戦国時代
著:永原 慶二
解説:本郷 和人
出版社:講談社
講談社学術文庫 2573
良書、読みでがありました。古代から近世へ、その不連続点である中世の、最後の120年あまりを解説する書でした。
読み始めて、まず、思ったことは、石高や、年貢、兵力等、10万にも及ぶ数字の羅列が並んでいる。
調べてみると、九九や、算木は、飛鳥時代に、そろばんは、実にこの戦国時代に渡来しているようです。
江戸時代に和算という微積分が普及していることをみると、日本人のこの数字好きの文化が築かれたのはこの時代ではないかとおもってしまう。当時の領国は、実に細かく所領を管理していたようです。
年貢も五公五民とか、現代も社会保障を含めるとほぼ同率に落ち着いている。これも現代では、小数であり、分数である。定率の評価と地域や産物ごとに、利率を変えていることでバランスをとっていたことも驚きでした。
農業や、工芸などの生産性が飛躍的に向上し、相対的に豊かになったことで、社会の構造が大きく変わっていくのが、この戦国時代であり、各産業別の人口や所在を把握していたことも、例として示されていました。
また、ボルトガルとの南蛮貿易や、明代の後期の倭寇などが語られているが、驚いたのは、鉄砲とともに、木綿もこの時期に日本にもたらされていることでした。1600年以降に日本でも栽培されることになるのだが、木綿って平安時代から行き渡っていたように誤解していました。
さらに、一向一揆にしても、武士、農民、商人らが、領主を倒して、自治を手に入れること、これってフランス革命のような市民革命だよねとおもってしまう、しかも各地にその考えが飛び火していくのは、革命の輸出であって、ヨーロッパのそれと何ら変わりがない。領国支配と平行して、政治システムの移植も行われていたのです。
戦国時代とは、応仁元年(1467)応仁の乱の開始より、天正元年(1573) 織田信長が、足利将軍義昭を追放するまでの、107年と記しています。
その後、信長が、本能寺の変で倒れるのが1582年、秀吉が北条氏を小田原征伐で倒し、まさに天下統一するのが、1590年になります。
68州を束ねる足利幕府は、各地に探題や公方などの役所を置いたが、奥州探題、蝦夷探題を含めて、北海道までを俯瞰していたことには、感心しました。
戦国前期は、地域紛争に過ぎなかった戦争も、後期は、万という兵を自在に動かす、大規模なものとなっていきます。兵站と機動力、なにより、天下統一には、兵農分離と、各地の経済力を把握するために検地がその背景となっています。
また、三好長慶の時代の天下とは、畿内のことをいったようですが、織豊の時代には、まさに、日本全体を示すようになっていました。
弱小だった織田軍が、天下布武を実現できたのは、優れた武器と圧倒的な物量を背景とした力、そして一向宗を大量殺戮したにも関わらず、新しい秩序を打ち立てるために理想があったからではないでしょうか。
軍事、領国経済、人心掌握と、まさに、大名はさまざまな要素を掌握しなければなりません。まさに、人が戦国時代を作ったことがわかります。
全体として、本書は、おおむね、3つのテーマで時代を見ていると思います。
①社会状況
■惣・一揆
■軍事
■領国経済
■都市、商人
■南蛮貿易
■大名国家と日本
②地域概報
■関東・東北戦
■中国・四国戦
■九州戦
■畿内戦
③織田信長による天下統一
■清州から畿内へ
■一向一揆と本願寺
■天下布武
■まとめ 日本史上の戦国時代
目次
はじめに -動乱と革新の世紀
戦国時代の開幕
惣・一揆と下克上の社会状況
「世界史」の成立と新技術
関東・東北の争覇戦
中国・四国の戦い
軍事力の構成
領国経済体制
都市と商人
九州の情勢とキリシタン大名
畿内政権と京・堺
大名国家と日本国
織田信長の進出
一向一揆と本願寺
「天下布武」
おわりに -日本歴史上の戦国時代
あとがき
参考文献
解説
年表
索引
ISBN:9784065165522
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:504ページ
定価:1690円(本体)
2019年07月10日 第1刷発行