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平凡なサラリーマンだった浅見克則は、はずみで傷害事件を起こしてしまう。判決は懲役一年。だが、試行段階の「消失刑」を選べば刑期が短縮され、自宅で過ごせるという。ただし、特殊なリングの装着で周囲から“見えない”存在となり、人との交流は完全に禁じられる。深く考えず選択した彼に押し寄せる過酷な運命――絶望的な状況の中、彼が見出した一筋の希望とは?(『ボクハ・ココニ・イマス 消失刑』改題)
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Posted by ブクログ
「孤独が好き」と言うひとはたまにいます。人生の中で何度か、私も言ったことがあるように思います。ただそれは、『本当の孤独』を経験していないからこそ口にすることができる言葉なのかもしれないなぁ、と感じる時もあったりします。『本当の孤独』とは、たとえば本書の主人公である浅見克則のように。 熊本にある日...続きを読む用品雑貨の卸問屋で平凡なサラリーマン生活を送っていた浅見克則は、職場で出会った女性に誘われた際、彼女と彼女の前の彼氏の間のトラブルに遭遇し、仲裁に入ったことがきっかけで、傷害事件を起こしてしまう。相手の男性を植物状態にしてしまった自らの行いを悔い、控訴もせず、懲役一年の実刑判決を受け、真摯に罪と向かい合おうとする克則に弁護士は、近年、試験的にはじまった『消失刑』を提案する。刑期が短縮される、という『消失刑』。行動の自由が与えられる代わりに、他者から自身の存在をまったく認知できなくなるリングを首に嵌め、誰との会話も許されない。そして克則が味わうのは絶望的なまでの孤独だった。 誰とも『出会えない』『話せない』、そんなコミュニケーションをまったく取れない絶望の中で、克則は他者とコミュニケーションを取らないといけなくなってくる場面に遭遇します。これは結末に触れることなので詳しくは言えないのですが、重大な事件に巻き込まれる中で、顔も知らない大切なひとを守りたい、と無垢なほど一途な想いに突き動かされて。読み終わった後、愛おしさが胸に広がる、とても素敵な作品でした。
自分の存在が他人からは認知されないという「消失刑」 想像しただけでも寂しく、怖いので、最後まで読めるか自信がなかった。 でも、どんどん読めて面白かった。
些細なことで傷害事件を犯してしまった浅見克則は懲役1年の判決を受ける。しかし、試行段階の『消失刑』を選べば刑期は短縮され自宅で過ごせるという。ただし特殊なリングを装着して他人からは“見えない”存在となり、人との交流は完全に禁じられる。深く考えずに『消失刑』を選んだ浅見に押し寄せる過酷な運命とは…。 ...続きを読む “何かを受け入れることによってもたらされる過酷な運命“。その時、人はどう生きるべきか…という命題を嫌でも考えずにいられなくなる。梶尾真治の作品に共通する視点だと思います。「どんなに孤独が好きな人でもここまでの状況になったら…」と考えると胸が苦しくなりました。 【余談】 本書は光文社文庫2023年7月20日初版。裏表紙折り返しには光文社文庫既刊の梶尾真治作品全8作品名が載っている(全作持ってる)が、近隣、何なら県内の書店では全く見かけない。本書は横浜の新刊書店で偶然見つけた。そもそも本書が昨年刊行されていたことすら知らなかった。私が住む県内の書店では、光文社古典新訳文庫は置いてあっても光文社文庫は置いていない本屋がほとんど。でも、“新刊書情報”は割とこまめにチェックしているつもりなんだけどなぁ。それでも気付けない情報格差ってあるんですね。大都市に住む人にはやはりアドバンテージが大きいと感じた出来事でした。
懲役一年の代わりとして『消失刑』を受けることになった克則。試験的に実施とは言え、お役所仕事らしく穴だらけ…穴に落ちた時の救済策が用意されていないのも、あり得そう。
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梶尾真治
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