池田利夫の一覧
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ユーザーレビュー
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堤中納言物語の原文と訳文と解説を一冊にしたもの。
右に原文、左に訳文、下に注釈で、目をうろうろさせながら比べて読める。
原文に忠実に一語一語訳して説明してあることもあって、流れるように読むとはいかないけれど、ああこうなってるのかと知りながら読むには良い。
欲を言えばページをまたがずに文章を切ってほし
...続きを読むかった。けどまあ忠実を目指すなら無理か。
背景や研究者の解釈を読むとまた違った風に読める。
付録の藤田徳太郎の「新釈」(昭和14~17年に連載されたもの)が面白い。
編者はどうもこれに影響を受けているようだ。
私と全然違う感想もあるし、こう読めるのかとかそうだよねってのもある。
「古い本なんだから時代を勘案して読みなさい」と書いてあるのを見るたびに、そうだこれも古い評論だから時代を勘案しなくてはと思い出す。
本が新しくて文は読みやすく改められていて内容がきちんとしているから、ついつい古いってことを忘れてしまう。
物語自体も、これはひどい話として読むべきなのか、当然の話として読むべきなのか、当時の人にはどんなお話だったんだろう。わからないのがもどかしい。
「虫愛ずる姫君」の姫と「思はぬ方にとまりする少将」の姫は対照的だ。
男や世間の評判を歯牙にもかけない「悪い姫」と、男や周囲に従順な「良い姫」。
「悪い姫」は結構自由だけど、男や周囲や物語に否定される。「良い姫」は理不尽な要求にもなにも言えない。
この手の女子キャラクターは男の描く都合のよい女、という読み方をすることが多いけれど、この本を読んでいたら「お母さんは忙しくなるばかり」を思い出した。
きっちり性別役割分業が成り立っている社会では、男は家事・女は野良仕事を“できない”。
しちゃいけないんじゃなくて、そもそもできるという発想がない。男が女子トイレに“はいれない”のに近い感覚だと思う。
「虫愛ずる」のあとに「思はぬ」を読むから後者にイライラするけれど、従者たちが身分の高い人を止められないように、姫も男を止められないのかもしれない。
短編の成立には歌合せ(左右に分かれて歌を詠みあげる遊び)が背景にあるらしい。
歌だけでなく物や物語も競わせて遊ぶのが流行った。
その時に読みあげる物語は読む(聞く)ことを意識して作られる。
あんまり長編すぎては読めないし、メリハリがなくては飽きる。
ダニー・ラフェリエールが長編は(読んだり書いたりする)余裕がある場所でしか生まれないと言っていたのを思い出した。長さと読まれ方には関係があるようだ。
Posted by ブクログ
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