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いくら追い求めても、美への欲望には果てがない。私達は美しくなりたいというだけでなく「美しいものを見ていたい」という欲望も併せ持っている。
主人公のりりこもその一人。大人気モデルの彼女の身体はほとんどが無理な全身整形によるものだった。やがて整形の副作用により精神を蝕まれたりりこを中心に、美に憑かれた人々は大きな事件を巻き起こす。
ストーリーだけでなく、各所にちらばる幻想的な隠喩も見所だ。例えばりりこの夢の中に、現実世界でりりこを追う麻田検事が登場し「ぼくときみは前世である神父の同じ帽子の羽だった」と声をかける。そしてラスト、麻田は空から降った鳥の羽を見上げて手をかざす。これは2人がまた再び出会う運命にあることの暗示である(と勝手に解釈している)。
『ヘルタースケルター』は未完だが、「未完の完成作」でもある。この世に美への欲望が溢れる限り、物語は続くだろう。