武田龍夫の作品一覧
「武田龍夫」の「新版 嵐の中の北欧 抵抗か中立か服従か」「物語 北欧の歴史 モデル国家の生成」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
現在、北欧諸国は比較的政治が安定しており、平和な印象を思い浮かべるかもしれない。実際、どの国も治安の良さや社会福祉の充実度は世界屈指である。しかし、第二次世界大戦時代において、各国が辿った運命は必ずしも同じではない。奇跡的に参戦せずに済んだ国もあれば、戦争に参加せざるを得ない状況に追い込まれた国もある。本書はそんな北欧の国々の歴史、具体的にはフィンランド、ノルウェー、スウェーデン、そしてデンマークの歴史的経緯に着目して、現代の政治体制に至ったのかを見ていく。
まずフィンランドの歴史であるが、この国はソ連とフィンランドとの戦争(冬戦争)で、一部の領土割譲で和平協定を締結した歴史がある。これはフィンランドの軍人マンネルヘイムの活躍が重要であった。圧倒的な資源や人口を持つソ連と比べて、フィンランドは小国であり、ゆえにソ連のほうが戦争において優位な立場である。そんな現状を把握したうえで、マンネルヘイムは、国軍が健全な状態である間に、和平交渉を成功させることが残された道だと判断した。国際連盟や隣国があてにならない孤立状態だと理解していたため、ソ連との交渉で一部の領土を割譲せざるを得なかった。しかし、それによって最悪のケースは避けられ、犠牲者をむやみに増やすことなく収束した。一方で、その後フィンランドがナチスドイツと手を組んで、ソ連の戦争に参戦した(継続戦争)経緯ははっきりしないという。
ノルウェーの場合、1940年ナチスドイツがノルウェーに侵攻して、傀儡政権が立てられた。ナチスドイツによる占領期間、ノルウェー政府を掌握したのがキスリングである。キスリングはナチスドイツに感化された人物で、政権を担った際、王位廃止、議会の解散などを実行して、キスリングに同調しない者は排除された。そんな状況下でも、抵抗運動は活発化しており、ドイツの敗北が決まり、キスリングは逮捕されて死刑が下された。
北欧諸国で、唯一最後まで中立国を保ったスウェーデンは、本書を読むと偶然が重なって、結果的に中立を保てたことがわかる。それと同時に、中立保持が参戦国と比べて、どれほど孤立な戦いで危ない橋を渡っていたのがわかる。スウェーデンにも、キスリングのような人物は存在したが、キスリングほどの指導力がなかったおかげで、ノルウェーと同じ道を辿らずに済んだ。これもある意味偶然であった。
最後にデンマークの歴史であるが、この国の場合、ドイツの侵攻からわずか4時間で降伏した。これは本書で言及されているが、デンマークには逃げるべき山岳地帯はなく、土地が平坦であった。また救援の余裕もなかったことから、抵抗できる時間がわずかであった。このように、北欧諸国は別々の運命をたどってきたが、いずれにせよ第2次世界大戦の経験から大国の恐ろしさを痛感し、小国ならではの安全保障を模索したのである。
Posted by ブクログ
北欧という地域について古代から近現代史まで概観できる一冊。バイキングとして西洋に侵略した時代から、ロシアの圧政と北米移民、貧困の時代を経て現在福祉国家として世界で最も裕福な地域の一つとなった北欧国家のデンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの興亡が分かる。自然資源の豊富さや、恵まれた地理的条件、優秀な国民性に加えて、社民党や労働党が何十年もの長期政権で福祉政策を実行維持し続けてきたことで、資本主義の競争原理と社会主義の分配原理を調和させることに成功した。旧ソ連市場喪失による経済停滞も見られたものの、新しい国家のモデルを示し続けている北欧には今後も期待が向けられ続けるだろう。
Posted by ブクログ
まさに歴史は物語である。知識としての歴史は、その詳細な年代や出来事、関連する人間の名前を詳細に覚えておかなければならず、だからこそ受験科目などはどうしても暗記科目になりがちである。しかし、歴史を物語捉えると、シンプルに面白い。話の流れさえつかめば、知識は自ずと付いてくる。そういう意味で、ほとんど知らなかった北欧の歴史について大きな流れを新書レベルの量で伝えてくれる本書は非常にありがたい。出版が1993年であり、マーストリヒト条約直後なのでEU加盟後については詳しく書かれていないが、そこまでの歴史を知るには十分だと思う。
北欧とは、スカンジナビア、やノルディック・カントリーという言い方によって異なるが、一般にはノルウェー・スウェーデン・デンマーク・フィンランド・アイスランドの5カ国を指す。その中でも特に中心となるのが、スウェーデンとデンマークだろう。この2国が北欧の物語の中心であった。といっても古典の時代、北欧ではバイキングの時代には、そういった国の分け方の概念はなかった。しかし、徐々に国が形成されていく、おもに覇権を逃げる王国はスウェーデンとデンマーク、ノルウェーはいずれかの属国扱いの時期が長かった。フィンランドもスウェーデンの権力下にあることが長かったが、ロシアの圧力にもさらされていた。
北欧各国自身が、ロシア・ドイツ・フランス・イギリスといった強国の間に置かれ、そのパワーバランスに振り回さえれながらなんとか自立を保ってきたことがわかる。特にノルウェーがEUに加盟していないのは、そういった支配関係からの解放という背景がある。そういった地政学的な面から見て、強国に飲み込まれないためにどうするか、という点は日本にも参考になる点もあるのかもしれない。
同僚などと話していても、時々歴史的背景を知っていることが前提の話になることがあるので、これで少し理解することができそうだ。