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“うわさ”が5人を殺したのか?
この村では誰もが、誰かの秘密を知っている。
2013年7月、わずか12人が暮らす山口県の限界集落で、一晩のうちに5人が殺害され、2軒の家が燃やされる事件が発生した。凶行に及んだ男が家のガラス窓に残した貼り紙に書かれてあった「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」。メディアはこぞって「犯行予告」と騒いだが、真相は違った……。
気鋭のノンフィクションライターが、拡散された「うわさ話」を一歩ずつ、ひとつずつ地道に足でつぶし、閉ざされた村を行く。発表のあてもないまま書いた原稿を「note」に投稿したところ思わぬ反響を呼び、書籍化。事件ノンフィクションとしては異色のベストセラーとなり、藤原ヒロシ、武田砂鉄、能町みね子ら各界の著名人からも絶賛の声が上がった。
事件から10年という節目に、新章となる「村のその後」を書き下ろし加筆して文庫化する。
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Posted by ブクログ
田舎では、古い考え方が都心より残りやすい。
それは新しい考え方を持ち込む若い世代がいないということが大きいと思う。
基本的に、人は歳を重ねるほど、その生き方での成功体験から、自分を変えることが難しくなる。
多数の高齢者と少数の若者では、新しい考え方が入る余地はない。
放火魔がいたこと、動物を殺す人がいたこと、酔って人に刃物を突き付ける人がいたこと。
そうしたことに多少、抵抗を感じても、限界集落といわれる少人数のなかでは、別に馴染んでいくことなのかもしれない。
いまは不謹慎だと思うことも、昔はそうだったから、が残っている。
噂話はあっただろう。
閉ざされた社会では、興味関心は内向きになっていく。
でも、噂話と悪口は同質ではない。
一番怖いのは、悪口を言っていると自覚しないまま、悪口を言っている人だ。
悪口とは、その人たちが共有している存在のランキングから、その対象のランクを下げて貶める行為である。
Posted by ブクログ
なんとも言い難い。
フィクションであれば、最後に事件の真相が分かって、動機も分かってスッキリするんだけれど
これはノンフィクション。
一気に読んで、まず思ったのが
よどむ水は濁る、っていう言葉。
あと、精神衰弱や精神喪失者への刑罰の難しさ。
「責任能力」については何をもって判断するか明確に定められていない。
自分が加害者側か、被害者側かでも、思いが変わってくるんだろうな。
印象的だった文章は以下
「根も葉もない、何の根拠もなしに、皆その、誰か一人を叩きあげて悪者にしてしもうた、ちゅうことじゃね。
ここの地域の特性じゃな、これは。
特性ちゅうのは…貧乏人の揃い、ちゅうたら大変失礼じゃけど、ここは、そんなに裕福な人が少なかったために、自分中心にしかものが考えられなかったということじゃな。
ここで生まれたものは皆、自分を中心にしかものを考えんじゃった。自分さえよければ相手はどうなってもいい、という考え方で生活をしてきたから、そういうふうなのが、あっちもこっちも、すべて、やることなすことすべて出ていた。」
Posted by ブクログ
山口県で起きた一夜にして5人の命が奪われた事件のルポ。2013年の事件だから11年経つのか。犯人は死刑判決を受けて勾留中だが、自宅に貼られていた「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」の川柳で今も記憶に残る。当初、村八分にされた犯人が、津山30人殺しよろしく村人を次々襲った事件として報道されたような記憶もあるし、漠然とそう理解していたが、作者の調査によってそれは否定される。確かに村の中ではいじめのようなことや不可解な盗難事件などもあったし、村中噂話は多かったようだが、犯人が村八分にされたというわけではないようだ。犯人が妄想性障害であり、病気の一環としての殺意の芽生えに言及しており、昭和大医学部教授の岩波明医師にまでインタビューしている。心理的な動きを想像を交えて推察するようなことが多い犯罪系のノンフィクションに比べて、ある点からは病気ゆえとしっかり考察している点で、非常に深堀りされて叙述されているのはとても良いと思う。ある意味村民を騙すようなやり方でインタビューしている部分は読んでてやや不快感もあったが、とはいえ、コロナ禍の大変さもあったし、10年は言えないというおじいさんからしっかり話を聞き出したような良い意味での執着心や、育児をしながらの仕事という面も含めて作者の頑張りが実を結んだ本という印象。犯人の愛犬が今でも獣医のもとに保護されていることは特に知ることができてよかった。かわいそうに、御主人様は二度と帰ってこない。犬の写真が切ない。文庫版に寄せた後書きが秀逸。これがあることで嫌味ではない作者の頑張りがわかってそれも個人的には評価高い。
Posted by ブクログ
気になっていたタイトル。
以下、ネタバレ含みます、注意。
山口連続殺人放火事件を追って、限界集落に踏み込む筆者。
残っている村人との会話から、見えてくる男の背景とは……。
「真相」を冠した章があって、どんな内容が語られるかとドキドキしたのだけど。
読み終わって、色々考えさせられることがある。
それぞれの人の主観の中で事件は語られていくんだなぁというのが、最初の感想だった。
たとえば、それが「被害妄想」に端を発したことだったとして、それは環境的要因や社会的要因が悪化させたとも言えるんじゃないか、とか。
集落にある「噂」と「孤立」という抜けられない図式がもたらしてきた不幸って何なんだろう、とか。
ニュースでは犯人という個人の、生い立ちや原因に焦点が当てられがちだけど、この本を読んでいると、もう少し広く、世間みたいなものの怖さが潜んでいる。
Posted by ブクログ
山口県の限界集落で起きた5人殺害放火事件ルポ。
タイトルにもなっている不気味な短歌が犯人宅に貼られていたり、田舎集落への陰惨なイメージから、殺害に及ぶ「相応の事情」なんかが噂されていたが実際にはどうだったのか。
蓋を開けてみればなんてない、驚愕の真相も陰惨な真実も何もない。ありきたりな話である。
田舎集落にありがちな噂好きな風土と、精神病の妄想に狂った男がいて、事件が起きた、それだけである。
しかし、拍子抜けする話というものはえてしてこのような本には残らない。バリューが無いからである。
だからこそ、耳目を集めるような事件が起きると人は「何かある」と考える。
そんな風潮へのカウンターとして、この凡庸なオチは意味があるだろう。
本来のはnoteの連載であったが、書籍化にあたって付け足されたらしい集落の老人が言う「10年後にやっと言える真実」。
これも明かされているのだが、それはその老人が妄想する「氏神様の祟り」という戯言である。
事件は衝撃的であり、壮絶だが、解きほぐしてみると全ては凡庸でくだらない話。
しかしそんなくだらない話をあえて発信するというところに、むしろ事件ルポの目新しさがあるかもしれない。
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