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経済安全保障の最前線! アメリカが中国に突きつけた異次元の半導体規制。このままだと中国の半導体工場はやがて稼働できなくなる。追い詰められた中国が狙うのは、世界のトップ企業、台湾のTSMC――。世界中が半導体製造能力をめぐる競争に駆り立てられているなか、日本は再び失敗を繰り返すのか? 新会社ラピダスのいう、「2027年までに2ナノの最先端半導体をつくる」なんてできっこない!
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Posted by ブクログ
半導体有事 著:湯之上 隆 文春新書 1345 半導体の4つの軸についての解説書です ①半導体をめぐる地政学的状況 ②半導体の種類:半導体とは一種類ではない、 DRAM:メモリ スマホ向け: 自動車向け:パワー半導体&アナログ半導体 AI向け ③半導体の製造方法 ④半導体産業の現...続きを読む状と問題 半導体は、いまや、戦略物資であり、現代の石油である 気になったのは、以下です ① 半導体をめぐる地政学 米国は、中国経由でロシアに流れている兵器へ転用されている半導体の出荷を止めたい このために、中国に対して、半導体規制を発動している ・自身しか作ることのできない最先端の技術をもつ、TSMCが米中どちらにつくかによって、世界のパワーバランスが大きくかわる ・TSMCが米国側についたことにより、5Gで世界を席巻していたファーウェイを押さえ、半導体の歴史におけるターニングポイントになった ・ガードレールといわれる半導体の規制について、米国内で製造を行うメーカーが、中国へ最先端チップ技術への投資を禁じている。 ・トップを走るTSCMへの影響は、10%であるが、SKハイニックスや、サムスンは、中国に工場をもち、40%近くの影響をもっている ・さらに10・7という規制は、スパコンやAIがらみの半導体開発についても、さらに中国を追い込んだ ・半導体の主要工程の製造装置は、日欧米のメーカーが各分野で独占している。 ・中国がこの事態を打破するための、特急券は、台湾に侵攻し、TSMSの技術を奪取することだ ・このため、南シナ海、台湾海峡での軍事的緊張は増している。TSMSの製造拠点は、台湾海峡側に集中しており、たちまち軍事侵攻の影響を受けるからだ ②半導体の種類 ・半導体とは、集積回路上に配置された電子回路のことである ・トランジスタを微細化していくと、他の工夫は何もせず、①高速化、②低消費電力化、③高集積化、④低コスト化の4つの相乗効果が得られる。この経験則を一言であらわしたのが、「半導体集積回路の集積率が2倍になる」という、ムーアの法則である。 一言で半導体といっても、その種類はさまざまだ 自動車がクルマをつくれなくなった原因の半導体 モーターを駆動するために必要な、パワー半導体 センサーからアナログ情報を処理するために必要な、アナログ半導体 が原因だ コネクテッド 自動運転を制御するための AI半導体 5Gの通信制御を行う、通信用半導体 これも必要だ この4種の半導体は、いずれも、TSMCしか生産ができないものであった もともと、カンバンで必要な数量しか頼まない自動車メーカーは、一度オーダをキャンセルしたために、 その穴を埋めるために、TSMCは他の用途に生産ラインを振り分けたが、自動車需要が回復したときには、すでに生産能力を振り分ける ことはできなくなっていたのが原因だ 他、メモリ、MPU,などが半導体の種類である ③半導体の製造方法 半導体は、大きく3つの工程からつくられる 設計、前工程、後工程 である かつて、日本のメーカーは、すべてを垂直統合で作成していたが、他のメーカーとは互換性がない 一方、世界標準は、設計、前工程、後工程を分離し、それぞれ、ファブレス、EDAツールベンダー、ファウンドリー、アセンブリーに分離することにより、開発リスクを分散し、短期間で半導体を設計・製造することができるようになった 日本のメーカーが世界に負けたのは、この世界標準の波に乗り遅れたことが原因だ 【設計】 ファブレスとよばれる設計専門の半導体メーカーが、製品に合わせて、半導体を設計する システム設計 電子製品の仕様をCコードというプログラミング言語に書き出す アーキテクチャー設計 それをソフトウエアとハードウエアに分離する ハードウエアが、集積回路になる 論理設計 1,0の2進法でLSIを記述し、回路設計でトランジスターを配置した回路図に起こす レイアウト設計 回路図をもとに、パタンの原板(レクチル)をつくる また、設計ツール、ECAD,検査ツールなどを提供するベンダーを、EDAツールベンダーという 【前工程】 