騎士道の華・中世騎士物語とケルトにどんな関わりがあるのか、どっちの世界にも等しく興味と愛を抱いているので非常に興味を持って読んだ。
冒頭はブルターニュ半島に今も残る「イスの街」の幻想に始まる。キリスト教以前のケルト文化が徐々に浸透しつつあるキリスト教によって駆逐される過程が口承伝承の中に幾つも残って
...続きを読むいるという。
第一部はケルト口承文学の中から「異界」「あの世」がどこにあると規定されているのかを探り出し、第二部はキリスト教化された中で口承にどんな脚色が加えられていったのか、変えられた部分、変わらない部分を読み解き、そして第三部に至って、ようやく中世騎士物語の元となったアーサー王伝説へと分け入っていく。
新書のコンパクトさで、ケルト神話やその基本モチーフをざっくりと把握するにも、中世騎士物語成立までの流れを把握するにも非常にわかりやすい。巨石文明やケルト文化そのものについては若干記述が弱いけれど、これは著者が考古学者や歴史学者でなく文学者だというところに起因するのだろう。入門として、また何冊か専門書を片付けた後の頭の整理にはもってこいの一冊だと思うので、私もその意味で時々読み返す。