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生物の進化のメカニズムは、自然淘汰のなかで自らが生き残り、子孫を残して遺伝子をつなぐという「利己的」な動機に基づいて説明されることが多い。だとすれば、多くの種で観察される「利他的」な行動は、どのように説明すればよいのだろうか? 本書は、植物学者と動物学者がタッグを組み、その謎の答えに迫る。カギとなるのは「共生」という戦略である。互いの強みを融合し、欠点を補い合いながら自然淘汰に打ち克った生物たちのドラマをお届けする。
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Posted by ブクログ
「利他」の生物学というタイトルですが、 「共生」の生物学というほうが、しっくりします。 あとがきにも、筆者の2人は「進化と共生」を主題にしたとあります。 ミトコンドリアや葉緑体は、元々は別の細菌だったのを共生によって上手くとりこんだということです。 人間の腸内や皮膚の表面にはたくさんの菌が住み着いて...続きを読むいて、人間も菌も上手く暮らしているということです。
生物の共存にも多種多様なものがあり、決して利他的行動が全てではなく利己的な関係も存在することを知った。異なった生物が利用し合うためにイタチごっこのような進化を果たしてきたと考えると面白い。
とても楽しい。生物の共生について、利他、利己という見方を参照しながら学んでいく。これらのキーワードが傍らにあるおかげで、人の社会について客観的な視点で振り返りながら生物を学ぶという貴重な体験になっている。高校生以上におすすめ。 最後に人と腸内細菌の共生の例があるが、著者が生物学者なので若干用語の使用...続きを読む法(「免疫力」「体にいい」など)に誤解を招きかねないところがあるのは要注意。
自分を犠牲にして他人のために行動することを「利他的行動」、その逆に自分自身のために行動することを「利己的行動」と言う。周囲の人達を見ていると、自分勝手だとか、われ先にと自分優先な人が多い一方で、他人を喜ばせようと一所懸命になって疲れてしまっている様な人もたまに見かける。人間社会はそうした利他的、利己...続きを読む的な人の割合は概ね7対3の割合がうまく行くそうだ。他人を助けようとする利他的な人ばかりの方が、より助け合って幸せな社会が気づけそうではあるが、利己的な人が3割もいた方が良いとはどういう事だろうか。もし全員が利他的で他人との「競争」よりも「共生」を選択するなら、その社会の発展のスピードはゆっくりになる。一部でも「競争」を勝ち抜こうとする人(人を出し抜く様な人)がいるからこそ、科学技術が進歩し社会全体の進歩が先導されてきたのが現在の社会である。そうした人は多くの富も得ているから、法に基づき多額の税を納め、社会に「強制」的に還元されていくように社会は上手く出来ている。 本書はミトコンドリアと葉緑体の細胞内(ある意味最小単位の社会)共生に始まり、動物や植物の菌や昆虫との共生や、人と細菌の共生についてわかりやすく解説している。一見すると互いに自己に不足する要素を他者に供給し合う利他的な行動に見えて、実は互いに自己の生存を最優先に考えた利己的な行動の連鎖であるという話は非常にわかりやすい。確かに生物の究極の目的は自己の生存と繁栄であり、種を絶滅させてでも他者を生かすという戦略はあり得ない。一部高度な知能を持つ人間が、例えば太平洋戦争時の特攻隊の様に、国に自分の命を捧げるという考え・境地に至ったとしても、それは愛する祖国に住む同じ日本人を生かす=自身の国の繁栄という地球規模で見た時の利己的な行動とも言えそうだ(決して自分勝手と言っているわけではない)。 人類にしてみても、そうした利己的な行動の連鎖が利他的な結果を生み出しているケースが多くあり、動植物、菌のレベルまで拡大すればとても一冊の本では描ききれないほどの共生が存在する。本書はそうした中から、細胞レベル、菌、植物、昆虫、動物、そして人と代表的な依存関係・共生を例に挙げ解説してくれる。学生時代は生物に興味が無かった自分でも安心して理解できるレベルの記述であり、よく知られた言葉や生物の名前で纏めらへている分、詰まる事なくスイスイ読める。 最近、書店では「利他」という言葉のついた書籍を多く見かける。コロナ禍で誰もが家に閉じこもって鬱々と自分と向き合わざるを得なかった時間も徐々に終息に向かい、人々も街に繰り出してきた。人同士の交流も以前の生活みたいに戻ってくるだろう。そうした時に、コロナでやや利己的になった人々が、他人を気遣い、人に優しく、自己犠牲の精神状態で利他的な行動がとれるか。コロナはそうした神が行う実験・課題の一つだと考えれば、本書を読み終わった自分はギクシャクしながらも多少なりとも、今より利他的に生きていきたい気持ちになれる本である。
「利他」の生物学というタイトルのみの情報で読み始めたので、もっと人間的な気持ちの助け合いの話かと思っていたけど、「共生」についての解説でした。 でも、生物学に詳しくなくても理解できる面白い本でした。 ミトコンドリアや葉緑体を取り込む細胞内共生の話、ウミウシの盗葉緑体、フグの盗毒、口・消化管・肛門を失...続きを読むっている深海動物のチューブワーム、昆虫と植物(花)の戦略、植物と菌の共生、ヒトの腸内フローラの話といった、幅広い内容がわかりやすく記述されています。
共生は利他的なのか。 たまたま利用できたから、便利に使った、という結局利己的な行動が、共生につながった。 餌を与えて依存させる。 だまして使う。 食う食われる以外にも、 使う使われる、という関係がある。
様々な生物は利他的な戦略をとることによって進化し遺伝子を残してきた。人間もまた腸内細菌とWinWinの関係性を築き上げることで進化してきた。相手を思いやることも結果的に自分が生命を産み出し遺伝子を繋ぐことに優位に働いたからこそ、共感能力が発達した。逆にそうでない利己的な人はどんどん衰退していく。それ...続きを読むが悪いとか良いとかは人からみた利益に左右される結果であって進化の歴史は、ただ「そういう風になっている」。 幸せを感じたければビフィズス菌がセロトニン生成に関わっているとのことで、早速ヨーグルトを買ってきた。せっかく生まれてきたのだから腸内細菌と良好な関係を築いて毎日を楽しく生き、周囲の人たちを思いやる余裕を持とう。
生物学において純粋な「利他」は存在するのか、という問題意識を持って、門外漢ながら本書を読みました。「善行は人に知られてはならない」という格言から「後で自分に返ってくるからという利己的目的から他人に利する行為を「利他」と呼べるのか」と考えていました。 「自らの種が生き延びるため」の他の種に利する...続きを読む行動を「利己」と定義するのであれば、その反対の意味での利他的な生物は本書には挙げられていませんでした。 しかし、上の問題意識とは離れますが、「盗毒」という現象・考え方は、細胞内共生や昆虫と植物の関係とは性質の異なる「共生」であると感じました。この現象を初めて知ったということもあり、公共財的な現象があるのかと驚きました。 また、最終章の「人類が利他性という武器を獲得した」というのは大変納得した表現でした。応用生物を履修していなくとも非常にわかりやすい文章でした。
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「利他」の生物学 適者生存を超える進化のドラマ
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