「① 記憶脳による直感的判断は、正しいこともあるが、記憶に基づいた習慣的な思考や行動が認知バイアスを生む原因であることが、分かってきている。このようなバイアスに抵抗して、自己統制して行動を変更することは、非認知的スキルの大切な面であり、記憶脳と認知脳が対立を招く状況である。直感的判断は短絡的に結論に達するが、このような対立や違和感に気づいたら、衝動的に行動せず間をおくことで、時間のかかる分析的思考が参加して、より合理的な判断ができるようになる。
② 注意力の維持や注意のタイプ(トップダウン注意、ボトムアップ注意、内的注意、外的注意)を切り替えるスキルは、非認知的スキルの重要な機能の一つである。集中力は定期的に揺らぐことを知ることが大切である。集中しているマインド・フォーカシングと、ぼんやりしながら注意範囲を広げたマインド・ワンダリングの状態は、シーソーのように揺らぐことも承知しておくとよい。適度に休む、ぼんやりする時間を積極的にとる、場所を変える、活動の種類に変化をつけるなどすることで、注意力の低下を防ぐことができる。
③ 思考は、大きく分けて分析的思考、すなわちカテゴリー化し論理や数量的な関係や物的因果関係で理解する科学的理解と、ナラティブ思考、すなわち事例や断片的エピソードから物語を構築する物語としての理解に分けられる。これらは一見対立的であるが、実は両者は相補的な学びのスタイルである。状況に応じて適宜思考スタイルを切り替えることも、重要な非認知的スキルである。」
① 創造性は、特定の分野で発揮されたとしても、その基礎には分野によらない非認知的スキルが関わっている。
② 創造性を発揮する人は、自分の中にいろいろな多様性を併せ持った混乱している人(messy mind)であることが多い。創造性には発散的思考と収束的思考など、異なる思考を自在に切り替えられる非認知的スキルが必要である。さらには注意の状態を切り替え、マインド・ワンダリング、フロー状態、マインドフルネスなど任意の注意状態に自ら制御できるようになることも非認知的スキルの一つである。多くの創造的な発想はぼんやりする時間の中でふと気づくことがある。いわゆる「アハ」体験である。
③ 創造性には新しい経験への開放性、即興性、想像性、ナラティブ性などの因子が関わる。アートには創造性を発揮するための無限の自由があり、創造性を育成する方法として有効である。そのため一流の科学者にはアートの実践家も多い。
④ 創造性を妨げる様々な認知バイアス、質問力の低下を打破するために大切な非認知的スキルに、クリティカル・シンキングがある。自分の認知バイアスに気づき、疑問を徹底し理解を自律的にどんどん深めていく方法である。知識獲得と質問力育成が両輪となって学びを進めることが望ましい。Why、What、How、What ifなどの質問によって、次々と質問を生成し続けることは、発散的な思考を促し、既知と無知との境界を自分で見極めながら、経験的な学びを広く深めることになる。
⑤ 非認知的スキルを身につけるのは若い時ほど効果が大きいが、年をとってもその効果があり、生涯学ぶのが望ましい。またスキルは生涯変化し成長するものとして捉えるマインドセット(成長マインドセット)の育成が重要である。このようなマインドセット自体も非認知的スキルの一つである。
⑥ ワークショップ形式での学びは、参加者が中心となり、ファシリテーションにより相互のコミュニケーション、協働性を発揮した創造や課題解決を図るもので、二一世紀型スキルの詰まった学びの形態である。即興再現劇等アートを取り入れたワークショップは、非認知的スキルを伸ばし、結果として共創性をスキルアップし、ナラティブ思考を鍛え、共創的な創造力を伸ばすのに非常によい活動である。