【感想・ネタバレ】つけびの村 ~山口連続殺人放火事件を追う~のレビュー

あらすじ

“うわさ”が5人を殺したのか?

この村では誰もが、誰かの秘密を知っている。
2013年7月、わずか12人が暮らす山口県の限界集落で、一晩のうちに5人が殺害され、2軒の家が燃やされる事件が発生した。凶行に及んだ男が家のガラス窓に残した貼り紙に書かれてあった「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」。メディアはこぞって「犯行予告」と騒いだが、真相は違った……。
気鋭のノンフィクションライターが、拡散された「うわさ話」を一歩ずつ、ひとつずつ地道に足でつぶし、閉ざされた村を行く。発表のあてもないまま書いた原稿を「note」に投稿したところ思わぬ反響を呼び、書籍化。事件ノンフィクションとしては異色のベストセラーとなり、藤原ヒロシ、武田砂鉄、能町みね子ら各界の著名人からも絶賛の声が上がった。
事件から10年という節目に、新章となる「村のその後」を書き下ろし加筆して文庫化する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2013年、山口県の限界集落で起きた連続殺人・放火事件を題材にしたノンフィクションです。

この本の特徴は、事件そのものよりも「噂」を軸に構成されていること。
確証のない情報がどう伝わり、人々の関係や感情をどう歪めていくのか——その過程が淡々と、しかし冷ややかに描かれています。

読み進めるうちに感じたのは、噂の怖さ。
話す側も、話される側も、どちらも傷つく。
そしてその「言葉の残り香」は、消えることなく長く残る。

SNSでの拡散やデジタルタトゥーにも通じるテーマで、
「噂」という昔ながらの人間の営みが、形を変えて現代に続いていることを実感させられました。

人間の言葉と記憶、その両方が持つ重さを静かに突きつける一冊。

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2025年11月08日

Posted by ブクログ

筆者が最も強く問題提起しているのは真相が明らかにされず、犯人も反省せずに終わること。それには志の低い弁護士やマスコミがもたらす結果でもあった。
内容が興味深いのに加えて、筆者の大変な苦労が垣間見えた。

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2025年07月15日

Posted by ブクログ

山口県で起きた一夜にして5人の命が奪われた事件のルポ。2013年の事件だから11年経つのか。犯人は死刑判決を受けて勾留中だが、自宅に貼られていた「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」の川柳で今も記憶に残る。当初、村八分にされた犯人が、津山30人殺しよろしく村人を次々襲った事件として報道されたような記憶もあるし、漠然とそう理解していたが、作者の調査によってそれは否定される。確かに村の中ではいじめのようなことや不可解な盗難事件などもあったし、村中噂話は多かったようだが、犯人が村八分にされたというわけではないようだ。犯人が妄想性障害であり、病気の一環としての殺意の芽生えに言及しており、昭和大医学部教授の岩波明医師にまでインタビューしている。心理的な動きを想像を交えて推察するようなことが多い犯罪系のノンフィクションに比べて、ある点からは病気ゆえとしっかり考察している点で、非常に深堀りされて叙述されているのはとても良いと思う。ある意味村民を騙すようなやり方でインタビューしている部分は読んでてやや不快感もあったが、とはいえ、コロナ禍の大変さもあったし、10年は言えないというおじいさんからしっかり話を聞き出したような良い意味での執着心や、育児をしながらの仕事という面も含めて作者の頑張りが実を結んだ本という印象。犯人の愛犬が今でも獣医のもとに保護されていることは特に知ることができてよかった。かわいそうに、御主人様は二度と帰ってこない。犬の写真が切ない。文庫版に寄せた後書きが秀逸。これがあることで嫌味ではない作者の頑張りがわかってそれも個人的には評価高い。

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2024年12月01日

Posted by ブクログ

あの事件はどうなったのだろう?と思っても、その後の報道は少なく、謎のままの事件は沢山ある。
そういう不可解な事件のその後が丁寧に調べられている。
何かが報道されるかどうかは、多分世間の興味の度合いによるのだろう。
事件の場合、私は「面白いこと」よりも「事実」が知りたい。
この本を読むことができてよかった。

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2024年06月23日

Posted by ブクログ

行ったことはないが車で2時間位の場所が事件現場の集落でずっと読みたかった本。ど田舎の集落は街育ちの人間には想像もつかない現実があるのは耳にはしていたが

村八分や集落の風習だったりどこの県の所謂限界集落はこんなもんだろうだけど此処は特に香ばしい

集落の住民の言動に対する作者の"一体何を言っているんだ"的な反応が笑える。

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2024年05月06日

匿名

ネタバレ 購入済み

真相は闇の中……?