ファブレスが設計したデータを基に、シリコンウェハの上に、半導体を作り込む、このメーカーをファウンドリーという 成膜 ウエハーを洗浄し、メタル、絶縁膜、多結晶シリコンなどの薄膜を成膜する レジスト塗布 感光性材料であるレジストをウエハに塗布する 感光 レクチルという回路パターンを露光装置で照射する、レジストが化学反応を起こす 現像 現像液をかけて、レジストによる回路パターンが形成される ドライエッチング レジストをマスクとしてプラズマをつかって、薄膜を加工する、酸素プラズマによるレジストの除去作業を行う 洗浄 洗浄後パタンサイズの検査を行う この作業を30回~70回繰り返す ⇒ この段階で、歩留を80%以上得ることは非常に難しくなっている 【後工程】 シリコンウェハの回路について、 後ろから研磨して、 チップを切り出して、 樹脂のパッケージに封入して、 動作テストをする このメーカーをアセンブリ、もしくは、OSATとよぶ ④半導体産業の現状と問題 TSMCを支えているのは、アップルのスマホである、アップルの要請より、TSMCは、3nmという微細技術へ挑戦を続けている そして、それを支えるのが、EUVという露光装置を製造するASMLである。 TSMCと、ASMLは二人三脚で最先端の微細技術を提供しつづけており、他者の追随をゆるしていない また、各工程での製造装置や、そこで利用する原材料、洗浄のための薬品は日米欧がほぼ独占を行っている 最後に 現代社会は、半導体なしにはなりたたない このため、今後人類の文明が発展していくためには、半導体技術の進歩・成長が不可欠である 大きな流れでみると、米中の半導体戦争は、資本主義の発展、発達に反するものであるといわざるをえない 目次 第1章 米国による対中規制と「台湾有事」 第2章 半導体とは何か 第3章 半導体の微細化を独走するTSMC 第4章 クルマ用の半導体不足はいつまで続くのか 第5章 世界半導体製造能力構築競争 第6章 日本の半導体産業はまた失敗を繰り返すのか 第7章 日本の強み 装置は材料は大丈夫か 第8章 半導体と人類の文明 ISBN:9784166613458 出版社:文藝春秋 判型:新書 ページ数:256ページ 定価:950円(本体) 2023年04月20日第1刷発行 2023年05月20日第2刷発行
米中間そして日韓の開発競争、というよりも足の引っ張り合いが、世界の進歩のためには百害あって一利なしと著者は強く警鐘をらならす。2021年の半導体関連素材の韓国への輸出規制は、ブーメランのように帰ってきて、日本の関係産業を衰退させている様が描写されている。
産業のコメと評される半導体。 かつて世界を席巻していた日本の半導体産業も今は昔と思っていた。 ところが日本には世界的に高いシェアを持つ製造装置や材料があると知り望みを感じるとともに、半導体は完全に世界的な分業なのだなと。 本書ではそもそも半導体とは何か、微細化の効果と技術、製造過程やシェアについて分...続きを読むかり易く書かれている。 台湾に出張する事も多く、嫌でもTSMCの話は聞くし同じ九州に進出となれば商売に絡む色気も無くはない。 筆者はそこに大きな警鐘を鳴らす。 日本で作る目的は、ターゲットはどこかがはっきりしない。 ラピダスは何のために2ナノを作ると宣言したのか。技術の継承もないのに。 ファウンドリーは委託してくれる先があって成り立つビジネス、ラピダスに委託する先がどことの報道は記憶にないが。 今や半導体なしでは成り立たない現代社会において様々なリスクが本書で紹介されている。 ロシア、ウクライナにおける希ガスネオンの製造リスク、台湾有事など。 特に台湾有事の際はTSMCの工場は自ら破壊することをアメリカが提案している衝撃。 TSMCがクレイジーなまでの微細化を進めるのはアップルからの要望に答えるため、そしてTSMCが中国に渡りそうになれば破壊せよ、アリゾナに最新の工事を誘致、と結局アメリカファーストなのか。 世界の共有財産として半導体をとらえないと大きな争いのトリガーになる。 半導体を巡る世界的な分断は避けるよう英知を結集して欲しい。
凄い勉強になります。 サプライチェーンが世界中に広がっていて、一国だけではもはや最先端の半導体は作れないこと。 工場を作るからってすぐに最先端の半導体が出来ないこと。 などなど知識が広がりました。
なかなか刺激的な内容だ。自分が開発している材料の一部も半導体産業で代替の効かない部材に使われている。仮に我が社に不幸な出来事が起こって材料を提供できなくなると、TSMCのWO-WLPプロセスが止まってiPhoneのプロセッサが製造できなくなる。TSMCからは間接的に『どうやったらその狭い規格を満足す...続きを読むる製品を供給できるのか?』といわざるを得ない無理難題を要求されていて、本書で書かれている事がリアルに理解できた。ただ装置、材料メーカーに国の支援を入れることは反対だ。著者が最後に書いてあるとおり、自然な再生産のサイクルを破壊する。付いていけない装置材料メーカーは市場から撤退しないと健全な進化が起こらなくなると思う。
