ネタバレ
Posted by ブクログ
2021年08月29日
何とも不思議な感じのする話だった。
冒頭で主人公自ら断りは入れているのだが、彼の考察、怪談話に昔の新聞記事、そして「神目」なる怪異サイトの管理人からのメール本文が入り乱れた文章になるので、それぞれの話の境界が曖昧になっているというか。
一応フォントなどで分けられてはいるので、混乱する筈はないのだが、...続きを読むそれぞれの世界が濃厚に練られているためか、いい具合に混ざり合って、いい意味でカオス化しているというか。
どの話がこの世界における「真実」で、どの話が「虚構」なのか。
そもそも、この作中で登場する出典は現実世界に実在する作品からなのかなどなど。
読んでいるこちらの世界との境界も段々曖昧になってくるので、そういう意味でも怖くはあった。
この世界に引きずり込まれると、戻れなくなりそうな、そんな予感というか。
ただ読み終えた後にこれはホラーの話かと問われたら、「うーん」と言ってしまうのも事実。
というか、「何だこれ」というか。
「神目」の正体、そして主人公の正体を知ったときの衝撃は十分興奮したし面白かったのだが、終盤の解決編が特急並みの駆け足、かつホラーとしては、ある意味禁じ手では?な展開になるので、ホラー話としては失速した感じが否めない。
「実はホラーではなくて、別のジャンルの話でした!」な移行は、人によっては戸惑いそう。
少なくとも自分は戸惑ったし、「そりゃないだろう!」と叫んでしまった。
その直前までは非常に非常に面白かったので、あのオチはちょっと納得しづらいと言うか。
どうも現実的に解釈できる真相か、それが無理なら本当の怪異として描いてほしい願望から自分は抜け出せていないようだ。
ホラーらしく不気味さを残した救われているようで救われていないラストなのはよしとしても、その「実際に彼の背後に見えている」背景の世界観は最後までちょっと受け取り難く。
ゆえに不思議な感じのする物語だったと評してまとめておこうと思う。
「火車」や「ヒトダマ」などの怪異の考察は本当に面白いのだ。
そこは間違いないのだけれども。