
    ただ、いずれも欧米がかつて行ったことの後始末。
    たとえばアフリカに近年台頭している中国などへの対抗からかつて奪取したアート作品を変換する動きに。決して良心からではない、計算ずく。
    日本、香川の直島がアートの島になったのは福武総一郎氏、安藤忠雄氏の尽力によるもの。

    0
    2025年02月26日

    Posted by ブクログ

    2025.02.18 タイトル通り、世界情勢や歴史とアートの関係性を理解した上で、一部の作品を見ることができた。アートはやはり奥が深くて面白い。

    0
    2025年02月18日

    Posted by ブクログ

    ヨーロッパを起点としたアートの歴史を、宗教や歴史、それぞれの国の文化、国民性を絡めて、現代のアートまでの道程を分かりやすく解説した一冊。

    0
    2024年12月26日

    Posted by ブクログ

    アートの3つの効用
     コミュニケーションツール 心を動かす 思考をうながす

    時代が激変するときには一つの専門では追いつけない
    ヨーロッパの感性は教育で育まれる、日本人は生まれながら自然を愛でる感性
    アートは感じて考えるもの

    カトリック教会が音楽や絵画を用いて教えを広めた
     ギリシャ彫刻  オペラとイタリア語 母音で終わり伸ばせ音楽に向く
    プロテスタントのドイツ、イギリスは偶像崇拝を禁止 画家や彫刻家が少ない
    シェークスピアが文学から演劇を チャイコフスキーが音楽からバレエを

    直島(瀬戸内国際芸術祭)と妻有(大地の芸術祭)
     日本がアートのプラットフォームに
     

    0
    2024年11月02日

「アート」を知ると「世界」が読める の詳細情報

閲覧環境

  • 【閲覧できる環境】
  • ・ブックライブ for Windows PC(アプリ)
  • ・ブックライブ for iOS(アプリ)
  • ・ブックライブ for Android(アプリ)
  • ・ブックライブ PLUS for Android(アプリ)
  • ・ブラウザビューア

※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。

この本をチェックした人は、こんな本もチェックしています

幻冬舎新書 の最新刊

無料で読める 趣味・実用

趣味・実用 ランキング

山中俊之 のこれもおすすめ

同じジャンルの本を探す