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一線を越えた、妖しい恋が始まる! フローベール、ボードレールらに愛された「文学の魔術師」ゴーティエによる官能の奇譚集。聖職者としての人生が始まる瞬間に絶世の美女の悪魔に見初められた男を描く「死霊の恋」、人妻に片思いする青年がインドの秘術を使ってその夫の肉体を乗っ取ろうと企てる「化身」、火山が残した乳房の型への恋心が青年を滅びたはずのポンペイの町に迷い込ませる「アッリア・マルケッラ」の3篇を収録。
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Posted by ブクログ
ゴーティエの傑作幻想譚を三篇収録。「死霊の恋」は聖職者としての人生が始まる瞬間、悪魔的な美女に見初められる話。聖職者としての清貧でつまらない生活と、美女と享楽に溺れる快楽的な生活という二重生活が次第に彼を蝕んでいきます。官能と美が混じり合う素晴らしい作品でした。
新訳版テオフィル・ゴーティエの「死霊の恋/化身 ゴーティエ恋愛奇譚集」。「死霊の恋」「化身」「アッリア・マルケッラ」の3編を収録する。19世紀フランス幻想文学の雄ゴーティエは名作「死霊の恋」を新訳が出るたびに読んでいる気がする。それくらい好きだ。芥川龍之介の翻訳が最初だったか、岡本綺堂や田辺貞之助、...続きを読む青柳瑞穂版もあった。幻想と恋愛の融合がゴーティエの真骨頂である。「死霊の恋」は以前も書いたので、ここでは中編「化身」の話を。 伯爵夫人に恋をした青年がインドの秘術を使って夫人の夫の魂と入れ替えてその身体を乗っ取る話だ。洋の東西を問わず怪しげな魔術はインドに限りますね。芥川龍之介の「魔術」か谷崎の「魔術師」のような世界観で、尾道三部作の「転校生」以来日本でもすっかり定着した設定が進む。しかし夫人にはっきり断られた青年はその気持を理解するが治らないのが恋の病。その狂おしい気持が巧みに描かれる。そしてインド帰りの医師による悪魔の囁き。とは言うものの魂を入れ替えてもこの恋は成就しない。そこで絶望した青年は冷静になって、身体を乗っ取られた伯爵に再度の『とりかえばや』を提案する。ゴーティエはそこでまたラストをひねり、三方良しの結末を与える。 もうひとつ「アッリア・マルケッラ」は時を超えた恋の話である。「トムは真夜中の庭で」やマシスンの「ある日どこかで」のようなタイムトラベルラブストーリーになっている。あくまで幻想怪奇譚なのでロマンチックではないが、叶わぬ恋はゴーティエの定番なのである。
幻想小説はホフマンとゴーティエがお気に入り。 前者は現実との境目が曖昧な幻想世界を描くのが抜群に上手く、さながら今流行りの拡張現実のよう。 後者は描写が緻密(特に女性の)で、文章そのものに豪華絢爛な印象を受ける。 この本では特に『化身』が面白かった。
官能的で美しい文章。 ちょいファンタジーもありつつ、恋に悩み苦しむ心情はとてもリアル。他の作品も読んでみたくなった。
幻想奇譚と言えば良いのだろうか、本書に収録されているのは、理想的な美を体現する女性と、彼女たちへ猛烈な恋情を抱いてしまった男たちの悲劇的な思いを、豪華絢爛たる文章に乗せて描いた作品である。 〇『死霊の恋』~高級娼婦クラリモンドと司祭ロミュアルド クラリモンドは吸血鬼で、最後には聖水をかけられ朽...続きを読むち果ててしまうのだが、ロミュアルドは一緒に暮らした生活を思いきれないまま一生を過ごすことになる。 〇『アッリラ・マルケッラ』~アッリラ・マルケッラとオクタヴィア ナポリの考古学博物館で、オクタヴィアンはポンペイから出土した美しい乳房の丸みと脇腹のくびれを持つ灰の塊に心を奪われる。友人たちと共にポンペイに着いたオクタヴィアンは、その夜一人廃墟を歩いていたのだが、いつの間にかそこは噴火前のポンペイの街になっていた。そして劇場であの女性に出会い、彼女の家に招かれたのだが… 〇『化身』~プラスコヴィ・ラビンスカ伯爵夫人とオクターヴ 夫人を一目見て恋に落ちたオクターブだったが、貞節な夫人はオクターヴの思いをきっぱりはねつける。悲嘆にくれるオクターヴに、インドで修業をしてきたバルタザール医師は、秘術を使ってオクターヴと夫人の夫の魂と肉体とを入れ替えることを提案する。夫の体に入ったオクターヴは夫人に言い寄ろうとするのだが、…。 ストーリーもさることながら、人物の容貌やその衣裳、宝飾品、住まいの館の構造、居室や化粧部屋、食堂など部屋部屋の様相、調度品の絵画やタピスリー、絨毯その他の様々な品物の描写が、とても豪華に細かく描写されていて、小説を読む面白さはこういうところにあるのだなあと感じ入った。
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死霊の恋/化身~ゴーティエ恋愛奇譚集~
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