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Posted by ブクログ
雪富千晶紀『ブルシャーク』光文社文庫。
まさか日本人作家による本格的『鮫小説』が読める日が来るとは夢にも思わなかった。
中学生の時に映画館で初めて観た洋画が『ジョーズ』である。その後、早川書房から刊行されたピーター・ベンチリーの原作も読んだ。以来、自分にとって鮫は、羆と並ぶ動物界の恐怖の象徴である。
さて本作であるが、トライアスロン大会が迫る富士山麓の来常湖にオオメジロザメが現れるという設定だ。
『ジョーズ』の既視感は完全には払拭出来ていないが、非常に面白い。
問題のサメがなかなか姿を見せない点、サメが居るにも関わらず、危険を犯してイベントを強行しようという点、2メートル級のアリゲーターガーが捕獲されて一安心する点などは『ジョーズ』と同様の展開である。
さしずめ矢代がブロディ署長で、渋川は海洋学者のフーパーと言ったところか。となると、クイントは誰なのだろう。
トライアスロン大会の準備を進める不二宮市役所職員の矢代貴利は、同僚の関から来常湖の水質汚染の話を聞かされる。関は湖に検体を採取して来ると言い残して姿を消してしまう。
関の安否が気掛かりな矢代が湖のキャンプサイトに向かうと、久州大学准教授だと言う渋川まりと名乗る風変わりな女性と出会う。矢代は海洋生物学者の渋川から来常湖にオオメジロザメが迷い込んでいるという有り得ない話を聞かされる。
何とかトライアスロン前にオオメジロザメを捕獲しようと渋川と行動を共にする矢代だったが、第2、第3、そして第4の犠牲者が……
そして、ついにトライアスロン大会の号砲が鳴り……
ラスト80ページで巨大化したオオメジロザメがついに姿を見せる。
本体価格780円
★★★★★
Posted by ブクログ
ありそうで無かった日本が舞台のサメパニック小説!
著者が往年の名作サメ映画「ジョーズ」の大ファンとありリスペクトとオマージュがたっぷりと詰め込まれている本作。
今作の主役とも言うべきオオメジロザメ、実在の個体は大きくても3メートルほどしか確認されていませんが、本作は10メートル越えの規格外な巨大ザメとして登場しています。それが北海道の人口湖に現れ、更にはそこでトライアスロンの大会が開かれると言う展開はもうパニックホラー好きには垂涎モノかと!
なぜサメが巨大化したのか?
きっちりとサイエンスな説明で立証されていく様子は生物学好きな人にもオススメです。
日本文学でここまでサメ愛を感じる小説は珍しいと思うので、是非日曜洋画劇場を見る気分で楽しんでいただきたいです!
Posted by ブクログ
面白かったです。サメ小説として星5をつけます。
理由はこれだけサメに向き合った(向き合いすぎた)作品はなかなかないんじゃないか、と感じたから。
この作品、富士山周辺の湖でのトライアスロン大会当日でのサメ大暴れまで、サメがなかなか出てこないんですが、まさにそこからは圧巻と言っていい描写。準備したものが効果なく、絶望を感じるパニック展開なんです。
そしてそこに至るまで、いかにサメが大きくなるか、ややSF的解説や被害者視点のホラー描写を積み重ねていく。まさにサメと対決するための準備を積み上げて最後に至る感じなのです。
ところがそのために、トライアスロン大会やスポンサーでついた企業との対決軸が弱く、登場人物たちは個人的動機でしか深く入り込めない。一番対立するのが恋愛感情ですが、その原因となる彼が、なぜ主人公の一人である学者にメールを残したのか考えると、それはサメに真剣に向き合ったからに他ならない。
特に印象的なのは、カメに始まりカメにおわるところ。つまり、本作はサメ対他のすべてという構図なんですよ。モンスターとして存在しているのではなく。だから、物語の最後はカメがサメを見届けなければならなかったわけです。
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小説・文芸
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