2023年4月読了。

昔、とある対談番組で、○○地方出身の著名人達が(自分達を育んだ)地元愛を散々語り合っていたのだが、番組の終わり間際に突然、「でも、田舎の人達って、(当人が居なくなると)直ぐに悪口言い始めますよね…」と笑って話し終えていたのを見て、しばし目が点に成った記憶が有る。

その時は思わず「結局、ディスってるんじゃん!」と笑ってしまったのだが、一緒に見ていた地方出身の妻が「私には笑えない…」と真顔でボソッと呟いて、驚いた事があった。「世間体を過度に気にする」「周りの家に見られたら(聞かれたら)会わす顔が無い」…こう云った心理は、「都会か田舎かに関係無く」閉鎖的な環境下で起こり易いのかも知れない、と考えると他人事の様に笑えない事実で有ることに気付かされた。つまり、本書の舞台となった「地域」だけの問題では無いのだ。

大人というものは平気で、子供達に「イジメはいけません」などと教えるが、大人の社会でも「○○ハラ」に代表される「イジメ」は厳然として存在するし、「差別感情」は人間の心から「根絶やし」にすることは出来ない。
「村八分」と何ら変わりは無いのだ。

こうした人間の心の「負の側面」を考える時、憶測や先入観が入り込むと一層闇は深く成り、人の目や精神を狂わせてしまうのだろう。

正直に言って、本書は「ノンフィクションとして素晴らしい」とは残念ながら言えない。著者の心の「ブレ」がそのまま記されていて、客観性に乏しい文章も多い。「真相の探求」より「その地の空気に呑み込まれている」感情的な記述が多いからだ。本当に「有罪」なのか、「死刑が妥当」なのか、終盤は急に被害者遺族の心理に寄り添い過ぎてしまっていて、そのまま流されてしまった感も強い。

しかし「世間体」や「うわさ」と云う得体の知れないものは、確実に私達の周りに存在し、人の心をここまで惑わさせるのだと云う、何よりの「気付き」を示唆してくれる格好のルポルタージュだとも言えるのが、本書を一気読みさせる「力」と成っているのは確かだ。

被告人の精神が「既に」壊れていたのか、あの地域の「何かが」彼をそこまで追い込んだのか、「人の心の醜さ」が真相を闇の中へ隠しているとしか言い様の無い、寒々とした感傷的な気持ちで読み終えた。


#怖い #ドロドロ #ダーク

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2023年04月04日

Posted by ブクログ

このところノンフィクションを手にとってきましたが、そのうちの一冊。コンビニもないような田舎で起きた殺人。 きをてらった展開があるわけではないですが、限界集落のどことない不気味さ(表現としてはあまりよくないですが)が伝わってきます。 人口が減る中でますますこういった集落は維持が難しくなるでしょうし、犯人のバックボーンも経済的困窮が背景にあり、やるせなさを感じます。

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2025年07月18日

Posted by ブクログ

山口県の限界集落で起きた5人殺害放火事件ルポ。
タイトルにもなっている不気味な短歌が犯人宅に貼られていたり、田舎集落への陰惨なイメージから、殺害に及ぶ「相応の事情」なんかが噂されていたが実際にはどうだったのか。

蓋を開けてみればなんてない、驚愕の真相も陰惨な真実も何もない。ありきたりな話である。
田舎集落にありがちな噂好きな風土と、精神病の妄想に狂った男がいて、事件が起きた、それだけである。
しかし、拍子抜けする話というものはえてしてこのような本には残らない。バリューが無いからである。
だからこそ、耳目を集めるような事件が起きると人は「何かある」と考える。
そんな風潮へのカウンターとして、この凡庸なオチは意味があるだろう。

