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「歴史の深淵にかかわったかもしれない忍者とは、そもそもどのように成立し、どう働いたかを考えてみた。しょせん、忍術は一個の芸能であり、発生は遙かシルクロードの彼方にあると思う」(あとがきより)。大作『服部半蔵』の著者が、忍者研究の集大成として語る。歴史の闇に蠢動する、忍者の源流と足跡。
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Posted by ブクログ
巷間に伝わる忍者とは何か?を体系的に解説した一冊。 忍者についての第一級の資料というのが少ないため、どうしても伝承からその実態を解き明かすしかないことがよくわかった。 忍者を知る上で重要な資料とされる「万川集海」や「伊乱記」にしても、戦国期に活躍した忍者について数十年後の人が書いたものしかない。 歴...続きを読む史の闇の部分であるからこそ、現代の我々はそこにロマンを感じるのではあるが・・・。 本書で扱っている人物は、服部半蔵や百地丹波・藤林長門。 戦国期に活躍した伊賀衆や甲賀衆の活躍の本質にも迫る。 かいつまんで説明すると、伊賀・甲賀の忍者と伝わる人々は、特殊技術の集団という側面と、日本全国に張り巡らされた裏ネットワークの集団ことが言える。 戦国期に全国の大名たちが戦の際に、伊賀・甲賀の者達を傭兵的に諜報活動や敵に対する謀略に積極的に使ったのもその表れである。 火薬の取り扱いや毒の取り扱いといった、専門性が重宝がられたらしい。 また、全国に張り巡らされたネットワークというのは、支配者にとっての「埒外」の者たち同士が結ぶ情報伝達の網の目を指す。 例えば、山伏や猿楽・傀儡師など漂泊する者達とのつながりである。 芸能と忍者というのは、つながりが深く、室町時代に能を大成させた世阿弥の母は伊賀の服部一族から出ている。 猿楽という浮遊する芸能集団から発生した能は、世阿弥によって体制にすり寄ったものの、それまで何百年と続いた芸能ネットワークはその後も続いて行ったのである。 ところが、江戸時代からは忍者や漂泊する芸能集団が幕藩体制に組み込まれていくことになる。 伊賀衆であれば、大奥の警備という呑気な仕事に就かされ、漂泊する芸能集団も各所に小屋を立てて客をよぶようになる。 そういう意味では、幕藩体制というのは緻密に計算された支配であり、それまであった「埒外」の土地や人を体制に取り入れることに成功したのではないかと言える。 忍者にまつわる断片的な資料を基に読みやすく解説しているので、伝奇的な話が好きな方にはオススメです。 本旨とは関係ないのですが、忍者の先祖をたどるとどうしても「秦氏」にたどり着くらしく、本書でも広隆寺や聖徳太子伝説とユダヤ人の関係について解説しています。 毎年9月に京都の広隆寺で行われる「牛祭り」はそれを連想させる奇祭であるといいます。 様々な憶測と興味をかき立てた一冊ではありました。
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戸部新十郎
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