2022年に設立された日本の新しい半導体メーカRapidusは、2020年代後半にプロセスルール2nmの半導体の開発・量産を行うとアナウンスされているが、この目標がどれほど大それていて無茶であるか、順を追って説明してくれている。日本の半導体産業がまた失敗を繰り返すであろうことが予測され、残念な現実を...続きを読む見せつけられる。
#切ない #タメになる
半導体3部作②半導体に人生を捧げてきたプロ 日本の凋落期経験からネガティブ 2023年TSMC熊本工場新設も2025年Rapidus工場新設にも悲観的 一度落後した半導体メーカーも国も再起は出来ない →本当にそうか? 「2n」折角の機会、タイミングに挑戦する価値はある そもそも1996年日米半導...続きを読む体協定の米国世界戦略は転換するのではないか? それにしても1955年「ムーアの法則」は世界を変革した
2020/4/20第1刷。著者は日立の研究所などにいたジャーナリスト。半導体の世界情勢が非常に詳しく書かれている。半導体の製造工程などについても詳しく書かれているが、専門外の私には消化不良。 本書を読んで世界でのTSMCの重要性は改めてよくわかった。また1980年代に世界を席巻していた日本の半導...続きを読む体がコンピュータ業界のパラダイムシフトについていけず過剰品質の追及を続けサムソンなどの韓国勢に敗北する事情なども書かれている。イノベーションのジレンマの典型例とのことである。 日本のラピダスについてはミッション・インポッシブルだ等かなり批判的なことが書かれている。その後どうなったのかよくわかってないが、最近ニュースでラピダスは絶好調といったことは聞くので、多分はずしたのだろう。著者は以前、TSMCは日本には来ない、と断言して大外しして嘘つき呼ばわりされたそうである。 著者は日本がDRAMから撤退するときに日立から早期退職勧告を受けたとのこと。半導体技術者というと門外漢の私には華やかなイメージもあるが、なかなか厳しい世界だというのもわかった。
EEtimesに掲載されている湯之上隆のナノフォーカスを中心に、米国による対中規制、台湾有事の可能性、半導体にまつわる世界情勢(製造力、車載用半導体不足)、日本の半導体産業に対する警鐘、日本の強みについてまとめて記載した著書。 10.7規制は、2022に中国SMICが7nmの製造に成功し、米国In...続きを読むtelと同水準の技術力となったことが発端であり、中国の半導体開発に歯止めをかけつつ、米国の半導体製造技術の向上を米国は図っている。 ファウンドリービジネスとは、先に生産委託ありきのビジネスである。アップルがこのようなスペックのアイフォンプロセッサーを1年間に2億個、1個100$で作ってくれと言われて、それだと3nmになる。開発費設備投資しても利益が出ると判断し、クレイジーな開発を始める。お客さんに育てられるという側面が強いビジネスモデルである。 日本の製造装置シェアの高いのは、市場規模の小さいコーターデベロッパーや熱処理装置、CMP装置、洗浄装置などであり、市場の大きい露光、エッチャー、成膜、検査装置関係は欧米企業に負けている。 筆者は、素材や部材では日本がまだ強みを発揮している。特に液体や気体、焼き固めたものは強い。その強みをさらに伸ばすような後押しをしていくべきと説く。 湯之上さんの話は明快でわかりやすく、歯に衣着せぬ言い方で、半導体の情勢をしるにはとても良い本でした。
半導体を微細化するには天文学的な投資と大量の優秀な技術者によるトライ&エラーの積み重ねによってようやく実現できるのに、微細化に取り残されて40nmの半導体しか作れない状況で、一気に2nmの量産化を目指すのは無謀だということがよく解った。 TSMCの依存から脱するためにファウンドリを育てる重要...続きを読む性も理解できるが、せっかく半導体バリューチェーンにおけるチョークポイントを日本の材料メーカーが占めているのだから、彼らの競争力を強化することで日本をバリューチェーンの中で不可欠な地位に固めつつ、ファウンドリはTSMCなりサムソンなりグローバルファウンドリーズなりを誘致する方が持続可能なんじゃないかと思った。 TSMCの熊本誘致(つくばにも研究拠点が出来るらしいが)に税金を投入するのは無駄だというのが筆者の主張だが、これをきっかけに日本の半導体関連企業(特に世界的にも優位性を持つ素材メーカー)が盛り上がることに賭けたいと思う。
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