本来のはnoteの連載であったが、書籍化にあたって付け足されたらしい集落の老人が言う「10年後にやっと言える真実」。
これも明かされているのだが、それはその老人が妄想する「氏神様の祟り」という戯言である。

事件は衝撃的であり、壮絶だが、解きほぐしてみると全ては凡庸でくだらない話。
しかしそんなくだらない話をあえて発信するというところに、むしろ事件ルポの目新しさがあるかもしれない。

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2025年07月16日

Posted by ブクログ

映画「あんのこと」を観て、入江監督と高橋さんの対談記事を読んだことからこの本に辿り着いた。
全編を通して、高橋さんの恐れ知らずの行動力には驚かされる。
村の中では誰もが陰口の対象になっていて、まさに死人に口なし、もはや誰の発言も信じられないような状態である。都会でも毎日噂話をしている人はいるけど、田舎では人口が少ないから煮詰まってしまうのだろうなと感じた。

田舎の人間関係の距離感が合うか合わないか、合わないときに引越しできるか、引っ越しできないときに相談相手がいるか、相談相手がいなかったときに自力で医療・福祉にたどり着けるか…すべてがNoだった故の悲劇に思えた。

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2025年03月23日

Posted by ブクログ

独特な風習や小さなコミュニティ内での暗黙の了解は第三者の目線からは異常そのものだが、その異常性に気がつかず当然の摂理かのように振る舞う姿は言いようのない恐ろしさがある。

だが、その小さなコミュニティだけが彼らの世界であり常識であるため悪意などはなく、まさしく住む世界が違うという言葉が当てはまる。

この村ほどではないが、地方や過疎地域では似たような状態なのが実情であり、現代日本が抱える問題を端的に表しているようだった。

また、本作は元々noteで連載していたものを文庫化し、その際に加筆したらしいが明らかに取材不足で行き届いていない部分が多く、後半になるにつれてクオリティが低くなるのが残念。

特に、本筋と無関係なエピソードを詳細に記したり、身分を偽って村の祭りに参加する章、複数人の証言を繋ぎ合わせて1人の語りに見せる章、しまいには祟りを示唆する章もありページ数を埋め合わせるためとしか思えず、蛇足でしかない部分が多すぎるため星3とした。

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2025年01月13日

Posted by ブクログ

偉そうなこと言うようだけど、このルポが事件をどのように書こうとしたのかよく分からなかった。
いや、ちゃんと著者によって、復讐もいじめもないのだが、そうと取れるうわさによって元々あった精神障害が亢進して引き起こされた大量殺人事件だったのだと、書いてはあるのだが…
実際に10人足らずの村で生活していたらどうなるのだろう、こうなることもあるのだろう。
いつかは田舎に移住して、なんて考えたこともあるが、行ったら最後、もう戻れなくなる日常は、やっぱり諦められないな、なんてことを思った。
おそらく、上告棄却され死刑が確定してしまった犯人と、もっと何かをすることで自分の犯した罪を認識し向き合い煩悶する時間を、作ることはできたのでないかと言う、そう言うことは一言も言ってないが、著者はそうしたかったのではないのかな…

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2024年05月29日

Posted by ブクログ

限界集落で起きた連続殺人放火事件の闇に迫る。と言いつつ、もうひとつ犯人に迫り足りなかった感が…でも、限界集落って日本中にあると思うと、ちょっと怖い。

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2023年05月27日

Posted by ブクログ

高橋ユキ『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』小学館文庫。

2013年に起きた山口連続殺人事件の背景に迫るノンフィクション。事件から10年という節目に新章となる「村のその後」を書き下ろし、加筆、文庫化。

何かテーマを持って事件についての大きな謎を解き明かすという訳ではなく、報道では伝えられない細部に肉付けしたようなノンフィクションだった。

2013年7月、僅か8世帯12人が暮らす山口県の限界集落で、一晩のうちに5人が殺害され、2軒の家が燃やされる事件が発生した。被疑者として逮捕された保見光成は裁判で死刑を言い渡される。

著者は取材を通じて、犯人である保見の異常な性格と行動と、住人の噂が飛び交い、村八分と犯罪が半ば常態化した閉ざされた異様な集落の実態を明らかにする。

本体価格720円
★★★

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2023年03月09日

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