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さまざまな社会集団や権力が併存し,紛争の解決手段としてしばしば暴力をふるう.より強大な力をもつ幕府が,それらを統合・支配しようとする.日本の中世は殺伐とした時代だ.本書は,千年の命脈を現代にまで保つ京都・西京神人に焦点をあて,生業と祭祀を紐帯に,苛烈な世界をたくましく生き抜いた民衆の姿を描く.
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Posted by ブクログ
京都・西京神人に焦点をあて、現代へと続く千年の歴史をたどる一冊。垣間見える中世民衆社会の一端が興味深く、その生業や祭祀の在り方を変化させながら、近世・近代における共同体の危機を乗り越えていく様相が面白かった。
「神人」という存在は、網野善彦の著作など中世史の歴史本を読んで知ってはいたが、本書では、中世京都の「西京」とよばれる地域に生き、麹業を営みながら生きた「西京神人」の歴史が叙述される。 その歴史の概略は、次のようなものだった。 西京神人は北野天満宮と結び付いていたのであるが、酒麹役の免除が北野...続きを読む天満宮の「神役」を納めることとセットで室町幕府の義満の代に認められ、さらに義持のときに麹業の独占付与の特権が与えられた。 この背景には、平安時代には始まると言われる当時衰微していた北野祭が義満政権期に再編されたが、それに西京神人が鉾の準備と費用負担において大きな役割を果たしたことがあるとされる。 しかし、京中の土倉・酒屋との酒麹製造を巡る相論が続く中、文安元年(1444)、遂に幕府は方針を変え、西京神人の独占権は否定される。これについては、嘉吉の土一揆と、その結果生じた京都の土倉の衰退、その対応としての酒屋役強化による幕府財政の逼迫防止にあったと著者はする。 以降、独占権を失った麹業は衰退に向かったとのこと。 一方、北野祭は応仁の乱以降断絶してしまったが、西京神人により、神饌を神輿に発展させ、その神輿を巡行させる瑞饋祭と呼ばれる新たな様式の祭礼が行われるようになった。 また、この時代、幕府政所の伊勢氏の西京支配が進んだことに伴い、神人の伊勢氏被官化が進んでいったことなどに触れられるほか、近世についても一定の言及はあるが、この辺りの叙述は著者の専門外ということもあるのか、やや薄い印象。 そして、瑞饋祭が現在にも続いているほか、西京神人家において「梅花の御供」「甲の御供」といった神事が毎年行われている。麹業者としての生業を営むことはなくなったにもかかわらず、現代にまで神人の家が続き、そして神饌奉納の歴史が続いているということに、驚きの念を持った。 文献史料と現代に生きる西京神人の人たちへのフィールドワークにより、千年にわたる歴史の具体像を明らかにしていった著者の努力にエールを送りたい。
<目次> はじめに 第1章 「西京」の成立~中世京都の空間 第2章 生業の展開 第3章 北野祭と西京神人 第4章 神供奉納と麹業~画期としての「文安の麹騒動」 第5章 武家被官化と戦乱~中世末期の西京神人 第6章 神職と麹業~近世の西京神人 第7章 神仏分離を越えて~近代から現代へ ...続きを読む<内容> 北野天満宮に奉仕していた西京神人たち。酒屋と麹業を兼務していたが、室町時代から麹業が圧迫され、結局はその仕事は剥奪されていく。一方で、北野天満宮への奉仕は継続し、戦国期には武家被官化していく。今は「瑞饎祭」を支えている。このことはわかったが、京都中世の民衆としての部分は、ちょっとわかりにくかった。史料と聞き取りから歴史学者らしい書きっぷりだが、一般に伝えるには、もう少し筆が滑ってほしい。
中世から現代までの西京神人をテーマに、歴史学のみならず民俗学的側面からアプローチしている。西京や御土居の地図を見ながら読むと楽しい。
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日本中世の民衆世界 西京神人の千年
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