カルは髭を剃りながら、妻と愛し合った甘い余韻に浸っていた。ダイアナとの暮らしは幸せに満ちている。子供に恵まれないことを除けば……。突然鳴り出した電話が、カルを現実に引き戻した。それは病院の緊急治療室からで、ダイアナが通りで転倒して頭を打ち、運び込まれたという。おまけに、赤ん坊も一緒だと。いったい何があったんだ?ダイアナはほんの三十分前に家を出たばかりだ。それに、なぜ赤ん坊が一緒なのだろう。制限速度を無視して病院に駆けつけたカルを、ダイアナはおびえた目をして迎えた。まるで他人を見るように。愛する妻は、夫のぼくが誰だかわからないのか……?
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