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魚も,カエルも,私たちも,DNAを撒きちらしながら生きている!? 生きものたちが「そこにいた」痕跡,環境DNAは,生物研究の新たな扉を開きつつある.川や海の水をくめばそこにすむ魚がわかり,葉っぱに残されたはみ跡から「犯人」がわかる――.分析の黎明期を知る第一人者が,その驚くべき可能性を臨場感たっぷりに語る.
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Posted by ブクログ
水中には、遺伝子の残骸がいくつも漂っている。それを収集して解析すれば、どんな生きものがいたかがわかるはず。それは、残された髪の毛、指紋、血液や体液から、だれが現場にいたかを特定する科学捜査に似ている。でも、DNAの断片が相手なんだから、そう簡単にいくわけがない、たぶんだれしもがそう思っていた。微量だ...続きを読むし、すぐ減少するし、コンタミもあるだろうし、それに検出に用いるプライマーの問題もある。 ところが、うまくいったのだ。本書は、いま邁進しつつあるこのeDNA研究の入門書。単一種の検出に始まり、同時並列の多種の検出、外来種や希少種の分布、個体数の推定、全国の魚類分布調査、空気中や土中の調査……アイデアを次々に実行に移してゆく、そのスピード感がなんとも心地よい。 2011年、最初の学会発表。満を持して臨んだのに、会場はみごとなまでの無反応。あとから思えば、それが大いなる反響の予兆。なにごとも、みなの頭が追いつくには、時間がかかる。
DNA分析技術が進歩することで、新しい知見がどんどん出てくる。『環境DNA』という言葉を見たので、まずは入門書から読んでみた。おもしろい。ここまで、わかってきたのか。また、著者はうまくいかなかった例(コンタミネーションが起こる)をうまく取り上げて、技術のブラッシュアップについて素直に語るのが素敵だ...続きを読む。 魚は、水の中に自分のDNAを放出している。(体液?分泌液?糞?精子?一体どこから出てくるのだろうか?本では説明されていない。)その出されたDNAは、本来低温や低酸素といった特殊環境に限られていると思われていた。著者は2009年にコイの感染症であるコイヘルペスを川や湖でそのウイルスがいるかを調べていた。その時にコイが自分のDNAを出していることがわかり、環境DNA分析という研究が始まった。その話を魚類生態学者の山中裕樹に話したら「琵琶湖で水をくんだらどんな魚がいるかわかるってことですよね。普通の魚類調査ってすごく大変だけど、水を汲むだけで棲んでいる魚がわかったら革命的ですよ」と言われた。水に漂うDNAが、新たな情報を提供する。 著者は「培養できる微生物は、実は環境中に存在する微生物の1%にも満たない」という言葉は、刺激的だ。 PCR法は、1983年にアメリカのキャリーマリスによって発明された。1993年にノーベル賞を受賞。そして、世界を襲ったコロナによって、飛躍的に活躍。世界の5億人以上が感染し、600万人以上が死亡した。そのことでPCR測定器がコストダウンし、さらにたくさんのDNAを測定できるようになった。測定技術の発達が、新たな知見を得る。 環境DNA分析という新たなアイデアは、そのような研究が発表されていれば、そのアイデアは新規性がなく、他人の研究の後追いであると見なされる。そしたら、フランスの研究チームが、外来種のウシガエルの環境DNA分析の研究が発表されていた。環境DNAの世界で最初の論文となった。 それを見て、著者は、1品種でなく、多品種の環境D NA分析で研究をした。琵琶湖に接続する伊庭内湖で、魚種をDNA分析する。カワムツ、ミナミメダカ、ブルーギル、ドンコ、ギギの5種のDNAが見つかった。2011年、日本生態学会で口頭発表をしたが、反応はほとんどなかった。画期的な魚類環境メタバーコーディング技術であったのだが。 あまり、話題にならないので、友人から「ニュースになるような生物を対象に調査したら、たとえばオオサンショウウオとか」と言われ、京都市のオオサンショウウオ、チュウゴクオオサンショウウオ、その交雑種のDNAを調べた。その結果を2015年に発表したら、マスコミで取り上げられ、話題となった。理系研究も、話題になる研究を進めるのも必要だ。 持続的可能な漁業を支えるために、水産有用種の資源量をしらべるプロジェクトを舞鶴湾で行った。マアジの推定量を環境DNA分析で調査。マアジは、約2230万匹いることを発表した。 空気中の粒子を集めて、水に溶かし、環境DNA分析して、陸生の動物種を明らかにした事例も生まれた。水があれば、「いるかいないか」「どれだけいるか」もわかった。魚類を網羅的に検出できるメタバーコーディング技術の、Mi Fishが開発され、沖縄のちゅら海水族館で調査された。黒潮水槽には63種いるのだが、61種のDNAを検出できた。さらに、琵琶湖でもMi Fishで調べたら、1200種以上の魚類を検出した。 ニュージーランドのオタゴ大学では、2018年にネッシー湖の生物DNAを調べた。3000以上のDNAを検出した。それには爬虫類(恐竜)のDNAは見つからなかった。一番多くあったのがウナギで、ネッシーの正体はオオウナギの可能性がある。こういう研究を真面目にやるのはすごい。 ヒルの血から、動物のDNAが、何ヶ月も貯蔵できるとされていたが、調べたら4ヶ月にわたってヤギのDNAが検出されることがわかった。 魚類がどこで産卵しているかを、調べる手法が、オーストラリアの研究チームが、せいしにはミトコンドリアが少ないことに着目した。核DNA /ミトコンドリアDNA比という指標によって得られることを示した。その技術を使って、オオサンショウウオの繁殖最盛期は9月初旬であることが判明した。 著者は、環境DNA分析技術が発展することで、水のいる生物だけでなく、空気や土壌も含めて検査ができるようになるという。この手法で、土壌微生物を調べることができれば、おもしろくなる。土壌微生物を環境DNA分析すると生きているものと死んだものが区別できるのだろうか?このあたりのことを早く知りたい。この本は、実にわかりやすく説明しており、入門書として優れていた。
20240621019 環境DNAの可能性、未来。あとがきにある「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」というジュールヴェルヌの言葉は筆者の本心でもあり、私たちへのエールであると感じる。
「環境DNA」という言葉は,どれくらい市民権を得ているのだろうか? わたしは,昨年,地元のアメリカザリガニ調査の際に,東京から来ていた研究者(というか会社の方が),この環境DNAを使って,ため池にアメリカザリガニが済んでいるかどうかを判断するための「水」を組んでいるのを見て,いろいろ質問したの...続きを読むで興味を持っていたのであった。そのとき,PCRという言葉もお聞きして,「なんだ,コロナの検査と同じじゃないか」と思ったことも覚えている。 環境(例えば水の中)に散らばっている生き物の片鱗・DNAを採取して,それを濾過,増幅し,その環境にどんな生き物がいるのかを推定するという素晴らしい技術か開発されている。 本著作は,環境DNAの研究がどのように進んできて,どんな発展があり,今後,どんな場面で利用できそうなのかを,素人でもわかりやすく解説してくれている。もちろん,DNAの増幅あたりの話題になると,ちょっと敷居が高くなるのだが,その部分は理解できなくても,本書は読める。 岩波科学ライブラリーって,面白そうな本が揃っていそうだ。
環境からDNAを抽出してその環境の生態系を明らかにしてゆく面白い分野。もともとは、特定の生物種を見つけるための手法としてPCRを使う競争に遅れをとった日本の研究チームが、それならばと特定種ではなく、塊としての生態系を判別する手法として発展させた点に興味を持った。
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