Posted by ブクログ
2009年10月04日
永瀬隼介が、好きだ。
もしかしたら執筆の10倍以上の取材をし、100倍もの調査時間をあてているのではと思わせるそのストーリーは常に、フィクションとは思わせないがっしりとした骨組みに載せられている。
人物の書き込みも重厚。
ばらばらと登場する人物は最初は、まったく違う世界を生きている。
ボク...続きを読むサーとしての人生を選び、はぐれものの世界を飛び出した中国人とのハーフ、亮輔。
売れないライターの加瀬。
5人の女性を強姦して殺し、死刑を待ちながら一向に動じることのない死刑囚、穂積。
その人生がそれぞれひとつにつながったとき、そこに現れた震撼すべき事実とは。
読み終わって、膝が震えた。
このストーリーは、メインの3人だけが輝きを放っているのではない。
実はそれぞれのサイドに控える脇役たちが、完全に計算された座標軸に、完璧な間隔で配置されているのだ。
日本人ではないからと執拗ないやがらせを受けた亮輔の過去。そこから逃れて光を目指した亮輔と対比されるのは、亮輔の輝きに嫉妬しながらもまったく逆の向きに走り抜ける政春だ。
ライターの加瀬の妻、美知子は静かに、しかし確実に自分の中に狂気を育ててゆく。
そして死刑囚・穂積を監督すべき監察官・白井は、穂積のカリスマ性の前に徐々に、自分の存在を見失い始める。
それぞれの人物の苦悩と狂気が化学反応を引き起こし、必然の結末に向かって一気にスパークする。
小説にGがあるとすれば、この小説はまさに、ジェットコースター級の加速度だ。
吐くまで、読め。